正常進化の新型が登場! 「ホンダN-BOX」は、どうしてこんなに売れるのか?
2023.08.04 デイリーコラム走りなんてどうでもいい!?
「ホンダN-BOX」はなぜこんなに売れるのだろう? なぜこんなにもブッチギリが続くのだろう。それは、われわれ自動車メディア関係者共通の謎だ。
もちろんクルマとしてのデキはいい。しかし、ライバルの「ダイハツ・タント」や「スズキ・スペーシア」に対して、断然優れているわけではない。
かくいう私は昨年、タントの介護車両「タントスローパー」を購入した。決め手はDNGAがもたらす優れたコーナリング性能と、介護車両として唯一、オシャレな2トーンカラーが選べたことにあった。
個人的には、N-BOXよりもタントのほうがシャシー性能は高いと考えている。総合的に見てN-BOXは、「クルマのデキがダントツだからダントツに売れている」わけではない。
「佐藤可士和氏のブランディングのおかげなのでしょうか? 雰囲気? 軽らしくない感じがいい? 実直にして技ありのユーティリティー? でもN-BOXには、助手席側Bピラーを省いたダイハツ・タントのような一芸もなければ、タフ系軽のような強烈な個性もないと思いますが、とにかく売れます。なぜなんでしょう?」(編集担当S氏)
それがわからないのである。
ただ、タントを買ってみて、ひとつわかったことがある。軽ハイトワゴンにおいて、シャシー性能うんぬんはどうでもいいという事実だ。そういう視点でタントを選んだものの、実際には近所のちょこ乗りばかりなので、コーナリングの良さを感じるシーンなどほぼ皆無。軽ハイトワゴンは冷蔵庫のように、黙々と広い空間を提供し、適度に快適に動いてくれればOKだった。ディープなクルマ好きであっても。
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「間違いなさそう」が効く
もちろん、競合商品がある以上、選ばれている理由があるはずだ。その決め手は何なのか。
私は「慣性」だと思う。軽ユーザーは、平均するとあまりクルマに詳しくないがゆえに、一度トップに立つと、「次の革命発生まで長く王朝が続く」傾向が強いのである。
1993年に「スズキ・ワゴンR」が登場してからは、2011年まで、長くワゴンRの天下が続いた(全軽自協の記録がある2006年から2011年まで首位)。ライバルがあの手この手を尽くしても、ワゴンRの牙城は堅固だった。
2012年は「ダイハツ・ミラ イース」擁する「ミラ」がそれに代わったが、2013年からは、2011年に登場したN-BOXがほぼ首位を維持している。2014年のみタントに不覚を取ったが、以後、2位との差は拡大傾向が続き、2017年には登録車を含めて日本一売れるクルマの座に上り詰めた。
ワゴンRの天下が長く続いたのは、軽トールワゴンという新分野を開拓したパイオニアであり、その革命的な商品性ゆえに、「軽といえばワゴンR」「ワゴンRを買っておけば間違いはない」という慣性が生まれたのが大きい。それに取って代わった王朝がN-BOXなのだ。
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ますます独走の予感
初代N-BOXは、軽ハイトワゴンとしてはタントの後追いで、パイオニアではなかったが、発売後ジワジワと売れ行きを伸ばし、3年目に天下を取った。その理由は……これまたはっきりわからないのだが、「シンプルで質感の高い雰囲気」だったのではないか。ライバルに比べると、初代N-BOXのデザインは無印良品的にオシャレで、明らかに格上に見えた。
2017年に登場した2代目N-BOXは、初代に比べるとデザインの純度が落ち、ライバルとの差は縮まったように思えたが、販売台数の差は逆に広がった。これは、「軽といえばN-BOX」「N-BOXを買っておけば間違いはない」という、強い慣性が軌道に乗ったから……ではないだろうか。
ホンダはこの度、3代目となる新型N-BOXを発表した。私はそのデザインを見て「うわ、やられた!」と思った。
3代目N-BOXは、初代のシンプル路線に回帰しつつ、さらに質感を高めている。一目見た瞬間に、タントやスペーシアは負けている。正直、私もタントから新型N-BOXに買い替えたい気分だ。もうコーナリング性能はどうでもいいので、試乗する必要もありません! N-BOXのほうが断然ステキに見えるんです! N-BOX独走の慣性は、さらに強まるのではないだろうか。
(文=清水草一/写真=webCG、スズキ/編集=関 顕也)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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