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カワサキKLX230SM(6MT)

バイク版“街の遊撃手” 2023.07.17 試乗記 宮崎 正行 軽快なオフロードバイクのアシを舗装路向けにつくり変え、自由自在なライディングを追求した「カワサキKLX230SM」。いまや国産唯一となった“スーパーモタード”は、日常使いでも走りを楽しめる、分かりやすいまでのライトウェイトスポーツに仕上がっていた。
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超軽量で超スリム

ちょっと懐かしい感じだな──。そんな独り言が思わず口をついて出たのは、走り始めてから10分もたたないタイミングでのこと。SO YOUNGでMORE SLIMな車体デザイン、アラフィフの筆者にはたぶん似合ってない。自覚はあるよ。でもそんなことをモヤモヤと考えていると、すかさずKLX230SMに言われちゃうのである。

「細かいことなんて気にしないで、さっさと走りだそうぜ!」

写真で想像していたよりも、KLXの実車はずっと細くて軽かった。漆黒のボディーとゴールド塗色のホイールに迫力があったからかもしれない。実際の車両重量は136kgなので、133kgの「ホンダPCX」とほとんど変わらない。ベース車両の「KLX230S」(令和2年の排出ガス規制に適合せず2022年モデルを最後にラインナップから姿を消してしまった)からオフロードバイク由来のタイトなボディーを引き継いでいるため、シート高845mmというスペックほどに足つきがわるくないのもうれしい。身長172cmの筆者だと、両足ウラ完全着地とはいかないが、もともとウェイトが軽いので安心感はどんな場面でも途切れない。

オフロードモデル「KLX230」をベースに、オンロードでスポーティーに走れる足まわりをセットした「KLX230SM」。2022年10月に発売された。
オフロードモデル「KLX230」をベースに、オンロードでスポーティーに走れる足まわりをセットした「KLX230SM」。2022年10月に発売された。拡大
ホイールは前後同径の17インチと、機敏なハンドリングを重視したもの。タイヤサイズは前:110/70-17、後ろ:120/70-17で、オンロード用のスポーツバイアスタイヤ「iRCプロテック ロードウィナーRX01」が装着されていた。
ホイールは前後同径の17インチと、機敏なハンドリングを重視したもの。タイヤサイズは前:110/70-17、後ろ:120/70-17で、オンロード用のスポーツバイアスタイヤ「iRCプロテック ロードウィナーRX01」が装着されていた。拡大
シート高は845mmとかなり高めだが、ご覧のとおりのスリムなボディーもあって、足つき性はそこまでわるくない。車重も非常に軽いので、取り回しで不安を感じることはないだろう。
シート高は845mmとかなり高めだが、ご覧のとおりのスリムなボディーもあって、足つき性はそこまでわるくない。車重も非常に軽いので、取り回しで不安を感じることはないだろう。拡大

シティーライドでも積極的に楽しめる

空冷の単気筒エンジンはタカタカと軽快に、高回転までよどみなく吹け上がっていく。パワーは正直大したことはないしメカノイズもそれなりにある。最高出力19PSといわれれば、こんなものだろうね、という感じ。でもこれで十分だし、足りないとも思わないのは、軽量な車体との“折り合い”がいいからだろう。

フルスロットルを試みてもフレンドリー。スロットル全開などしようものなら、かなたに発射されたままサヨナラな海外の大排気量SM勢(ドゥカティやKTM、ハスクバーナ)とは一線を画している。ま、当たり前か(笑)。過大なパワーでコントロールを失う……なんてことはまず想像できなかった。SMらしいスポーティーさをシティーライドで発揮しようと思ったら、136kgと19PSのKLXがウェルバランスなのである。

スリムな車体のおかげで取り回しもいい。ワイドでファットなスクーターとは比較にならないくらい駐輪場での出し入れもイージーだった。地味だけどこれは好ポイントだろう。バイクは走るたびに“止める”乗り物だからね。ハンドル切れ角も大きく、最小回転半径の2.1mは前後12インチの「カワサキZ125」と同寸。同じクラスの「Z250」(2.6m)よりもはるかに小回りが利く。

136kgという車重は、今日の250ccクラスのモデルとしては随一の軽さ。ライダーの腕と体幹で、ヒラリヒラリと姿勢を変えることができる。
136kgという車重は、今日の250ccクラスのモデルとしては随一の軽さ。ライダーの腕と体幹で、ヒラリヒラリと姿勢を変えることができる。拡大
エンジンは排気量232ccの空冷単気筒SOHC。扱いやすいトルク重視型の設計で、また過度な振動を抑えるバランサーシャフトも装備されている。
エンジンは排気量232ccの空冷単気筒SOHC。扱いやすいトルク重視型の設計で、また過度な振動を抑えるバランサーシャフトも装備されている。拡大
オフロードバイクという出自を感じさせるアップマフラー。エキゾーストパイプは低中回転域でのエンジンパフォーマンスを高める設計となっている。
オフロードバイクという出自を感じさせるアップマフラー。エキゾーストパイプは低中回転域でのエンジンパフォーマンスを高める設計となっている。拡大

小さくても“らしい”走りができる

走りだしてウキウキしたのはハンドリングだ。努めて安定方向のセッティングが多いいまどきのマシンにあってはいくぶんクイック寄りだが、過敏なほどではまったくない。いや、ブレーキングとともにしっかりとフロントタイヤに荷重を乗せないと、「見た目に比して意外にフツー」と感じるライダーもいるかもしれない。が、もちろんフツーがわるいわけじゃない。両手のひらに感じる接地感、路面からのインフォメーションは潤沢なので、「ちょっと攻めてみようかな」というトライに対して壁は低い。回転半径の小さい“リーンアウト”なコーナリングがSM気分だ。

KLXの全般にスポーティーな設定には好感が持てる。ストロークの長い前後サスペンションがソフトな脚をイメージさせてしまいがちだが、しかし実走すれば倒立フォークはきちんと硬めにセットされていた。スロットルオン/オフやハンドルの入力へのレスポンスがいいので、ライディングに対してポジティブになれる。それほど得意じゃないハイウェイでの巡航走行(上限120km/h)をふくめ、KLXはロングツーリングよりもショートレンジが似合っていそうだ。

フロントの足まわりはベース車とは大きく異なり、サスペンションにはインナーチューブ径37mmの倒立フォークを採用。ホイールトラベルは204mmである。ブレーキはφ300mmの大径セミフローティングペタルディスクとツインピストンキャリパーの組み合わせだ。
フロントの足まわりはベース車とは大きく異なり、サスペンションにはインナーチューブ径37mmの倒立フォークを採用。ホイールトラベルは204mmである。ブレーキはφ300mmの大径セミフローティングペタルディスクとツインピストンキャリパーの組み合わせだ。拡大
リアサスペンションにはプリロード調整機能付きのモノショックを採用。ホイールトラベルは「KLX230S」と同じ、168mmだ。
リアサスペンションにはプリロード調整機能付きのモノショックを採用。ホイールトラベルは「KLX230S」と同じ、168mmだ。拡大
インストゥルメントパネルはモノクロの液晶ディスプレイと各種インジケーターの組み合わせ。特にギミックのないシンプルなものだが、表示も分かりやすく、不満を感じることはなかった。
インストゥルメントパネルはモノクロの液晶ディスプレイと各種インジケーターの組み合わせ。特にギミックのないシンプルなものだが、表示も分かりやすく、不満を感じることはなかった。拡大
かつては「ヤマハWR250X」「ホンダCRF250M」なども存在した国産モタードだが、今日では「カワサキKLX230SM」が存在するのみとなっている。
かつては「ヤマハWR250X」「ホンダCRF250M」なども存在した国産モタードだが、今日では「カワサキKLX230SM」が存在するのみとなっている。拡大
スリムな車形ゆえ、シート下などに余分なスペースはなし。純正アクセサリーのETC車載器はシート後方に設置するしかなく、装着には、同じく純正アクセサリーのリアキャリアを取り付ける必要がある。
スリムな車形ゆえ、シート下などに余分なスペースはなし。純正アクセサリーのETC車載器はシート後方に設置するしかなく、装着には、同じく純正アクセサリーのリアキャリアを取り付ける必要がある。拡大
軽量・機敏というマシンコンセプトを見事に体現した「KLX230SM」。どんなバイクよりも気軽に、スポーティーな走りを楽しめる一台といえるだろう。
軽量・機敏というマシンコンセプトを見事に体現した「KLX230SM」。どんなバイクよりも気軽に、スポーティーな走りを楽しめる一台といえるだろう。拡大

どこまでも身軽で自由

車名の“SM”が「スーパーモタード」や「スーパーモト」のことを表しているなんて、若いライダーのどれくらいが知っているのだろう? いまやSMモデルは国内メーカーで唯一、このKLXだけになってしまった。

でもその来歴を少しでも知っておくと、オフ車っぽい外装+オンロードタイヤの理由が分かって「なるほど!」ときっとヒザを打つに違いない。スーパーモタードは、舗装路と未舗装路を組み合わせたコースでスピードを競うスプリントレースで使われるマシン。そんな出自(マシンコンセプト)に合点がいけば、乗り方のスタイルももっと広がっていくだろう。KLXにはモダンな装備は皆無。高級感も狙っていない。けれども、走るシチュエーションを選ばない自由さはあらかじめキッチリ仕込まれていた。

つまるところ、KLXの長所はこの一点に尽きる。

「どんな250ccのバイクよりも気軽にまたがって、何も考えずスパッと走りだし、そして軽やかに目的地にイチバン乗り!」

そんなこと……試乗する前から想像してたままジャン! って自分にツッコんだところでこの原稿を〆させていただく。見た目を裏切らない、SO LIGHTでMORE QUICKなフィールがKLXの真骨頂。ご清聴ありがとうございました。

(文=宮崎正行/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)

カワサキKLX230SM
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カワサキKLX230SM(6MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2050×835×1120mm
ホイールベース:1375mm
シート高:845mm
重量:136kg
エンジン:232cc 空冷4ストローク単気筒SOHC 2バルブ
最高出力:19PS(14kW)/7600rpm
最大トルク:19N・m(1.9kgf・m)/6100rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:33.4km/リッター(WMTCモード)
価格:57万2000円

宮崎 正行

宮崎 正行

1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。

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