スバル・フォレスター tS(4WD/5AT)【試乗記】
スポーツ・スバルのど真ん中 2010.12.10 試乗記 スバル・フォレスター tS(4WD/5AT)……362万2500円
マイナーチェンジした「フォレスター」にSTIチューニングを施した、台数限定のコンプリートカーが登場。ベースモデルとの走りの違いを試した。
「フォレスター」らしさを肯定する
STIの新しいコンプリートカーシリーズ「tS」の第2弾として「フォレスター tS」が登場した。第1弾の「レガシィ tS」(2010年6月発売)が限定600台で5ATと6MTが用意されたのに対し、今回は限定300台で5ATのみの設定。価格は362万2500円だ。これはベース車両の「フォレスター S-EDITION」の49万3500円高に当たる。
開発のテーマは基本的に「レガシィ tS」と同じで、STIの名にふさわしいハンドリングを与える点にある。今回もボディと足まわりを中心に手が入っており、フロントサスペンションのマウント部をつなぐフレキシブルタワーバー、リアサスペンションのサブフレームとボディをつないで引っ張り方向のテンションをかけるフレキシブルドロースティフナーなど、STIお得意の補強材が追加されたほか、サスペンションには同社製のダンパー(フロントは倒立式)とスプリングが装着された。
ハンドリング性能を上げたければ、車高(重心)を下げるのが手っ取り早い。しかし、そうするとSUVの足まわりならではのストローク感が乏しくなってしまう。そうなると、そもそも「フォレスター」である意味が薄れてしまいかねない。つまり、しなやかなストローク感を残しつつ、旋回時の安定性をいかにして上げるかが開発陣にとっての挑戦だったそうだ。そういう理由から車高は劇的には下がっておらず、15mmダウンしているにすぎない。
実際に乗ってみても、しなやかさが体感できた。確かに先日乗った「S-EDITION」と比べて足まわりは引き締まっている気がするが、不快な硬さではない。十分に快適だ。そこでスプリングレートはどれくらい強化されているのかSTIのスタッフに尋ねてみると、約30%との答えが返ってきた。ちょっと意外である。それほど硬い気がしないのである。
しなやかで抑えの効いた乗り心地
加えて「フォレスター tS」ではダンパーの減衰力もだいぶ上げられている。しかし、フロントもリアも、あるいは伸び側も縮み側も、一律強化されているわけではない。フロントは縮み側が締め上げられている代わりに、伸び側は実はそれほど強化されてはいないそうだ。一方、リアの縮み側はかなり固められているという。
まずはこのダンパー、微小な領域からずいぶんときっちりと仕事するなという印象を持った。通常、微小域はダンパーの効果が出しづらく、スプリングのたわみに頼ってしまいがちになることが多い。それゆえに“動き出し”がだらしなくなり、スプリングレートの高いクルマに乗ると、とかく上下にヒョコヒョコと揺すられがちになるものだが、「フォレスター tS」ではピシッと抑えが効いている。一般道はもちろん、特に高速道路でフラット感が高く、とても快適だ。
しかも前に述べたとおり、しっとりとしたストローク感が残されており、突起を乗り越えてもキツい突き上げは最小限に抑え込まれている。これならファミリーカーとしても、何ら問題なく活躍できるはずだ。
こういった乗り心地の方向性自体は、大きく見れば、今回のマイナーチェンジで新しいボクサーエンジンに載せ替えられた2リッターNAモデル、2.5リッターの「S-EDITION」、そしてこの「tS」と、「フォレスター」シリーズすべてで共通するものがある。もちろん硬さそのものには少なからぬ差があるが、足まわりをしなやかに動かそうという考えに決定的な違いはないように見える。
リニアな気持ち良さ
ハンドリングもベース車両の「S-EDITION」に比べると、一段とスポーティに仕上がっている。ステアリングを握る拳を1つぶん切り増すぐらいの少ない動きでも、スッ、スッと気持ちよく反応する。ゲイン重視でスパッと切れ込むような種類のものではなく、適度なロールをともないながらノーズがコーナーの内側を向く、その一連の動作がリニアで好ましい。
一方で、もうちょっとペースを上げてコーナーに飛び込むと、自分が望むラインに乗せられるトレース性の良さに目からウロコが落ちる思いだ。フロントがシャープにコーナーの内側へ向くのに対し、リアのスタビリティが非常に高く、安定し切っているおかげで、自分が車高1.6m超のSUVを操っているという気がしない。これだけ奥の深い仕上がりならば、標準車との価格差は十分に正当化されるだろう。
「レガシィ」が大きくなってしまって、ひとつ上のマーケットに行ってしまったため、個人的に“スバルのど真ん中”は空席になってしまっている気がしてならなかった。適度なボディサイズに、見かけによらずスバルらしい締まったハンドリングを持つ「フォレスター」、その中でも「tS」は、スバルのスポーツモデルのストライクゾーンに投げ込まれたモデルに見えて仕方がない。
(文=竹下元太郎/写真=荒川正幸)

竹下 元太郎
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