トヨタ・プリウスZ(FF/CVT)/ホンダ・シビックe:HEV(FF)
死闘の果てに 2024.02.06 試乗記 国産ハイブリッドカーの両雄「トヨタ・プリウス」と「ホンダ・シビックe:HEV」が激突! 後編では室内の広さや走りの印象、そして肝心の燃費を検証する。清水草一がカーマニアの視点から厳正なジャッジを下す。プリウスの乗降性を検証
(前編からの続き)
ハイブリッド界の龍虎、シビックe:HEV対プリウス。売れ行きには大差があるが、カーマニア的見地に立てば、間違いなく“両雄”だ。前回はスタイリング対決までを行い、シビックに軍配が上がった(私見です)。今回はその他の項目を見ていこう。
まず気になるのは、プリウスの乗降性だ。なにしろスーパーカールックだけに、実用車としての乗降性が確保されているのか?
結論から言うと、「問題なし」である。前席の乗り降りの際は、寝たフロントピラーが多少気になるが、プリウスの場合、シートはフロントピラーよりかなり後ろのほうに付いている。そのぶんダッシュボードも後ろのほうへ伸びている。これが「カウンタック」だと、普通に乗ろうとしたらモロにフロントピラーが頭にぶつかり、極限まで体を斜めにする必要があるので、まずお尻から乗り込むのがお作法だが、プリウスはおおむね普通に乗り込むことができる。
対するシビックはフロントピラーが立っているので、もちろん問題ない。つまり前席の乗降性に関してはシビックの辛勝だが、後席は逆に、プリウスのほうがわずかに乗り降りがラクだ。シビックのほうが、少しだけリアドアへのリアタイヤの食い込みが大きく、そのぶん足に引っかかる。プリウスのほうがスッと乗れるのだから意外だ。
といっても、特筆するほどの差ではない。プリウスは見た目より乗降性が良く、シビックともほぼ互角、というのが結論になる。
乗用車として使いやすいのはどっち!?
実はこの2台、後席のヘッドクリアランスもほとんど同じだ。むしろプリウスのほうが、ほんの少しだけ余裕がある。さすが全高が5mm高いだけのことはあるが、こちらもミクロの差だった。
一方、前席に座ったときのフロントウィンドウによる圧迫感は、プリウスのほうがはるかに大きい。そしてAピラーがぐぐーんと前方に伸びているせいで、斜め前方の視界が遮られやすく、後方視界もいまひとつだ。ボディー四隅の見切りを含め、視界はシビックのほうが明確に優れているが、プリウスのバックモニターは大変優秀で見やすく、弱点を補っている。
インテリアは、古典的なスポーティー感のあるシビックに対して、プリウスは未来的なスタンダード感があり、甲乙つけ難い。個人的には、シビックのダッシュボード中央部を左右に貫く網目のメカ感にズキュンときつつも、センターコンソール部の質感のおっさん臭さが不満だった。
一方プリウスは、適度にスマートだが質感が高いとはいえず、差し引き可もなく不可もない印象。ドライバーから遠くて日よけのないメーターパネルがキライという人もいるが、私はまったく気にならず、ただし刺さる部分もなかった。
ラゲッジルーム容量もほとんど同じで、使い勝手も大きく違わない。見た目はまるで違う2台だが、実用車としての使い勝手はほとんどイーブンという結論になった。
タイプRよりも気持ちいい回転フィール
いよいよ走りの評価に移ろう。
シビックに乗ってまず気づくのは、低速域でステアリングが重く感じることだ。近年主流のカルッカルなステアリングに慣れた体には、「ハンドルがシブイなぁ」と感じる。この重さ、私の記憶ではBMWの先代「3シリーズ」に近い。つまり古典的にスポーティーな味つけで、これはこれで悪くない。
徐々に速度を上げても、シビックのステアリングはガッシリとした感覚だ。特に中立付近はあえて重くセッティングされているので、高速道路の巡航では、直進安定性が高くてとてもラク。これまた少し以前のドイツ製セダンの感覚に近い。乗り心地も、当たりは少し硬質だが、しなやかさも持ち合わせていて、日常使用にもちょうどいい。
シビックは基本的にモーターで走るので、低・中速域では出足が鋭くて気持ちイイ。ただし本物のEVのように、停止状態から過剰にズドーンと加速するのではなく、「出足がとっても軽快!」くらいのイメージだ。言われなければモーター駆動とは分からない自然さなのである。決してそれほど速いわけではないが、EVが苦手なはずの高速道路での加速も十分イケるし、ハイブリッドカーとしては速いほうに属する。体感的には、1.5ターボよりもキビキビ走ってくれる。
いよいよお得意の、スポーツモードでのアクセル全開→ホンダレーシングサウンドさく裂→疑似ステップ変速を試す。手順を踏んでアクセルを床まで踏みつけると、例によってエンジンとスピーカーが「クワアアアアア~~~~ン」とほえ、見事なステップ変速をかましてくれる。
シビックe:HEVのエンジンは、2リッター直噴DOHC自然吸気。発電用の動力源とは信じられないくらいフィーリングがいい。回転フィールの気持ちよさに関しては、2リッターターボの「シビック タイプR」より上だ。やっぱりホンダもフェラーリも、スポーツエンジンは自然吸気に限るね!
シビックe:HEVのオーナーになったら、こんなフル加速、日常的にはやらないだろう。せいぜい1日に1回、高速道路への合流で使うか使わないか。日がたつにつれ使用頻度はどんどん減っていくだろう。しかし、カーマニアとしては、「やろうと思えばいつでもホンダ自然吸気エンジンの咆哮(ほうこう)が聴ける!」という事実は決定的だ。可能性だけでいいのだ。ふだんはその余韻に浸ってゆるゆる流し、軽くアクセルを踏み増したときのぐぐっとくるモーターのトルクにときめいていればいい。
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プリウスだって速いじゃん!
あらためてシビックe:HEVの運転の楽しさに浸った後、久しぶりにプリウスのステアリングを握って衝撃を受けた。プリウスもとってもよかったのだ。
パワステはシビックよりずっと軽い。それがハンドリングの軽快感につながっている。プリウスはイメージ以上にヒラヒラとシャープに向きを変えてくれる。シビックの重々しさとは対照的に、身も心も軽やかだ。
加えて、イメージ以上に加速もシャープだ。プリウスは燃費を捨てて速さを取ったわけだが、私が大好きなシビックe:HEVと同時に乗り比べても、遜色ない加速をすることに驚いた。プリウスってこんなに速かったっけ!?
さすがにエンジンフィールはシビックe:HEVにかなわないが、それでもトヨタの4気筒ハイブリッドとしては、史上最高クラスに気持ちよく回る。「プリウスのアクセルを全開にすると、フィーリング最悪のアトキンソンサイクルエンジンが嫌なうなり声を上げる」という従来の感覚とは全然違う。
ハンドリングは軽快で、パワーユニットも軽快。TNGAのシャシーはとてもしっかりしていて乗り心地もイイ。プリウスってこんなにいいクルマだったっけ!?
ただプリウスには、シビックe:HEVのような、カーマニアをシビれさせるプラスαはない。よって走りはシビックの勝ちだ。
実用車としてなんの不満もない!
最後に燃費について。東京から河口湖までの往路では、なんとシビックのほうが燃費がよかった。プリウスのドライバーが低燃費のハンタイで定評のある編集部F君だったとはいえ、まさか燃費でプリウスがシビックに負けるとは驚天動地!
現地で試乗と撮影を終えて、帰路は私がプリウスを、F君がシビックを東京まで走らせた末のトータル燃費は……。
シビック:17.4km/リッター
プリウス:19.6km/リッター
(ともに車載燃費計)
結局、おおむねカタログ燃費どおりの差に落ち着いたが、シビックは意外と燃費が伸びるのに対して、プリウスは「プリウス」というイメージほどは燃費が伸びない。この2台、ともにレギュラーガソリン仕様で、実燃費の差は1割程度。プリウスの勝ちは勝ちだが、引き分けに近い印象だ。
総合すると、この2台、どちらもとてもいいクルマだし、あらゆる点で互角に近い。価格は「プリウスZ」(FF)が370万円なのに対して、シビックe:HEVは398万円。シビックのほうが28万円高いが、ホンダレーシングサウンド代と思えば安い。
カーマニア的な見地に立つと、シビックには、ハイブリッドカー史上最高の快感エンジンという大きな加点がある。そしてプリウスには売れすぎているという減点がある。カーマニアは珍しいクルマに乗ってこそ華。その点からもシビック有利だ。
この勝負、迷わずシビックe:HEVの勝ちとさせていただきます。
(文=清水草一/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタ・プリウスZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152PS(112kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4400-5200rpm
モーター最高出力:113PS(83kW)
モーター最大トルク:206N・m(21.0kgf・m)
システム最高出力:196PS(144kW)
タイヤ:(前)195/50R19 88H/(後)195/50R19 88H(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:28.6km/リッター(WLTCモード)
価格:370万円/テスト車:404万4300円
オプション装備:パノラマルーフ<手動サンシェード付き>(13万2000円)/ITS Connect(2万7500円)/デジタルインナーミラー&デジタルインナーミラー用カメラ洗浄機能&周辺車両接近時サポート<録画機能>&ドライブレコーダー<前後>(8万9100円)/コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus<車載ナビ、FM多重VICS、12.3インチHDディスプレイ、AM/FMチューナー、フルセグテレビ、USBタイプC、スマートフォン連携、マイカーサーチ、ヘルプネット、eケア、マイセッティング、bluetooth対応>(6万1600円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万4100円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:6945km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:290.9km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:19.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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ホンダ・シビックe:HEV
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4550×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:141PS(104kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:182N・m(18.6kgf・m)/4500pm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR18 95Y XL/(後)235/40ZR18 95Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:24.2km/リッター(WLTCモード)
価格:394万0200円/テスト車=408万8700円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイト・パール>(6万0500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<DRH-204WD>(3万9600円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ[ブラック]フロント・リアセット e:HEV用>(4万8400円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1万2580km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:255.2km
使用燃料:15.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.0km/リッター(満タン法)/17.4km/リッター(車載燃費計計測値)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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