ロータス・エミーラV6ファーストエディション(MR/6MT)
新時代の幕開け 2022.10.26 試乗記 ロータスの新しい時代を切り開くニューモデル「エミーラ」。その実力に、サーキットで触れる機会を得た。次世代ラインナップの嚆矢(こうし)であると同時に、エンジンを搭載する最後のロータスともされているミドシップスポーツは、いかなる走りを見せてくれるのか?スペックシートに見る“懸念材料”
現在、アルピーヌとともに次世代のスポーツEVを開発しているロータス。そんな彼らが、自ら「ガソリン時代の最後を飾るスポーツカー」と称するエミーラの「ファーストエディション」に、袖ケ浦フォレストレースウェイで試乗することができた。
エミーラはそのサイズを見ても分かるとおり、「エリーゼ」以降のアルミ製バスタブシャシー世代で最も大きなロータスだ。そのスリーサイズは、全長×全幅×全高=4413×1896×1235mm、ホイールベース=2570mm。「エヴォーラ」で使われたラージプラットフォームを進化させながらも、前後にサブフレームをつける手法はこれまでと同じ。外板パネルも従来同様FRPである。車両重量は、会場で確認したテクニカルデータだと、3.5リッターV6仕様の場合はMTで総重量1493kg、ATで同じく1500kg。事前に発表されていた車両重量は1405kgとあったが、これは乾燥重量なのだろう。
というわけで、そのサイズはエヴォーラ最後期のハイパフォーマンスモデル「GT410スポーツ」と比べて、全長で23mm長く、全幅で46mmワイド。全高も10mmほど高いが、これは快適指向の「ツーリングシャシー」を組み込んだもので、「スポーツシャシー」ではまた変わってくるかもしれない。
興味深いのは、ボディーが大きくなったにもかかわらずホイールベースに変わりがないこと。とはいえこの数字は、エヴォーラがライバル視していた「ポルシェ911」(2450mm)はもちろんのこと、「アルピーヌA110」(2420mm)や「ポルシェ718ケイマン」(2475mm)よりはるかに長い数値だ。これには、シート裏のラゲッジスペースを確保することと、ハイパワーミドシップ車の高速安定性を高める両方の狙いがあると思われるが、ともかく「これ以上長くして旋回性能を落とすことはしない」という判断なのだろう。そして肝心な車重は、乾燥重量で計算しても、先述のエヴォーラGT410より85kgも重くなっている。
ではなぜエミーラは、こうしたサイズアップを果たしたのだろう?
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スポーツカーとしての色気がある
エアバッグや先進安全装備、インフォテインメントシステムの搭載などで増えた重量を、ワイドトレッド化したシャシーで相殺する目的もあるだろう。だがロータスにとって最も大きなモチベーションとなっているのは、適切な室内スペースとグラマラスなボディーの獲得だと思う。
実際、筆者も“生エミーラ”を一目見て、極めて幼稚な感想だが、素直に「カッコいい」と思った。そして多くの人が、そのボリューミーな姿を見て同様の印象を持つと思う。シンプルかつエレガントな路線を選んで失敗し、ファイナルへ向かうに従ってレーシーな装備が加えられていったエヴォーラでの失敗に学んだのか、エミーラは最初からカッコつけることを恥ずかしがっていない。だからリアウイングなど無くても、スポーツカーとしての色気がある。人もクルマも、見た目が9割だ。
ただ一方で、「あんたそんなカッコばかり気にして、勉強ちゃんとやってるの!?」というオカンのような気持ちになることも事実である。要するにエミーラは、エヴォーラを超えられたのだろうか? もっと言えば、ロータスのスポーツカーたりえているのか? そんな青臭い思いを抱きながら、袖ケ浦フォレストレースウェイを走らせてみた。
エンジンのラインナップにはAMG製の2リッター直列4気筒ターボ(365PS)もあるエミーラだが、今回試乗したのは、ロータスもロータスユーザーも慣れ親しんだ3.5リッターV6スーパーチャージャーと6段MTの組み合わせだ。折しも筆者の試乗が始まる前あたりから天気は下り坂となり、路面はウエットとなってしまった。
過去のモデルから受け継いだところ、変わったところ
ピットレーンを、ひと転がし。初エミーラの第一印象は、意外なことに“違和感”から始まった。
まず「液晶メーターを隠さないように」と大径化されたハンドルが大きい。そしてブリッジタイプのセンターコンソールは位置が高く、ヒジが浮いてシフトしにくい。シフト自体の操作感はこれまで同様節度があっていいのだが、GTカーのようにヒジを置いて操作させるなら、もう少しショートストロークにしてもよいかもしれない。
運転環境のトーンに合わせて、シートもかなりラグジュアリーになった。ホールド性もそこそこあるが、クッションにコシがあって座り心地がいい。このときはなぜか上下の調整ができなかったが、ポジションも電動で合わせられるようになっている。総じて、GTカー然としているのだ。
ただ、サーキットでのその走りは、やっぱりロータスだった。サスペンションはこれまで以上にコシがあり、とてもしなやかにストロークする。操舵に対してノーズもリニアに反応するが、路面に対する“足つき”のよさに加えてロングホイールベースの影響もあるのだろう。クルマ全体の動きはとても穏やかだ。
エンジンは、スーパーチャージャーらしい気持ちよさがこの現代にとても貴重だと感じた。排気にタービンをかませないそのエキゾーストは、時代に合わせてやや音量が絞られたように感じるけれど、やはりターボよりずっと高音が響いて気持ちいい。
ただ、そのパワー感に関しては、これまで経験したロータスのV6スーパーチャージャーよりも、少しだけおとなしく思えた。試乗車はこの後イギリス本国にトンボ返りし、そこから世界を巡業するたった1台の貴重な個体。それゆえ、当日はエンジン回転を上限6000rpm程度に抑えていたのだが(最高出力の発生回転数およびレッドゾーンの始まりは6800rpm)、それにしても低中速トルクがやや細く感じられたのだ。
理由を深掘りすれば、やはり車重の増加が影響しているのかもしれない。もっとも、水冷式インタークーラーを得たあたりからのロータスV6は、そのアウトプットが大幅に洗練された。これに加えてシャシー性能も上がっているから、早とちりはできない。とにかくそのパワーは思ったよりも扱いやすく、“雨のなかのミドシップ”という緊張感は大きく和らいだ。
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どのコーナーでも感じられる“マナーのよさ”
徐々にペースを上げながらその素性を確かめてみるが、終始マナーのよさは変わらない。これはエヴォーラでもできていたことだが、重心が高い横置きV6スーパーチャージャーがもたらすコーナリング時の慣性重量は、この穏やかなサスペンションワークとロングホイールベースによって、上手に抑え込まれている。
むしろダンパーの伸び側減衰力が弱くセットされていることから、ターンインでフロント荷重を保つのが難しかった。“貴重な1台”という心理的ブレーキと雨のコンディションが重なって、進入速度を抑えたせいもあるが、意図的に慣性でリアを出そうとしても、ブレーキを弱めていくとフロントが浮いてしまうのだ。
ただ、これもあえてのセッティングだと思う。試乗車はツーリングシャシーを組み込んだいわばコンフォート仕様であり、こうしたウエット路面でクルマが巻き込まないようにするのは当然だといえる。だから、袖ケ浦フォレストレースウェイで言えばオーバーステアが出やすい下りながらの3コーナー、高速コーナーとなる5コーナーや8コーナーでも、ちょっと曲がらないな……と感じつつも、冷や汗をかかずに走ることができた。
それでも、低速コーナーでパワーをかけていったときのスライドコントロール性は高かった。ハンドルが大きいことは気分をそぐが、長いホイールベースをいったん振り出してしまえば、ゆっくりそのアングルを維持することができる。
時代が変わればクルマも変わる
ちなみに、ドライ路面で走った同業ドライバーも、エミーラの挙動は穏やかだったと語っていた。エキシージやエヴォーラと比べて、動きは少し重たくてスローだが、滑り出しても唐突さがなくこれをおさめやすいとのことだ。よって、より本格的な走りを求めるならば、スポーツシャシーと「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」の組み合わせを選ぶべきなのだろう。またパワーこそやや劣るが、2リッターターボと8段DCTを組み合わせた仕様も、そのシャシーファスターぶりが想像できて興味深い。
まとめるとロータス・エミーラは、ことV6エンジン搭載車に関してだが、アルミバスタブ世代のなかで一番GT的な要素が強いクルマに仕上がっていた。
果たしてそこに、僕らの思い描くロータスらしいストイックさやスパルタンさがあるのか? といえば、あまりない。しかし、そのしなやかなフットワークと気持ちよい加速感は、れっきとしたロータスだ。これが新世代の彼らの走りであり、エミーラはその最初のモデルなのだろう。
事実、400台確保されたファーストエディションの日本への割り当ては、V6、直4ともにほぼ完売。その数はアルピーヌA110の日本における販売台数を超えたという。一部の人が「そんなのロータスじゃない!」と拗(す)ねている間に、欲しい人たちは買っていく。世の中の動きはかくも速いものか、と思った次第である。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ロータス・エミーラV6ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4413×1896×1235mm
ホイールベース:2570mm
車重:1493kg
駆動方式:MR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:6段MT
最高出力:405PS(298kW)/6800rpm
最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/2700-6700rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y XL/(後)295/30ZR20 101Y XL(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ)
燃費:11.3リッター/100km(約8.8km/リッター、WLTPモード)
価格:1425万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:706km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター(満タン法)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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