メルセデス・ベンツC300eセダン(FR/9AT)
主客転倒の時 2021.09.01 試乗記 メルセデス・ベンツの主力セダン「Cクラス」がフルモデルチェンジ。国内では2021年秋からのデリバリーが予定されているが、一足早く欧州でそのステアリングを握るチャンスを得た。プラグインハイブリッドモデル「C300e」の仕上がりを報告する。シリーズ累計販売は1050万台以上
7月下旬にスイス・チューリッヒで行われた「メルセデス・ベンツEQS」の国際試乗会では、最終日にオプションプログラムとしてドイツ・イメンディンゲンに新設された開発拠点の取材が組まれていた。この日は、チューリッヒ~イメンディンゲン~チューリッヒ空港の間を移動したのだが、用意されたクルマは、なんと2021年6月に日本導入が発表されたニューCクラス。しかも日本市場での発売時期がまだはっきりとアナウンスされていないPHEVのC300eセダン(国内向けは「C350e」を名乗る)で、思いがけず試乗するチャンスに巡り会った。
7年ぶりにフルモデルチェンジを受けた「W206」という社内開発コードを持つ新しいCクラスは、近年SUVやバッテリーEVが注目を浴びるメルセデス・ベンツのポートフォリオのなかでも、基幹モデルであることに変わりはない。1982年に登場した「190クラス」から累計で1050万台以上が販売されてきたCクラスは、現在も最大の販売ボリュームを誇るメルセデスである。先代の「W205」は、セダンとステーションワゴンだけで約250万台もが世界中の顧客のもとに届けられ、まさにグローバルでプレミアムDセグメントの基準となっているのだ。
そんなCクラスの新型は、同モデルの歴史のなかで初めてセダンとステーションワゴンが同時に発表された。メイン市場の欧州ではセダンよりステーションワゴンのほうが販売ボリュームが大きいだけに、できるだけ早いタイミングで販売をスタートしたいと考えたからだと思われる。
より伸びやかなスタイリングに
ニューCクラスは、新型「Sクラス」にも採用された「MRA-II(モジュラー・リアホイールドライブ・アーキテクチャーII)」を採用し、プラットフォームからすべてを一新。軽量化に加えて最新世代のエレクトロニクスや新世代パワートレインへの対応など、時代のニーズをしっかり盛り込んだ進化を遂げた。
ボディーサイズは、全長×全幅×全高=4751×1820×1438(ステーションワゴンは1455)mmで、セダンは先代より65mm長く、10mm幅広く、9mm低い。ステーションワゴンは、先代ではセダンよりも17mm長かったが、新型では全長が共通になり、全高は先代より7mm低くなっている。ホイールベースはセダン、ステーションワゴンとも先代から25mm延長された。全体的には全幅の拡大を最小限に抑えながら、より伸びやかなプロポーションを手に入れたというわけだ。
エレクトロニクスの面では、微少なミラーを用いて片側130万ピクセルもの配光を可能にしたデジタルヘッドライトや、センターコンソールから立ち上がる9.5インチまたは11.9インチのタッチディスプレイを核とした新世代の「MBUX」、「AR(Augmented Reality=拡張現実)ナビゲーションシステム」などの最新テクノロジーや、ステレオカメラに加えて360度カメラも用いて車線認識能力を高めた車線維持支援システム「アクティブステアリングアシスト」や、右左折時の対向車や飛び出し、巻き込みの危険をも検知する「アクティブブレーキアシスト」といった最先端の先進運転支援システム(ADAS)も搭載し、Sクラスに準じた充実の内容となっている。
黒子に徹するエンジン
発表時にアナウンスされたパワーユニットは、ガソリンが1.5リッターと2リッター、ディーゼルが2リッターで、すべて4気筒ターボエンジンである。注目は最高出力20PSと最大トルク200N・mを発生する48Vの第2世代ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせたマイルドハイブリッドを搭載していること。電気モーターが最大200N・mものトルクでアシストするのだから、相当にパワフルな加速を披露するはずだし、実燃費もかなり期待できる。もはやストロングハイブリッドと呼んでもいいかもしれない。
上記のモデルは、2021年秋から日本でも順次デリバリーがスタートするが、今回試乗したC300eセダンは、日本市場への導入が発表されてはいるものの、価格は未定で、デリバリー時期が2022年中ごろとされているPHEVモデルである。ヨーロッパ市場でも2022年初旬に発売予定という、いわゆる量産プロトタイプだ。
チューリッヒのホテルの駐車場に並んだC300eセダンは、一見しただけでは他のCクラスセダンと見分けはつかない「プチSクラス」的なデザインである。他のモデルとの違いは、逆台形で縦のルーバーを持つフロントグリルと、車両の左後方に充電口が備わる点くらいである。
C300eは、最高出力204PS、最大トルク320N・mの2リッター直4ガソリンターボエンジンと、同じく129PSと440N・mを発生する電気モーターを搭載し、9段ATの「9Gトロニック」を組み合わせたハイブリッドパワートレインを採用。システム合計では312PSと550N・mを発生する。もはや一昔前のハイパフォーマンスモデル並みのスペックだ。今回の試乗モデルはRWD(後輪駆動)だったが、セダン、ステーションワゴンともに4WDも選択可能になるそうだ(日本にはまずRWDのセダンのみが上陸予定)。
走りだしてまず驚いたのは、とにかく電気モーターを積極的に使うこと。始動時はEVモードが基本だが、ハイブリッドモードに入れても、登り坂などでアクセルペダルをかなり深く踏み込まないかぎり、市街地ではまずエンジンが始動することはない。それでも実用上は全く不足を感じないほどに電気モーターはパワフル。パドルスイッチで「D+」「D」「D-」の3段階に調整できる回生ブレーキを駆使すれば、EV走行でもけっこう積極的な走りが楽しめる。
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行程の9割以上をEV走行
速度が120km/hに制限されるスイスのアウトバーンでも、追い越し加速時を除いてエンジンは回らない。それもそのはず、資料にはC300eは電気モーターのみで140km/hまで加速できるとあるのだ。試しにドイツの速度無制限区間で試してみたら、メーター読みで151km/hまでEV走行で加速できた。しかもC300eは、25.4kWhもの大容量バッテリーを搭載していて、EVモードにおける航続距離はWLTPで最大110kmにも達する。もはやエンジンは追い越し加速時のような電気モーターだけでは加速力が足りないときのアシストと、バッテリーが底をついたときのための保険といった感じだ。
実際、今回はチューリッヒ~イメンディンゲン間の約110kmは走行ルートの97%が、急速充電後に走行したイメンディンゲン~チューリッヒ空港間の約100kmは95%がEV走行だった。平均速度が低い日本で一日あたりの走行距離が100km程度のユーザーなら、今日はエンジンが回らなかったなんてことも十分にあり得るだろう。ちなみに充電は55kWの直流急速充電に対応していて、約30分でフル充電が可能。最大11kWに対応したオンボードチャージャーも搭載し、家庭用ウォールボックスでも充電できる。
ほぼバッテリーEVのような使い方ができるC300eだが、個人的に運転していて“楽しい”とか“気持ちいい”と感じたのは、やはり「スポーツ」モードで迫力あるエキゾーストノートを聞きながらワインディングロードを走った瞬間だった。EV走行よりパワフルなだけでなく、リズムよく走れるのだ。Sクラス譲りのリアアクスルステアリングを採用するなど、先代以上にスポーティーなキャラクターを際立たせたという新型Cクラスのシャシーも、スポーツモードでこそ真価を発揮すると感じた。
ただ、乗り心地は若干気になった。まだマイルドハイブリッドのモデルに試乗していないので、なんとも言えないのだが、より重量がかさむハイブリッドパワートレインや大容量バッテリーを搭載しているためか、足まわりが固められているようで、ストローク感が薄く、なんだかゴツゴツとした乗り心地だったのだ。まだデリバリー開始まで時間があるので改善されるかもしれないが、市販モデルでもう一度確認したいところである。
そのほかは、インテリアの仕立ては文句なく上質だし、ドライバー側に6度傾けられたMBUXのタッチディスプレイも使いやすい(Sクラスでは真後ろを向いている)。ラゲッジスペースは下部にバッテリーを積むためマイルドハイブリッド各車が445リッターのところ315リッター(ステーションワゴンは490リッターが360リッターに)と小さくなっているが、フロア高が開口部下端とほぼ同じなので使い勝手は悪くない。自宅で充電できる環境があるなら、選択肢に入れる価値が十分にある上質なミッドサイズセダンである。
(文=竹花寿実/写真=ダイムラー/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC300eセダン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4751×1820×1438mm
ホイールベース:2865mm
車重:--kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)
モーター最高出力:129PS(95kW)
モーター最大トルク:440N・m(44.9kgf・m)
システム最高出力:312PS(230kW)
システム最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)245/40R18 91W(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)
ハイブリッド燃料消費率:1.1-0.7リッター/100km(約90.9-142.9km/リッター、WLTPモード)
価格:--万円/テスト車=---円
オプション装備:--
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

竹花 寿実
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