2024年のニューモデルは? BEV戦略の行方は? ステランティス ジャパンの打越社長が語る!
2023.12.15 デイリーコラム2023年はポジティブに終われそう
大西洋をまたにかける巨大自動車グループで、全部で14ものブランドを擁するStellantis(ステランティス)。そんな彼らの日本法人が、その名もステランティス ジャパンである。展開するブランドは、ジープにプジョー、シトロエン、DSオートモビルズ、フィアット、アバルト、アルファ・ロメオと、実に7つ! 世にインポーターは多しといえど、ここまでの例はほかにない。今回は、そんなステランティス ジャパンの打越 晋代表取締役社長に、日本における“今”と“これから”をうかがう機会を得た。
時は2023年11月末、場所は都内某所の高層ビルにあるステランティス ジャパン本社。まず話に上がったのは、日本市場の現状と展望だった。長らく半導体不足やサプライチェーンの混乱などで不振に陥っていたマーケットも、2023年は諸問題が解消へと向かい、回復基調に。その傾向は国産車(前年比約+20%、2023年累計販売台数、11月時点)のほうが顕著だが、輸入車も前年比+4%と堅調で、ステランティスも本年の販売台数は前年微増で終わるだろうとのことだった。
輸入車といえば(実際は国産車にもその気はあるのですが)昨今の“値上げラッシュ”で顧客離れが懸念されていたところだが、意外や、消費者は健気(けなげ)についてきている様子。このあたりは商品ラインナップの補完も効いているようで、例えばジープなどは、「グランドチェロキー」の標準ボディーに加え、高額化したグラチェロと「チェロキー」の間を埋める新車種「コマンダー」(597万円)の純増も効いて、前年比15%の台数増を実現したという。
問題はこれからだが、打越社長は「この傾向は2024年以降も続き、全体としてはコロナ禍前の状態に戻っていくのではないか」と見解を述べ、さらにその回復については、「ステランティスでは電動車がけん引する」とした。
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これからは電気自動車に注力
ステランティスでエレキのクルマというと、この10月に発表・発売された「アバルト500e」が記憶に新しい。ステランティス ジャパンは、「これにより、すべてのブランドに電動車(ハイブリッドやマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッドも含む)が設定され、その数は20車種になった」と胸を張る。またこの流れは今後も継続していくようで、例えば将来の車種構成についても、「純エンジン車はこれまでと同じか、ちょっと増えるぐらい。新規車種の多くは電動車になる」(打越社長)とのことだった。
実際、2024年以降の日本導入予定モデルを見ても、
- ジープ:「ラングラー」のマイナーチェンジモデルと電気自動車(BEV)の「アベンジャー」
- プジョー:各車種のマイナーチェンジモデルが中心だが、SUV「3008」のBEV版も導入を予定
- シトロエン:「ベルランゴ」のマイナーチェンジモデル
- フィアット:「ドブロ」のマイナーチェンジモデルと、2025年になるかもしれないけれどBEVの「600e」
- アルファ・ロメオ:時期は未定だが、ブランド初のBEVモデルを導入予定
……と、電動車の、それもBEV推しが顕著だ。製品のローカライズにも取り組んでいる様子で、例えば急速充電にデカいアダプター(その形状とデカさから、“ダイソンの掃除機”なんて言われたりしていた)が必要だった一部のBEVについても、「アダプターなしで日本の急速充電器が使えるよう、開発をお願いしている」とのこと。さらに充電ネットワークの構築にもENEOSと連携して取り組んでおり、各販売店には充電器の敷設を要請。2024年中には全店舗に充電器を据えるとしている。
読者諸兄姉におかれては、現状の日本でBEVをバカスカ売るという行為の正否&成否に賛否ありましょうが、売ると決めたらきちんと取り組むステランティスの姿勢には、個人的に拍手である。また、明日いきなりエンジン車をやめるわけではないし、各種ハイブリッド車も広くラインナップしている点にはご留意を。BEVにポジティブだからといって、日本のマーケット特性を無視しているわけではないのだ。たまに「BEVが~」と言うと頭ごなしにキレる人がいるので、一応書いておきます。
多彩なブランドをフル活用
前項で販売店の設備拡充(充電網の構築のこと)について触れたので、話の流れでディーラー&ショールームの改革についても紹介しよう。
ステランティスでは今、「ステランティス ブランドハウス」なる総合ショールーム構想が推し進められているという。これは何かというと、ひとつのショールームに多ブランドの販売スペースを設けることで、集客の相乗効果を見込むというものだ。東京駅のラーメンストリート、豊洲市場の場外食堂みたいなものでしょうか。
浅学の記者はつい「そんな思いつきみたいな施策、ホントに効果あるの?」と思ってしまうのだが、これがなかなか侮れない様子。過日行われた仙台の展示会では、「ジープ、プジョー、シトロエン、フィアットのクルマをまとめて出展したら、例年にない集客があって驚いた。ブランドの相乗効果はスゴイ」とのこと。ジープの展示だけだったらジープのファンしか来ないけれど、いろいろなクルマの展示があれば、いろいろな人に訴求できる。そしてジープのオーナーには「ジープをつくっているメーカーは、こんなコンパクトカーもやっているのか」と、フィアットのオーナーには「あらヤダ。ジープってよく見たらイケメンじゃない」と気づいてもらえるというわけだ。
ステランティス ジャパンでは、2023年8月に一部ディーラー関係者と渡伊して、ブランドハウスの見学会を実施。そのコンセプトを見、セールス&マーケティングを統括するティエリー・コスカス氏の話を聞いた皆さんは、「日本ではいつから始めるのか」「まずはどのくらいの規模で始めるのか」と、非常に前のめりだったという。
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ビジネスパートナーは大事です
ひとつの店舗で複数のブランドを取り扱う例は、これまでにもなかったわけではないが、さすがにこの規模は前代未聞。一社でこれだけバラエティー豊かな展示が可能というのも、あまたのブランドを擁するステランティスだからなせる業だろう。現在、すでにブランドハウス構想は細かなルールの最終調整段階にあり、日本でも初期店舗の候補が挙がっているという。2024年中には1、2店のオープンを見込んでいるというから、どこに最初のお店が出現するか、今から楽しみだ。
一方で、こうした施策にまったく懸念を抱かないわけでもない。ステランティスで販売現場の改革というと、FCAジャパンがかつて行った正規販売ネットワークの充実化プロジェクトがまだ記憶に新しい。こうした施策には販売会社の協力が不可欠だが、短期で指針がコロコロ変わったり、一気になにもかも変えようとすると、彼らに過度な負担を強いることになる。下手をすれば、大事なビジネスパートナーから「もうついていけません……」というところが出てくるかもしれない。
もちろんステランティス ジャパンも、業界歴30余年の打越社長もそんなことは百も承知。新しい取り組みについては、インポーター主導による過去の施策(例えば販売店の改修など)の利益回収などを鑑み、ときには本社側に日本の販売現場の事情も説明して、無理のないカタチで進めていくとのことだった。
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日本の自動車ギョーカイに彩りを!
2023年の話に戻ると、打越社長いわく本年のステランティス ジャパンの販売台数は、2万6000台から2万7000台ほどで落ち着くのではないかという。この数字は、日本で高い人気を誇るドイツ勢に次ぐものだ。加えて、ジープであったりラテン系(という表現は古いかしら?)であったりと、そのいずれもが熱心なファンの多いブランドであることを思えば、輸入車マーケットにおける存在感は数字以上といっていいだろう。
打越社長もそれは大きな価値と捉えているようで、ファンとの交流に非常にポジティブ。実績のある「キャンプジープ」(旧ジープフェスティバル)や「フィアットピクニック」「アバルトデイ」に加え、今年はシトロエンのファンイベントも飛騨高山で初開催。来年以降はプジョーやアルファ・ロメオのイベントも開いていきたいとのことだった。ちまたでは「モノよりコト」なんて言われて久しいが、モノでもコトでも満足させられるのが、ステランティスのクルマのいいところだ。
自動車メディアらしくコトのほうにフォーカスしても、米国の品質調査でアルファ・ロメオがプレミアムブランドでトップ、全ブランドで3位に輝くなど、最近のステランティスはクオリティーの改善が著しい(ちなみに、全ブランドでは1位がダッジ、2位がラム……と、実はステランティスが表彰台を独占している)。クルマそのもののキャラクターも、おしゃれだったり華やかだったりカワイかったりマッチョだったり、とにかく個性が際立っていて、なんというか有彩色が似合うのだ。そんなクルマが増えていったら、日本の道路も華やぎはしまいか? コワモテのモノトーンが牛耳る街並みに、一服の清涼剤だ。
日本のさらなる景観美化のためにも、2024年もステランティスのさらなる伸長に期待! ……なんて、広義の意味ではステランティス車オーナーである記者は(参照)勝手に思っているのである。
(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/ステランティス、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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