フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントeTSIアクティブ(FF/7AT)
足るを知る者は軽やかだ 2021.10.13 試乗記 フォルクスワーゲンの新型「ゴルフヴァリアント」に試乗。ホイールベースの延長により拡大されたキャビンや荷室の仕上がりと、同じ48Vマイルドハイブリッド機構付き1リッター直3エンジンを搭載する、ハッチバック車との走りの違いを確かめた。これで十分じゃないか
新型8代目「ゴルフ」ファミリーの第2弾はステーションワゴン版のヴァリアントである。余裕たっぷりで使いやすい形状のラゲッジスペースが一番の売りだが、新型ヴァリアントは歴代モデルで初めてハッチバックのゴルフより長いホイールベースを持ち、後席のレッグルームも広くなっているという。
ハッチバックよりも50mm長いホイールベースのおかげで後席の膝回りの余裕が明らかに増していることと、標準時611リッターの容量を持つ荷室が格段に広いこと(ハッチバックは同380リッター)を除けば、メカニカルな部分での違いはないといっていい。
1リッターターボと1.5リッターターボに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインや、各エンジンにつき2種で計4種類のモデルラインナップ、オプションパッケージなどについてもハッチバックと事実上同じ。今回試乗した車両は1リッター直3直噴ターボの上位グレードとなる「eTSIアクティブ」である。
同グレード同士を比べるとヴァリアントの車重はハッチバックの50kg増し、価格では14万円高である。大きく重くなっているぶん、最高出力110PS/5500rpmと最大トルク200N・m/2000-3000rpmの「1.0e TSI」ではさらに苦しげな場面が多いかも、と心配したが、意外にも不満を感じるほどではなかった。
今回は、過去に同車の試乗会が開催された箱根の山道だけでなく、高速道路や郊外の一般道などほぼすべての舞台で試すことができたが、結論としてこれで十分ではないかと感じた。もちろん、高速の合流やきつい上り坂では思うように加速せず、もうちょっとと思う場面もあるが、普通に気持ちよく走るぐらいのペースならば問題になるほどではない。それよりも、ハッチバックのeTSIアクティブに比べて常用域でなぜかよりスムーズなのが好印象だった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
勤勉さが煩わしい時もある
ハッチバックでは場合によって顔をのぞかせた3気筒特有のバイブレーションがヴァリアントではなぜかほとんど感じられず、さらにこちらのほうが乗り心地やハンドリングにも落ち着きがあり、マイルドで洗練されているように感じた。
ロングホイールベースと前後の重量バランスのせいなのか(車検証上の前後重量配分は58:42、同じくハッチバックの60:40よりも若干後ろ寄り)、まったりと粘り強い挙動が特徴的でフラット感やスタビリティーは文句なし。こういう点はさすがゴルフである。
いっぽうで、交通量が多いバイパスのような環境では、わずかな隙も見逃さずに頻繁にエンジンを止めて惰性走行するコースティング機能がいささか煩わしく感じることがあるのも事実。先行車との車間距離を保ちたいのだが、スロットルを緩めてもスーッと引っ張られるようにコースティングするので速度コントロールがちょっと面倒だ。
そんな場面ではシフトパドルを使うか、ドライブモードを「S」にすればコースティングをキャンセルできるが、さらに同様の場面での緩制動中にブレーキのフィーリングが微妙に変化することも何だか気持ちよくない。軽く一定にブレーキペダルを踏んでいても、減速Gとペダルタッチが勝手に変化するのだ。回生ブレーキと摩擦ブレーキのすり合わせ制御が今ひとつということかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ホイールベースの不思議
これまでのヴァリアント(最初のヴァリアントは「ゴルフワゴン」の名前でゴルフ3時代に登場)は誤解を恐れずに言えばボディー後部を延ばしただけのクルマだったが、新型はハッチバックのゴルフよりも50mm長い2670mmのホイールベースが与えられている。
プロポーションも今風で、リアゲートはかなり傾斜がついており、実際よりも長く低く見える。先代ヴァリアントに比べて全長は65mm長い4640mmとなっている。新型ハッチバックの全長は4295mmだから、ハッチバック比ではヴァリアントは345mm長い。いっぽう全幅はハッチバックと同じ1790mm、全高は10mm高い1485mmだ。
ちなみに新型ゴルフの日本仕様のホイールベースは2620mmとされているが、最初の海外試乗会の時には2636mmと発表されていた。つまり先代モデルと変わらないのだが、なぜか日本仕様では短くなっている。いっぽうでプラットフォームを分け合う新型「アウディA3」は2635mmのままだ。
二捨三入で5mm刻みの表示法など日本特有の事情を考えても、どうにもふに落ちないので本国に確認してもらったところ、計測条件の違いで当初は2636mmだったが現在は2619mm(日本では2620mmとなる)が正式な数値だという返答があった。
しかもこれは、先代モデルの後期型、いわゆるゴルフ7.5に変わった時からそうだったらしい。それでもどこか釈然としないが、今のところ確認できたのはそういうことである。新型ゴルフ8にモデルチェンジした際に全幅とともにホイールベースも短縮されたという事実はない。短くしたのではなく、なぜか短くなってしまったのである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
実用車のかがみ
いずれにせよ、ホイールベースがハッチバックよりも延長されたおかげでリアシートの足元スペースが広がり(欧州データの最大レッグルームは903mm→941mmに拡大)、ラゲッジスペース容量も同じくわずかだが大きくなっていることがヴァリアントの特長である。
ハッチバックの後席も十分に広いが、ホイールベースが長いワゴンは足を組めるほどの余裕がある。延びた全長分はホイールベースとフロントオーバーハングで占められており、リアオーバーハングの長さは先代とほとんど変わらないというから、当然ラゲッジスペースの増加分はわずかにとどまっている。
新型の荷室容量は611リッター(先代のヴァリアントに対して6リッター増し。ちなみに「パサートヴァリアント」は650リッター)、リアシートバックレストを倒した最大時は1642リッターである(同22リッター増し)。例によってサスペンションなどの張り出しは最小限に抑えられており、スクエアで使いやすい形状は相変わらず。しかも床下にはスペースセイバーながらちゃんとスペアタイヤも収まっている。実際に使う場合はこのフロア下スペースにもかなりの物が収納できる。
デジタルメーターやタッチスイッチなどではなく、こういうところにわれわれのようなオッサン世代は実に安心できるというか、頼もしさを感じるのだ。ちなみにパワーテールゲート(挟み込み防止&イージーオープン機能付き)はテクノロジーパッケージ(eTSIアクティブでは23万1000円)に含まれるオプションとなる。
ファミリーカーとしては1リッターのヴァリアントで十分ではないだろうか。いやいや、いつでもビュンビュン走りたい、という向きはこれから続々と追加されるモデルを試してからでも遅くはない。
(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントeTSIアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1790×1485mm
ホイールベース:2670mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:110PS(81kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/2000-3000rpm
モーター最高出力:13PS(9.4kW)
モーター最大トルク:62N・m(6.3kgf・m)
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)205/55R16 91V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス)
燃費:18.0km/リッター(WLTCモード)
価格:326万5000円/テスト車=372万7000円
オプション装備:ディスカバープロパッケージ(19万8000円)/テクノロジーパッケージ(23万1000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(3万3000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1914km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:448.0km
使用燃料:31.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.4km/リッター(満タン法)/14.3km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
-
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.4.17 アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.13 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデルの印象やいかに。
-
アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)【試乗記】 2026.4.11 アルファ・ロメオのミドルクラスSUV「トナーレ」がマイナーチェンジ。走りに装備、デザインと、多方面で進化を遂げた最新型に、箱根のワインディングロードで試乗した。“CセグメントSUV”という、最量販マーケットで戦う今どきのアルファの実力を報告する。
-
NEW
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。 -
谷口信輝の新車試乗――ディフェンダー・オクタ編
2026.4.17webCG Moviesブーム真っ盛りのSUVのなかで、頂点に位置するモデルのひとつであろう「ディフェンダー・オクタ」。そのステアリングを握ったレーシングドライバー谷口信輝の評価は……? 動画でリポートします。 -
第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す
2026.4.17エディターから一言スバルのアップグレードサービスで「レヴォーグ」の走りが変わる? 足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と、静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」の効能を、試乗を通して確かめた。 -
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】
2026.4.17試乗記アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。


















































