BMW R18トランスコンチネンタル ファーストエディション(6MT)/R18Bファーストエディション(6MT)
心身を鍛えよ 2021.11.05 試乗記 BMWのビッグクルーザー「R18」シリーズに、よりグランドツーリングに好適な「R18B/R18トランスコンチネンタル」が登場。ベースモデルとは一味違う走りを試すとともに、このラグジュアリーなジャーマンツアラーに見合うオーナー像を模索した。走りだす前にも関門が
「自分のバイクに乗っているとき、信号待ちで股(また)に挟んだバイクを左右に揺すったりするじゃありませんか」とBMWモトラッドの人。「あんな感じで、スタンドを払ったR18を下半身で起こしてやると、意外とアッサリできますよ」
BMWの新世代クルーザー、R18トランスコンチネンタルを試乗した感想を聞かれ、「まずは重たいですね」と同車を引き起こす動作をしながら答えたところ、「コツがあるんです」と上記の通り教えてくれた。「なるほど、そうしたものですか」と感心してみせると、「なにしろ最初の関門でくじけてしまうお客さまもいますから」と、親切なスタッフは笑う。実際、R18で走り始めるその前に、すでに諦めてしまうユーザーも少なくないのだろう。BMW R18トランスコンチネンタルの車重は427kgである。
2021年8月5日に予約受注が開始されたBMW R18BとR18トランスコンチネンタルは、1801ccという、ちょっと驚く排気量のボクサーツインを搭載したビッグツアラー。言うまでもなく2020年に登場したR18シリーズの一員で、ベーシックな「R18」、高いフロントスクリーンとリア左右にソフトバッグを装備した「R18クラシック」に続くモデルである。
キャラクターに合わせてシャシーも最適化
BMW R18Bは、フロントにスクリーンを備えたフェアリングを与え、リア左右のハードケースに至るまでの車体全体をドレッシーにまとめた、いわゆるバガースタイルを採る。クールなクルージングやロングツーリングを予感させる一台だ。車両本体価格は311万2500円だが、今回試乗した初回生産モデルの「ファーストエディション」は341万8500円だった。
R18トランスコンチネンタルは、フロントフェアリングにさらに高さがある大スクリーンを組み合わせ、ライダーの脚前に前方からの風を整流するフェアリングや開閉できるコンパクトな風よけが設けられる。左右のパニアケースにプラスして、パッセンジャー用の背もたれと一体化したトップケースをリアに搭載。R18B以上にロングな、名前通り大陸横断的な用途に使いたくなる堂々たるモトラッドだ。こちらは372万6000円で、ファーストエディションは403万2000円である。
一見、新しい2モデルは先行したR18に豪華装備を追加しただけの派生車種に思えるが、さにあらず。シャシー、足まわりに手が入れられ、特にリアサスペンションには自動で車高を調整する機能が追加された。長旅のために多くの荷物を搭載したり、パートナーを後席に招いたりしたときなど、重さで下がった車高をセンサーが感知して、走行開始と同時にスプリングのプリロードを変更。標準位置までボディーを持ち上げてくれる。
ビッグボクサーを抱くメインフレームも強化された。ステアリングまわりのフレーム形状を工夫して耐荷重性を高めているのもハードツアラーならではだ。面白いのは、ハンドリングが過度に鈍重になるのを嫌ったのだろう。R18B/R18トランスコンチネンタルのフロントフォークは、R18、同クラシックよりむしろ立てられ、その結果、ホイールベースも短くなっている。
古典的なダブルクレードルタイプのスチールフレームに搭載される水平対向2気筒エンジンは、91PS/4750rpmの最高出力と、158N・m/3000rpmの最大トルクを発生。もちろん、BMW得意のドライブシャフトを介して後輪を駆動する。トランスミッションは、バックギアを持つ6スピードのマニュアルである。
タイヤサイズは両者共通で、フロントが120/70R19(またはB19)、リアは180/65B16となる。
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快適装備はゴージャスの極み
BMW R18B、R18トランスコンチネンタルのプレス試乗会は、あいにくの雨。会場となったカフェの中庭ではクラシカルなラッカーブラックにペイントされたトランスコンチネンタルがぬれそぼり、会場にはワイルドなアメリカンロックが大音量で流される。「この音楽はドコから?」と無意識にスピーカーを探していて、気がついた。大型クルーザーそのものが音源になっている!
前車との距離を保って追従する高機能のクルーズコントロール、コーナリング中も作動する前後ブレーキを統合制御するABS、滑りやすい路面でありがたいトラクションコントロールやスタビリティーコントロール、坂道発進時に頼もしいヒルスタートコントロールといった先進技術をはじめ、LED補助ヘッドランプやシート&グリップヒーターといった豊富な装備を誇るR18BとR18トランスコンチネンタル。
両者のぜいたくさをさらに加速させるのが、英Marshall(マーシャル)社と共同開発したサウンドシステムである。フロントフェアリング左右に25Wの2ウェイラウンドスピーカーを標準装備。展示車両は、リアの両パニアケースとトップケースに工場装着オプションのスピーカーとサブウーハーを追加で組み込み、迫力のサウンドを響かせていた。
オリジナリティーを自身の源流に求める
言うまでもなく、R18シリーズは、ハーレーダビッドソンが牛耳る北米市場に殴り込みをかけるべく開発されたモデルだが、決してハーレーを模したバイクではない。実はBMWは、R18以前に既存の大排気量モデルに手を入れて北米に投入したことがあったが、思うような成績を収めることができなかった。
そこで「原点回帰」を図って自らを見つめ直し、なんと1936年登場の「BMW R5」にまでさかのぼる。ダブルクレードルフレーム、ボクサーエンジン、シャフトドライブ、ティアドロップ型タンク、そしてブラックペイントといった古式ゆかしい姿を最新の技術で現代によみがえらせたのが、21世紀のR18シリーズである。
BMWはこのR18シリーズをもって、アメリカのバイク好きのうち、例えば「iPhone」や「MacBook」を好むような高所得者層に食い込めないかと期待している。「人と同じものはイヤ」と考える、ちょっとスカした(失礼!)40代、50代が、それぞれR18B、R18トランスコンチネンタルの想定ユーザーである。前者はリベラルなチョイワル、後者は保守的なボスキャラをイメージする。
老舗BMWといえどもアメリカのクルーザー/ツーリングバイク市場では、今のところシェア10%にも届かない「その他大勢組」の一員だ。まずはコアなファンを獲得するのが肝要で、そのためのビッグボクサーであり、豪華なサウンドシステムであり、一目でわかる質感の高さである。
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コツをつかんでも怖いものは怖い
おっかなビックリBMW R18トランスコンチネンタルの試乗を終えたのち、コーヒーブレイクを挟んでR18Bのサドルにまたがる。先のアドバイスに従い、両手はグリップに添えるだけにして腰下でビッグボクサーを起こしてやると、オオッ! 思いのほかスンナリ立ち上がった。398kgという、トランスコンチネンタルより29kg軽い車重のせいだけではあるまい。左右に揺れるハンドルに頼るよりむしろ不安が少ないのが、いい結果につながった。
R18Bのフロントスクリーンはトランスコンチネンタルより短くて、見ても乗ってもスポーティーさが増している。目の前の4連アナログメーターと10.25インチの大きな液晶ディスプレイ、フタ付きのスマートフォン収納スペースが設けられた幅広タンク、左右でややオフセットされた(右側が少し後方に下がっている)フラットツインが大迫力。シート高は720mmで、身長165cm・昭和体形の自分でも、両足の親指付近まで接地できる。
ボクサーエンジンに火を入れると同時にボディーが左に振られ、R18Bと試乗者の目が覚まされる。クラッチをつないでいざ走り始めると、ほとんどアイドリング域でもバイクを動かせるブッ太いトルクの恩恵で、当初の心配がウソのようにドイツ産バガーはスムーズに滑り出す……とカッコよくいきたいところだけれど、本当は足元が砂利の駐車場ということもあって、またごく低速域では大きなフロントフェアリングを付けたハンドルがやや過敏に左右に動くため、気の小さいライダー(←ワタシです)は冷や汗をかきながら舗装路に這(は)い出ることになる。
エンジンが強力ならブレーキも強力
R18の走りは標準の「Roll」のほか、おとなしい「Rain」、アグレッシブな「Rock」と、3種類のライディングモードから選択できる。冷たい雨が降るこの日は、迷わずRainをセレクト。エンジン出力やスロットル特性のほか、トラクション/スタビリティーコントロールなども併せて変更される。スロットル操作に合わせて、排気量によった十分な駆動力が穏やかに紡ぎ出され、乗り手を安心させる。
このモードセレクトは走行中にも変更可能で、試しにRockにしてみると、フラットツインの出力が明らかにワイルドになって加速も目に見えてよくなる。が、ウエット路面では2、3分も堪能すればおなかいっぱい。ダンスしすぎる前に、デフォルトのRollに切り替える。
ピストンが左右から打ち合うプッシュロッドユニットは想像にたがわぬ大トルクの持ち主で、ピークパワーの発生回転数は4750rpmだけれど、3000rpmも回さずユルユルと重量級クルーザーを運ぶのが“らしい”走りだろう。2速2000rpmで約40km/h、3速2000rpmで55km/h付近だから、街なかではなかなか高いギアに入らない。
少々気になったのが、右足のフットブレーキ。大きく突き出したシリンダーの下に隠れてしまうので、最初は手探りならぬ足探りしながら踏むことになる。もっともR18の前後ブレーキはコンビネーションタイプで、フロントブレーキをかけると自動でリアにも制動力が生じる仕組みになっているから、普段は右手のブレーキだけでこと足りるのかもしれない。ちなみに前後のブレーキを共に操作すれば、連携は切られるという。
ストッピングパワーそのものは、フロント300mmのダブルディスクを4ピストンキャリパーで締め付ける強力なもの。さらにコーナリング中にも巧妙にABSを作動させるシステムが導入された。クルーズコントロール作動中には、カーブに応じて快適で安全な、つまり「怖くない」バンク角で曲がれるような速度に調整してくれるという。山あいを縫うように走る高速道路が多いニッポンでは、ありがたいシステムになろう。
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オーナーに求められる筋力以外の資質
R18Bに先立つR18トランスコンチネンタルの試乗時間では、千葉方面から東京湾アクアラインに入って海ほたるでUターンする、ベリーショートな(!?)ハイウェイクルーズを体験できた。あとひと吹きで通行禁止になるような雨天の強風を、重量級クルーザーはものともしないで突き進んでいく。大面積のフロントスクリーンが面白いように雨粒を飛ばしてくれる。「大陸横断には耐候性も大事なのだなァ」と、30分にも満たないクルージングで痛感した軟弱ライダーである。
レーダーを使った高機能のクルーズコントロールもR18のジマンで、使い方は簡単。スイッチをスライドさせてONにして、隣のレバーを倒して速度を設定するだけ。車間距離は別のボタンで調整できる。前のクルマに合わせた丁寧な加減速が印象的で、ライダーを慌てさせない。「基本となる高度なブレーキシステムが貢献している」と、あとでスタッフの人が教えてくれた。
冷たい雨が降るなか、ゴージャスな2台の試乗で最もありがたかった装備が、強力なグリップヒーターとシートヒーターである。ことに前者は最強に設定すると、グローブを通してもやけどしそうなほど熱くなる。これなら真冬用の厚い手袋でも効果を感じられるはずだ。ちなみにタンデムで使うユーザーのため、R18トランスコンチネンタルは後席もシートヒーター付き。うーん、ラグジュアリー!
それにしても、2人乗車の重量級クルーザーを自在に操る50代とは、なんとパワフルな人でしょう! BMW R18トランスコンチネンタルをライフスタイルに取り込むには、資力、体力はもとより、いわゆる熟年までパートナーと友好な関係を維持する忍耐力が最も必要とされるのかもしれない。そう考えると、タンデムのプレッシャーがないR18Bのハードルはググッと低い。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
BMW R18トランスコンチネンタル ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2650×970×1500mm
ホイールベース:1720mm
シート高:720mm
重量:427kg(DIN空車時)/440kg(国土交通省届出値)
エンジン:1801cc 空油冷4ストローク水平対向2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:91PS(67kW)/4750rpm
最大トルク:158N・m(16.1kgf・m)/3000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:17.24km/リッター(WMTCモード)
価格:403万2000円
BMW R18Bファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2560×970×1400mm
ホイールベース:1700mm
シート高:720mm
重量:398kg(DIN空車時)/410kg(国土交通省届出値)
エンジン:1801cc 空油冷4ストローク水平対向2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:91PS(67kW)/4750rpm
最大トルク:158N・m(16.1kgf・m)/3000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:17.24km/リッター(WMTCモード)
価格:341万8500円

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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