第142回:タントカスタムで辰巳へGO!
2019.09.10 カーマニア人間国宝への道辰巳PAはカーマニアの聖地
東京近郊在住のカーマニアにとって、首都高辰巳第一PAは聖地。駐車可能台数は普通車29台と小ぶりだが、高架上にあるためベイエリアの景色を存分に楽しめ、愛車を撮影するにも最適だ。杉並区在住者としては往復50~60kmという距離も最適。「カーマニアは辰巳さえあれば生きていける!」という気分にさせてくれる。
そんな辰巳PAに、晩夏の夜、立て続けに出撃した。
まずは、「フェラーリ412」でドライブ。もちろん借り物でございます。メーターが暗すぎて水温計も油温計も燃料計も見えず、ちょっとドキドキしたが、V12の芳醇(ほうじゅん)なるフィールに陶酔しつつ無事に到着した。
すると、平日だというのにカーマニアが多数集結しているではないか! 多数と言っても10人ちょいですが。
辰巳がカーマニアでにぎわうのは週末だけ。その平日は職業ドライバーの皆さまの休憩所というイメージだったので、これは夏のせいなのか、それとも辰巳ブームなのかと訝(いぶか)しみました。
その数日後、今度は新型「タント」の広報車が我が家にやってきた。
新型タントはスバラシイ。デザインは相変わらずの“動く託児所”だが、中身は本当にすごい。特にすごいのがシャシー性能だ。
トヨタが新プラットフォーム「TNGA」を開発し、プリウスの走りが劇的に向上したが、ダイハツの新プラットフォーム「DNGA」もすばらしく、タントの走りが想像を絶するほど向上したのである。あんなに全高が高いのに、信じられないほどコーナリングが安定している。
新型タントで辰巳に出撃
そんなタントが、一晩だけ我が家にやってきた。ならば辰巳に出撃し、そのシャシー性能を堪能せねばなるまい。
私は「タントカスタム」(ターボ)で、勇躍永福ランプから首都高に乗り入れた。
「うおおおお、こ、このコーナリングはなんだぁぁぁぁぁぁ!」
首都高でもタントのシャシーは最高だった。あんなに頭でっかちなのに、重心高がウルトラ低い! もちろんそれなりにロールはしますけど、その動きは実に好ましく、足はあくまでしなやか。ステアリングを通じて、常に濃いインフォメーションを伝えてくれる。
こ、この走りは……。例えれば「フォルクスワーゲン・ゴルフ」! 欧州製のよくできた実用ハッチバック車のような、接地感満点のオトナの走りである。
運転席からの眺めは、ペヤングソースやきそばの中に乗っているみたいだけど、あらゆるコーナーが気持ちいい。ターボの加速も十分だが、なにせコーナリングが無敵! うおおおお、なんぴとたりともオラの前を走らせねぇ! ザコめ、道を空けやがれ! オラオラオラ! そんな感じ(妄想)であっという間に辰巳に到着した。
うおおおお! 平日の夜だってのに、先日にも増してカーマニアが集結してやがる! ポルシェがいる、フェラーリがいる、マクラーレンがいる、チューニング系スバル車が何台もいる! 空いてる駐車スペースは、初代「NSX」と「カマロ」(リアウイング付き)の間だけ!
そ、そこに入れねばなるまい。
“食パン”ではカッコ悪い
それは、カーマニアにとってひとつの試練であった。自分は一応フェラーリオーナーなわけですが、今日乗ってきたのはタントカスタム。ソイツをNSXとカマロの間にブチ込むのだ。周囲のカーマニアたちは「あ、パンピーが来ちゃった」「せっかくの景色が壊れちゃう」くらいのことを思っていることだろう。
しかし、ここで逃げたら男がすたる。俺は勇気を出してタントカスタムをNSXとカマロの間にブチ込んだ。
背が高~い!
真剣な話、両脇に比べて全高が2倍くらいある。平べったいジャムパンとクリームパンの間に食パンが立ってるみたい! あー、オレってこんなカッコ悪いクルマに乗ってきたのか……。
いや、本線上なら負けませんよ。こっちは限界がつかみやすいので、ギリギリまで攻められますからね。ミドシップマシンなんて、怖くてシロートさんはコーナー攻められんだろ。
本線上ならば、我がタントカスタムで、初代NSXのインを突く自信がある!
でも、ここは辰巳。カーマニアが愛車のたたずまいにウットリするための場所だ。ここでのタントカスタムはまさに異物。カーマニアとして赤面せずにいられませんでした。
いま、日本中のほとんどの場所が、この逆の状況になっている。どこへ行っても軽ハイトワゴンやミニバンだらけ。食パンの間にジャムパンをブチ込む感覚だ。
でも、夜の辰巳ではジャムパンが主役! 食パンのご来場はご遠慮くださいって感じですね。なにせ食パンが止まると、全高が高すぎて、隣のカッコいいジャムパンが見えなくなりますから。以後気を付けます。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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