【F1 2022】アゼルバイジャンGP続報:レッドブル今季3度目の1-2、フェラーリまたも信頼性に泣く
2022.06.13 自動車ニュース![]() |
2022年6月12日、アゼルバイジャンのバクー・シティ・サーキットで行われたF1世界選手権第8戦アゼルバイジャンGP。フェラーリ対レッドブルという今季のタイトル争いの構図は、紅の編隊がまたも信頼性の問題で自滅したことで、レッドブルのリードがいっそう拡大したのだった。
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好調ペレスの勢いと、フェルスタッペンとの関係
前戦モナコGPでは、チームメイトのマックス・フェルスタッペンを上回る活躍ぶりで今季初優勝。その後、2024年までのレッドブル残留が発表されたセルジオ・ペレスの元気がいい。チャンピオンシップリーダーであるフェルスタッペンの15点差にまで迫り、タイトル争いにも絡んできそうな勢いがあるのだ。
その好調ぶりは戦績にも表れており、移籍初年の2021年と今季7戦までを比較すると以下のようになる。
- 2021年:出走22回、優勝1回、表彰台5回、ポール0回、ランキング4位(190点)
- 2022年:出走7回、優勝1回、表彰台4回、ポール1回、ランキング3位(110点)
1レースあたりの平均獲得ポイントを比較しても、昨季8.6点だったのが今季は15.7点と大きく伸び、いかに2022年のペレスが上り調子なのかが分かる。その快進撃を支えるのが、ペレスと今季型マシン「RB18」との相性だ。
昨季までのレッドブルは、その特性からフロントの食いつきが良く、リアが若干不安定だったため、乗りこなすためにはちょっとした技量が求められた。実際に2019年のピエール・ガスリー、その後を継いだアレクサンダー・アルボン、そしてペレスと、独特のステア傾向に苦しむドライバーが続出し、そんなマシンをねじ伏せることができたフェルスタッペンの天下が続くことになった。
それが2022年にグラウンド・エフェクト・カーとなると潮目が変わる。ダウンフォースの発生場所がフロア下に移ったことで、マシンの後ろがより安定感を得ることになり、一方でフロントのアンダーステアがやや強くなると、フェルスタッペンとペレスの力関係にも影響が及ぶことになった。
モナコでの完敗の後、フェルスタッペン自身はチームメイトの優勝を祝福していたが、チャンピオンの父ヨスは、「ポイントリーダー(である自分の息子)に、チームはもっと配慮すべきだった」との発言をしたとか。とはいえ、フェルスタッペンがペレスに負けたことは事実であり、またレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も、2人のドライバーでタイトルを争わせることを認めている。
フェラーリ対レッドブルの対決軸に、新たな見どころが加わるのは、ファンとしては歓迎すべきことである。
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ルクレール、スーパーラップで4戦連続ポール
2km超の全開区間と、タイトな旧市街地セクションを組み合わせたバクーのコースでは、初日から相も変わらずフェラーリとレッドブルの2強が火花を散らした。
まず予選を制したのはフェラーリのシャルル・ルクレール。跳ね馬の手綱さばきも鮮やかに、Q3最後に見事なラップを決めて4戦連続、今季6回目、通算ではフェルスタッペンを抜き15回目のポールポジションを獲得した。過去3戦、レースではレッドブルに勝利を奪われていただけに、「日曜日にしっかり“仕事”を終わらせる必要がある」と、決勝に向けた意気込みを語っていた。
0.282秒遅れで2位だったのはレッドブルのペレス。昨年のアゼルバイジャンGP覇者でもあるメキシカンは、今回もフェルスタッペンを後ろに従えてのスタートとなり、フェルスタッペンは2戦連続でチームメイトに前を取られた。
フェラーリのカルロス・サインツJr.は4位、メルセデスのジョージ・ラッセル5位、そしてアルファタウリのピエール・ガスリーは今季最高のパフォーマンスで6位。さらにメルセデスのルイス・ハミルトン7位、そしてマイアミGPに次ぐ今季2回目のQ3進出となった角田裕毅が今シーズン最高の8位と、メルセデスとアルファタウリが中団勢トップ争いを繰り広げた。
5列目には、アストンマーティンのセバスチャン・ベッテル9位、アルピーヌのフェルナンド・アロンソ10位と、元王者のベテラン2人が並んだ。
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ペレスがスタートで首位、サインツJr.早々にリタイア
予選では最速のフェラーリだったが、またもレースになるとほころびが出始めてしまう。
上位勢はミディアムタイヤを装着し、51周レースはスタート。ターン1に最初に飛び込んだのは、抜群の滑り出しをみせたペレスで、ルクレールは2位に落ち、その後ろにフェルスタッペン、サインツJr.、ラッセルらが続いた。
トップのペレスは4周して2秒のリードを築き、早々にルクレールにDRSを使わせないレンジまで逃げた。一方で3位フェルスタッペンは1秒以下でフェラーリに迫り、レースペースではレッドブルに一日の長があることが早々に明らかになった。
さらにフェラーリに追い打ちをかけるような出来事が起こる。9周目にサインツJr.が油圧系のトラブルでコースを外れ、リタイアしたのだ。これでバーチャルセーフティーカーが出て、ルクレール、ラッセル、ハミルトンらがピットに向かいタイヤ交換。ペレス、フェルスタッペンのレッドブル勢らはコースにとどまり続けた。
上位の順位は、タイヤを替えていない1位ペレス、2位フェルスタッペンと、ハードに履き替えた3位ルクレール、4位ラッセル。15周目、タイヤで苦しんでいたペレスにチームは「戦うなよ」と指示を出し、より速いフェルスタッペンを前に行かせることとした。
そのペレスは、17周目にハードに履き替え、19周目にはフェルスタッペンもハードに交換。これで首位ルクレール、2位フェルスタッペン、3位ペレスというオーダーとなり、レッドブルがタイヤ交換のタイミングでルクレールにトップを譲ったかっこうとなった。
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ルクレールが白煙を上げ脱落、レッドブル1-2で5連勝
20周目、ルクレールのフェラーリから白煙が噴き出し、赤いマシンはよろよろとピットへ。第6戦スペインGPに次ぐ、首位走行中のマシントラブルにより、ルクレールは痛恨のノーポイントに終わった。
これでレッドブルは労せずして1-2を手に入れ、フェルスタッペンはペレスを従えて快走を続けることになった。別格の速さで逃げるトップ2台の後ろでは、メルセデスとアルファタウリがしのぎを削り合っていた。
3位ラッセル、4位ガスリー、6位ハミルトン、そして7位角田といったオーダーは、33周目、ハースのケビン・マグヌッセンがトラブルでコース脇にストップしたことで出たバーチャルセーフティーカーによりシャッフルされる。フェルスタッペン、ペレス、ラッセル、ハミルトンらが2セット目のハードにチェンジする一方、アルファタウリ勢はステイアウトし、これで1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ラッセル、4位ガスリー、5位角田、6位ハミルトンとなった。
フレッシュなタイヤを履くハミルトンは、36周目に角田を抜き5位、45周目にガスリーをかわして4位となり、ラッセルとともにメルセデスは3-4フィニッシュ。アルファタウリ勢は、ガスリーが今季最高5位を守り切ったものの、角田はリアウイングのフラップ破損でピットインを余儀なくされ、結果13位完走と、惜しくも上位入賞を逃した。
フェルスタッペン優勝、ペレス2位で、レッドブルは今季3度目の1-2を飾ったばかりか、第4戦エミリア・ロマーニャGPから5連勝を達成したことになり、チャンピオンシップでは2位フェラーリに80点もの大差をつけた。またドライバーズランキンでもフェルスタッペン&ペレスの1-2となり、タイトル争いは2強のぶつかり合いから、いよいよレッドブルの2人の間で繰り広げられそうな様相を呈している。
フェラーリが最後に勝ったのは、4月に行われた第3戦オーストラリアGPまでさかのぼらなければならない。予選では最速の跳ね馬は、その脆弱(ぜいじゃく)なマシンと体制をどうにかしない限り、レッドブルのリードは拡大するばかりである。
次戦は3年ぶりの開催となるカナダGP。決勝は1週間後の6月19日に行われる。
(文=bg)