ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)
シンプル・イズ・ビューティフル 2023.03.26 試乗記 120年を超える歴史を誇る老舗、ロイヤルエンフィールドから、空冷単気筒のニューモデル「ハンター350」が登場。古式ゆかしき“オートバイ”のスタイルを貫く一台は、シンプルで軽快で、スロットルを開けるごとに元気がもらえるマシンに仕上がっていた。世界に冠たるミドルクラスの雄
「今年からJAIA(日本自動車輸入組合)に入らせていただきまして、この1、2月の販売台数は、輸入車ブランドで5位といったところです」(ニヤリ)
発表会兼試乗会のプレゼンテーションで語られたこの話に、筆者はいささか驚いた。PCIによる正規輸入販売が始まってまだ3年に満たないというのに、これは大層な飛躍ではないか。恐るべし、ロイヤルエンフィールド。
いや。より実情に即した言い方をするのなら、グローバルマーケットでの実績に、日本での評価が追いついてきたというべきなのかもしれない。なにせ中排気量セグメント(250cc~750ccクラス)での世界シェアは、聞いて驚けナンバーワン。本国インドや発祥の地イギリスはもちろん、アジアやオセアニアでも人気を博す世界的メーカーなのだ。恥を忍んで申し上げると、自分も数年前までは、「シーラカンスみたいなバイクをつくるマニアックなメーカー」と誤解していた。だってそうでしょう。日本で見かけるのは「バレット500」とか「クラシック500」ぐらいだったんだもの! 伊丹孝裕さんのリポート(参照)でその実態を知り、己が無知と世界の狭さを恥じた次第である。
今回紹介するハンター350は、そんなロイヤルエンフィールド最新の……なんて言ったらいいんだ? そう、スタンダードモデルである。クラシックなネイキッドスタイルの、まさにスタンダードモデル。
ここ数年、ロイヤルエンフィールドはラインナップの中軸である350ccクラスで世代交代を進めていて、「メテオ350」「クラシック350」と新製品を投入してきた。ハンター350はその第3弾にあたり、「Jプラットフォーム」と呼ばれる新世代の空冷単気筒エンジンを、お尻の上がったコンパクトな車体に搭載している。そのスタイリングは、ツアラーやらアドベンチャーやらといったジャンル名を持たない、まさにスタンダードなバイクそのものだ。
“SR”や“TR”という文字列を見ると、無条件に鼻奥がツンとしてしまう筆者にとって、気にせずにはいられないモデルである。
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すっきりしていてシンプルにカッコいい
丸目一灯に涙滴型燃料タンクの空冷単気筒。最初の一台にも上がりの一台にも好適な、釣りで言えばフナみたいな存在だったバイクたちは皆、どこに行っちゃったんでしょうね……。
などと、哀愁に浸りながら日比谷公園で見(まみ)えたロイヤルエンフィールド・ハンター350は、やぼったいところがなく均整がとれていて、シンプルにカッコいいバイクだった。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=2100×800×1055mmと、「ホンダGB350」よりややロー&ショート。各部の造作もすっきりしていて小ぶりで、とても軽快感がある。USBポートを付けたり、テールランプがLED式だったりと装備も頑張る一方で、ロゴの類いがデカールなのはご愛嬌(あいきょう)。まぁ、セグメントを思えばここに文句をつけるのは筋違いでしょう。気になる人は、自分でカスタムしちゃいましょ。……というか、かなりすっぴん美人なバイクなので、カスタムの素材としてもこれは相当に面白い気がする。汎用(はんよう)品も使えるだろうけど、純正アクセサリーにはどんなものがどれくらい用意されているのだろう?
そんなことを思いつつ駐車枠から引き出してみると、もちろんというか当然というか、バツグンに取り回しがしやすい。車体のコンパクトさは先にも触れたとおりで、車重も181kgとクラス相応に軽量。シートにまたがってみても、身長167cmの筆者でも足裏が地面にぺったり……とまではいかないが、接地しないのはカカトだけだった。
なんというか、デザインといい押し引きの軽さといい、乗り出す前からすっかり懐に入り込まれた感じだ。「なじむ。実に! なじむぞ」と某漫画の悪役のように感動しながら、思いのほかガッチリとしたスタンドを払う。レトロなロータリー式のスタータースイッチをくいっと回すと、くだんのJプラットフォームが「ボボボン!」と元気に目を覚ます。
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エンジンもシャシーもゴキゲン
東京・丸の内のかいわいを周遊した今回の試乗では、始終このエンジンがゴキゲンだった。ラブリーでライブリー。普段使いの速度域が実に気持ちいい。
ロングストロークの単気筒なのでトルクのツキがいいのはもちろんだが、加速の仕方に表情があるのだ。スタートでスロットルを開けたときの反応は、意外や豪快。“単気筒のボンネビル”とでも言いたくなる(あくまで個人的見解です)、まろやかで粒が大きめのサウンドをはじけさせながら、軽快にスピードを乗せていく。GBほどお澄ましでも、SRほどバンカラでもない振動もいいあんばいで、回転が上がるにつれて粒がそろっていくさまも生き生きしている。
なんというか、低・中速が主体となる街なかでのライディングでも、スロットルを開けるたびに元気をもらえる感じだ。その実は学術的(?)になんの変哲もない空冷単気筒のSOHCだというのに(失礼!)、やっぱりバイクのエンジンというやつは、スペックで語れるものではないのだなぁ。
元気がもらえるといえば、軽快なバイクの身のこなしもそう。ハンドリングは軽く、交差点でちょいと車体を傾けると、作為的にアレコレしなくても望む方にバイクが向く。このジャンルでは人車一体感は濃いめで、例えばホンダGB350などよりかなりスポーツ寄りだ。
さらに言うと、ちゃんとタイヤに剛性感とインフォメーションがあるから、そうした操作を積極的に楽しめるのも◎。そのタイヤはといえば印CEAT(シアット)製のチューブレスバイアスで、関係者によると、同社製品の開発にはロイヤルエンフィールドも密接に関わっているとか。むしろ「OE(Original Equipment=純正装着)用に開発したタイヤを、一般にも販売している感じ」とのことだった。なるほどね。
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“普通のバイク”に栄光あれ!
試乗時間も終わりが迫り、お昼前の内堀通りを日比谷方向へスタコラ戻る。積極的なライディングには軽快に応えるくせに、ビジネスバンにせっつかれつつ恐怖の三宅坂(みやけざか)コーナーに臨んでも、ハンドルがふらふらしたりはしないんだなぁ……なんて、またしても素人みたいに感心してしまった。思い出せば、少なくとも今回の試乗&筆者の走り程度では、一度もハンドルの据わりに不安を覚えることはなかった。何様目線だって話ですが、つくづくこのシャシーを手がけた御仁は手だれだと思う。
普段使いをつつがなくこなす痛痒(つうよう)のなさと、普段使いでも折々で楽しめるスポーティーさを併せ持ち、ハイテクなんぞないがゆえにお手ごろで、シンプルで普遍的なカッコよさを身に着けている。某グルメ漫画の主人公じゃないけど、「こういうのでいいんだよ」。現状、国内のクラシック系空冷単気筒はGBの独壇場だけど、こりゃあホンダさんも、うかうかしていられませんぜ?
……というかさ、グローバルではロイヤルエンフィールドが気を吐いていて、国内ではGBが小型二輪のベストセラーに輝いたんだから(2022年、排気量250cc以上)、このジャンルが“枯れてる”なんてことはないんじゃないの? ヤマハさん、スズキさん、カワサキさん、どうなんですか? そのあたり。
(文=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>/写真=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>、ロイヤルエンフィールド/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2100×800×1055mm
ホイールベース:1370mm(本国仕様)
シート高:790mm
重量:181kg
エンジン:349cc 空冷4ストローク単気筒SOHC 2バルブ
最高出力:20PS(14.9kW)/6100rpm
最大トルク:27N・m(2.75kgf・m)/4000rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:--km/リッター
価格:65万7800円~66万4400円
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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