BMW M2(FR/6MT)
限界ギリギリ! 2023.04.03 試乗記 ハイパワーな直6エンジンを搭載した、MTも選べるFRスポーツ。多くのクルマ好きの熱視線を浴びるであろう新型「BMW M2」の走りとはどのようなものか? 山岳路も交え、アメリカ・アリゾナの道で実力を確かめた。日本のファンには“ちょうどいいM”
あれは今から7年前の2016年のこと。初代M2の登場は僕を含む多くのクルマ好きにとって慶事だったように覚えている。
「4シリーズ」の登場によりクーペが別名となったF80系の「M3」「M4」は既に全長が4.7m級になり、ホイールベースは2.8mオーバーと、いにしえのモデルたちを知る者にとっては、「M6」? とツッコミたくなる大きさに達していた。それでもV8を積む先代E90系からは大幅な軽量化を達成していたあたりはさすがにMだが、いかんせん車格と価格からなる印象で、なえてしまうのもまた事実だ。
そんな声が上がるのは先刻承知とばかりに登場したF87型M2は、当時の「2シリーズ」をベースに、車格的にはE46系をほうふつとさせるコンパクトな体躯(たいく)の持ち主だった。全幅は1855mmと日本の路上にはやや幅広だったものの、“エボもの”好きの心をくすぐるメリハリボディーを前に、ふらふらと“マルニターボ”やE30系の面影を重ねてしまうのも致しかたない。
搭載されるエンジンは当初、M3/M4の搭載するS55型ではなく、ベースともいえる「M240i」の流れをくむN55型だったが、それでもパワーは最高出力370PSと小さなボディーには十分なもので、それを6段MTでドライブできるという体験は、ほかでは得難いものだった。結局2018年にはS55型にスイッチし、そのパワーは限定車の「M2 CS」では450PSにまで高められたが、ベースモデルのバランスの良さをもって、ここ数年では「M760Li」と競うほどのベストBMWだったというのが個人的なM2評だ。
スペックはクラスを超えている
それゆえ、このフルモデルチェンジには並ならぬ興味を抱いていた。2代目となるG87型M2、その仕上がりやいかに? いざ現物に対面し、まじまじとディテールを見るや、ドン引きしたのがタイヤサイズだ。
前が275/35ZR19の、後ろが285/30ZR20……って、こ、こんなに太いの履いてんの? 特に前とか!? と、調べてみると、なんと現行型のM3/M4と同じだ。ちなみにこのサイズは現行型の「M5」ともほぼ変わらず、さらに言えば前輪の幅は初代M2の後輪より幅広い。
この極太タイヤをおさめるべく、“バットモービル”こと「3.0 CSL」ばりのブリスターシェイプで膨らんだ新型M2の全幅は1885mm。ベースとなる2シリーズ クーペに対して60mmの拡幅となる。効率優先の武骨なエアインレットの開口形状も相まって、見る角度によってはただならぬ存在感に圧(お)されるのは僕だけではないだろう。
搭載するエンジンもまた、M3/M4と同じS58系3リッター直6ツインターボとなる。初代が搭載していたS55系とはボア・ストロークも異なるMの最新世代ユニットとなり、そのアウトプットは最高出力460PS、最大トルク550N・m。M4の標準モデルに対しては20PS低いが、メーカー発表値の0-100km/h加速を見るとAT車の場合で4.1秒と、M4の4.2秒をわずかに上回っている。トランスミッションが8段ATと6段MTの双方を選べるようになっているのもM2の大きな特徴だ。日本仕様については価格(958万円)は同一の設定となっている。
感触としては「カッチリ」
12.3インチのメータークラスターと14.9インチのタッチパネルディスプレイを1枚に束ねた「カーブドディスプレイ」を配し、最新世代のOS8に準拠したインフォテインメントシステムを搭載するなど、M2は装備面でも上位モデルと大差ない仕立てだ。
8段ATについてはADAS(先進運転支援システム)もひととおりのものが標準で用意されるなど、日常性にも気遣いがみえる。トランク容量も初代と同じ390リッターを確保。後席はヘッドクリアランス的に大人はきついがレッグスペースは初代よりも広がっており、子どもや小柄な女性なら実用に足る空間が確保されている。生活全域をカバーできるスポーツカーという見地ならば、「ポルシェ911」あたりもものともしない使い勝手を備えているといえるだろう。
割り当てられた試乗車は6段MT仕様。操作性は初代M2のそれに比べるとストローク中の摺動(しゅうどう)感が増してリンケージ時の手応えもカチッとしたものになるなど、感触面での変化が確実にみて取れる。「GRスープラ」が影響を及ぼしたか否かはわからないが、スコスコといかにもリモート的な触感だったBMWのMTにあって、新しいM2のそれは満足できる質感を備えていた。
タウンスピードでの乗り心地はかなり引き締まった印象だ。小さな入力の反応は角が取れているが、ちょっと大きな凹凸を通れば正直に突き上げも現れる。持てるパワーや履くタイヤの物量を加味すれば、それでも閉口するほどではないだろう。あるいは10kgの軽量化を実現するというオプションの「Mカーボンバケットシート」の着座感がカッチリしていることも、その印象に影響しているのかもしれない。
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兄貴分にも(ほぼ)劣らず
速度域が高まるに連れて乗り心地の粗さはうせ、フラットさは増し、足まわりは生き生きと路面を捉え始める。快適性や静粛性はスポーツカー軸足のGTとしてみれば十分満足できる範疇(はんちゅう)だろう。驚かされるのはトゥーマッチにみえる件(くだん)のタイヤが、気難しさをまるで感じさせずしっとりと路面に追従し、操舵初期からじわりときれいにゲインを立ち上げてくれることだ。もちろんベースモデルの2シリーズ クーペよりは明らかに敏しょうだが、過敏というほどではない。
僕くらいのスキルでワインディングロードを楽しむくらいの生半可な踏みっぷりでは、M2はアンダーステアの“あの字”も感じさせない。460PSのパワーはあえてオーバーステアに持ち込むなど朝飯前だろうが、つい調子に乗ってしまった場合など、しかるべき時はDSCがじわりと介入して、姿勢をやんわりいさめてくれる。M2はダンパーやEPS、ブレーキ応答やDSCの効き具合などを個別に自分好みにセットアップできるが、それらを最も好戦的に振り向けるのはクローズドコースに限られるだろう。自分好みの詳細設定をステアリングスポークの赤い2つのボタンに登録しておけば、即座にそれを引き出せるのは他のMモデルと同じだ。
エンジンのパワーについては語るまでもないが、フィーリング面においてもM3/M4に対する見劣りはほぼ感じられない。ほぼ……と書いたのは、むしろそれらよりも回転感やサウンドの粒感など、ちょっと洗練されているのではという印象だったからだ。恐らくはこの先に考えられる「コンペティション」や「CS」のようなグレード展開の、前哨戦であるがゆえかもしれない。が、先述のとおり、趣味と実益を一台で完結させるクルマとしてみれば、この先鋭さと柔軟性とのバランスポイントがギリギリのところかなあとも思う。ともあれM2がこうやって発展的継続を遂げてくれたことが、いちクルマ好きとしてはうれしい限りだ。
(文=渡辺敏史/写真=BMW/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
BMW M2
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4580×1885×1410mm
ホイールベース:2745mm
車重:1710kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:460PS(338kW)/6250rpm
最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)/2650-5870rpm
タイヤ:(前)275/35ZR19/(後)285/30ZR20(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:9.9km/リッター(WLTCモード)
価格:958万円/テスト車=--円
オプション装備:--
(スペックおよび価格は日本仕様車のもの)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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