アウディRS 5スポーツバック(4WD/8AT)
アグレッシブにも優雅にも 2019.10.07 試乗記 伸びやかな5ドアのボディーに、パワフルな2.9リッターV6ツインターボエンジンを搭載した「アウディRS 5スポーツバック」。最高出力450PS、最大トルク600N・mのアウトプットを自慢の「クワトロ」フルタイム4WDで御す、その走りを試した。発売が遅れに遅れた理由
2ドアの「RS 5クーペ」が日本に上陸してから、2年以上を経て導入となったRS 5スポーツバック。ベースとなった2代目「A5」および「A5スポーツバック」は、2017年4月に日本で同時にデビューし、同年9月にはRS 5クーペのデリバリーが始まっていたので、RS 5スポーツバックもすぐに続くと思われていた。2018年3月にはニューヨークモーターショーで正式発表もされたのだが、予想とは裏腹に、欧州でもその発売は翌年2月にずれ込んだ。最近は欧州メーカーの多くが世界標準の燃費・排出ガスの計測法であるWLTPへの対応で生産や販売のプログラムに大幅な影響がでてしまい、アウディもそれは避けられなかった。
RS 5クーペも一時は生産を止めていたそうだが、現在はRS 5スポーツバックなど他のRSモデルとともに、アウディスポーツGmbHによって、ドイツ・ネッカーズルムの特別な生産ラインから各地にデリバリーされている。クーペの美しさとデイリーユースの利便性が融合したスポーツバックに狙いを定めていた人は、さぞ待ち焦がれていたことだろう。
アウディのラインナップは、スタンダードなコアモデルの“A”、SUVの“Q”、それらをベースにスポーティーに進化させた“S”および“SQ”などがあるが、レースで培った技術から生まれたハイパフォーマンスモデル“RS”については、R8とともに、モータースポーツ活動も担うサブブランド、アウディスポーツの一員となる。
パワフルだが洗練されている
RS 5スポーツバックは「RS 4」やRS 5クーペと同様の文法で仕立て上げられている。エンジンはアウディ主導のもとポルシェと共同開発した2.9リッターV6ツインターボで、最高出力450PS、最大トルク600N・mを発生。8段AT(ティプトロニック)と組み合わされ、駆動方式はもちろんクワトロ(4WD)だ。車量重量はRS 5クーペに対して50kg増の1810kgとなるが、0-100km/h加速は同等の3.9秒と俊足である。
エクステリアは特別なハイパフォーマンスカーということを過剰にアピールすることなく、エレガントなスポーツバックの上品さを損なっていないところに好感が持てるが、それでも大型のエアインレットやA5スポーツバックに対して15mm拡幅されたフェンダーなどから、ただ者ではない雰囲気が漂う。今回の試乗では思っていた以上に衆目を集めたが、鮮やかな「ソノマグリーンメタリック」のボディーカラーによるところも大きいだろう。
インテリアにも過剰さはなく上質そのものだが、フラットボトムのステアリングホイールやファインナッパレザーのスポーツシートなどが体に自然となじんで早く走りだしたくなる。
最大トルクの600N・mは1900-5000rpmまでの幅広い回転域で発生している。走りだした瞬間からそのずぶといトルクに圧倒されるが、低速域でのドライバビリティーも見事で、微細な速度コントロールがやりやすい。ハイパフォーマンスではあるが、普段乗りではエレガントに振る舞えるのがいまのRSなのだ。
以前のアウディは、エンジンを縦置きしたFFベースという基本レイアウトのメリットを最大に生かした操縦安定性の高さや直進性の良さでFR系のライバルとの差別化を図り、それを強調するためには少々乗り味が荒っぽくともかまわない、といった面も見受けられたのだが、最近では「A8」や「A6」を筆頭に、洗練されたフィーリングをかなえている。RSモデルにしてもクワトロGmbHからアウディスポーツGmbHへと社名を変更してからは、そういった洗練性やエレガンスを取り入れる方向性へシフトしたように思える。
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6700rpmまで一気呵成に回る
ただし、今回試乗したRS 5スポーツバックは乗り心地が硬めで、最新世代のアウディとはちょっと違う印象も受けた。低速から中速にかけてゴツゴツっとした感触があるのだが、日本仕様は「スポーツサスペンションプラス」が標準装備となっているからのようだ。スタンダードだったらもう少し今風になっているのだろう。
とはいえ、足まわりは「DRC(ダイナミックライドコントロール)」に対応しているので、ドライブセレクトで「コンフォート」を選択しておけば、嫌な突き上げ感は抑えられる。また、従来のアウディのファンにとっては、せっかくのRSなのだから洗練されすぎているよりも、これぐらいわかりやすいスポーティー感があったほうがうれしいだろう。
エンジンも普通に流して走っているときは洗練されたフィーリングが強調されるが、オプションの「RSスポーツエキゾーストシステム」が装備されていたので、ドライブセレクトを「ダイナミック」にすると途端に迫力を増した。隠していた牙をむき出しにして戦闘態勢に入るのだ。それに応えてアクセルペダルを深く踏み込んでいくと、3000rpmを超えたあたりから回転上昇の勢いが増し、1速では6700rpmのリミットまで一気に回ってシフトアップ。4700rpmまでドロップしてから再び6700rpmまで鋭く吹け上がる。頭打ち感はまったくない。
タコメーター右横のパワーメーターを観察していると、5500rpmあたりで表示が100%になり、それがシフトアップするまで持続する。シフトアップ直後の5000rpm弱では80%台になるが、完全にフラットに100%が続くよりも、加速にドラマが感じられて盛り上がる。最高出力の発生回転数は5700-6700rpmとなっているが、そのスペックは体に感じるフィーリングともおおむね合っている。
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ワインディングロードを存分に楽しめる
サスペンションをコンフォートとしたままワインディングロードを走らせると、路面からの入力によってボディーが伸び上がるような動きがあったので、ダイナミックに切り替えてみた。すると今度は硬さによって凹凸の連続にしっとりとフィットしない。そこで「オート」にしたらドンピシャだった。
DRSがいい仕事をしているようで、コーナーに向けてステアリングを切り込んでいくと、フロントサスペンションは比較的速めのストロークスピードで、スッと前輪外側に荷重がかかって狙ったコーナリングラインに見事にクルマを合わせ込む。そこから徐々にダンピングが立ち上がり、強力なグリップ力を感じさせながらスムーズかつ俊敏にノーズがインに向いていく。
コーナー立ち上がりでアクセルを踏み込んでいくと、今度は後輪の踏ん張り感が増大。ペースがゆっくりでも、常識の範囲で可能な限り高めていっても、4つのタイヤを上手に路面に押し付けている感覚が強い。それに加えてスポーティーなセッティングのクワトロが賢く前後に駆動力を配分し、さらにリアのスポーツディファレンシャルが左右のトルク配分をコントロール。安心感と一体感がおそろしく高いレベルで両立されている。まさに技術による先進。FR系のライバルに対してハンドリングでは一歩譲るなんていうのは過去の話で、RS 5スポーツバックはワインディングロードを存分に楽しめるハンドリングの持ち主なのだ。
今どきのアウディらしい洗練性をも身につけたRS 5スポーツバックは、デイリーユースでは汗臭さを感じさせない爽やかなアスリートとして振る舞うが、しかるべきステージでムチを入れれば、とてつもなく熱い。やはりアウディスポーツが送り出すRSは特別な存在なのだ。
実は、A5/A5スポーツバックは来年にフェイスリフトが控えており、現行のRS 5スポーツバックのモデルライフは短い期間で終わることになりそうだ。走りに関してはさほど大きな変化はないだろうが、時代の趨勢(すうせい)に押されて環境対応技術が盛り込まれる可能性もなくはない。ひょっとすると、「RS 5スポーツバックは前期型のほうがおいしいね」なんてことにもなりかねないのだ。この型が欲しいという人は、早めに動いて損はないだろう。
(文=石井昌道/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アウディRS 5スポーツバック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1860×1390mm
ホイールベース:2825mm
車重:1810kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:450PS(331kW)/5700-6700rpm
最大トルク:600N・m(61.1kgf・m)/1900-5000rpm
タイヤ:(前)275/30R20 97Y/(後)275/30R20 97Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.2km/リッター(JC08モード)
価格:1302万円/テスト車=1523万円
オプション装備:RSスポーツエキゾーストシステム(17万円)/デコラティブパネル カーボン(10万円)/カーボンスタイリングパッケージ(88万円)/ヘッドアップディスプレイ(14万円)/セラミックブレーキ<フロント>(84万円)/アシスタンスパッケージ(8万円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1661km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:252.1km
使用燃料:29.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.7km/リッター(満タン法)/9.0km/リッター(車載燃費計計測値)
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石井 昌道
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