日本導入20周年を迎えるレクサスが絶好調 その強さの秘密とは?
2024.02.29 デイリーコラムレクサスが売れている2つの理由
日本におけるレクサス人気が沸騰中である。2023年1月~12月の主要地域別販売実績は中国のみ前年比103%と若干シブいが、北米やアジア、中近東など他の地域では前年比でおおむね110~160%と好調に推移している。
なかでも日本ではとりわけ絶好調である。販売台数は9万4647台を記録し、「前年比229%」を達成した。2025年の日本導入20周年を前に「年間10万台」の大台に乗せてしまいそうな勢いである。
なぜ今、日本市場でレクサスが受けているのか?
もちろん基本的には「モノがいいから」「モノがいいのに、海外の競合車と比べれば高くはないから」「日本車なので、なんだかんだで壊れにくいから」「壊れたとしても、輸入車と比べれば相対的に安価に直せるから」といったあたりが、プレミアムクラスのクルマを求める日本人ユーザーの多くにレクサスが刺さっている理由なのだろう。
それらに加えて、2つの根本的な要因が昨今のレクサス人気を支えているのではないかと筆者は思う。ひとつは「良くも悪くも、レクサス車の乗り味やタッチは日本車的である」ということだ。
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過剰な重さや硬さがない
例えばあくまで一例として、「レクサスRX500h」あたりと競合する「BMW X5 xDrive40d Mスポーツ」は、非常に素晴らしいプレミアムSUVではある。すべてが骨太で、走行時のスタビリティー感のようなものも相当である。一概に白黒つけられる話でもないが、現行型RX500hより優れている部分は多々あるように感じる。
だがX5のことを「明らかに素晴らしい!」と心の底から、何の曇りもなく断言できるのは、ドイツのミュンヘンあたりを200km/hぐらいで走っている最中のことだろう。
せいぜい120km/h程度の速度しか出せない日本の環境下においては、X5 xDrive40d Mスポーツの、本来は美点であるはずの「骨太で重厚なニュアンス」はそのまま欠点になる。いや「欠点」というのは言いすぎかもしれないが、少なくともドイツ車ファンやカーマニア以外の人にとっては「この国でコレに乗るのがベストであるとは言い難いな……」と感じてしまうのだ。
200km/h超の世界に基準を合わせ、そして大柄で筋力の強い欧州人の体格に合わせてつくられているだけあって、とにかくすべてが重厚で硬い。もちろん、そこがX5やX5的欧州車の魅力のひとつであることは論をまたない。とはいえ日本の道で普通に50km/hとか60km/hで走るぶんには、どうしたって「硬いし、各操作系がいちいち重いな……」と、感じてしまうのである。
しかしレクサスの各モデルには、良くも悪くも過剰な重さや硬さはない。一般的な国産車に慣れているユーザーがスッと乗って、スッとなじめる全体的なタッチになっているのだ。そこが、レクサスが特に日本市場で伸長している大きな理由のひとつだろう。
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ちょうどいい内装の味つけ
ここ最近のレクサスが日本でバカ売れしているもうひとつの理由は、「内装デザインがモード系ではない」ということなのではないかと思う。
現行型「NX」のインテリアデザインだけは例外的にややモード系が入っているが、その他の近年発売されたレクサス車のインテリアは──こういうことを言うと怒る人も多そうだが──ハッキリ言ってややダサめである。
2023年12月に発売されたばかりの「LBX」でさえ内装デザインの先進感やモード感はほぼ皆無で、2023年3月発売の「RZ」も、なかなかおしゃれではあるものの、飛び抜けておしゃれというほどではない。そして前出のRXに至っては「RX500hの走りは素晴らしいのに、このひと昔前の『クラウン』みたいなインパネはいったい何なんだ……」と、2022年12月の報道関係者向け試乗会で思ったものだ。
だが今になって冷静に考えてみれば、逆にそこが良いのだろう。
キメキメのモード系インテリアは、カッコいいはカッコいいのだが、普段使いするには若干疲れるというか、落ち着かなさも感じてしまうものだ。「パリコレの服を着て駅前商店街を歩くようなもの」と言ったら大げさかもしれないが、それに少し似た“居心地の悪さ”を伴うのが、モード系の何かと暮らす日々である。
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BEVはお金持ちの嗜好品?
しかしレクサス各車のインテリアは──意図的にかどうかは知らないが──モード感が薄いというかほぼないため、多くの人が安心して(?)乗り込むことができる。世の中には「超おしゃれさん」も多いが、「そうではない人」の数のほうがもちろん多い。レクサス的なクルマ、つまりややアッパークラスのモデルを求める日本人のメンタリティーは、「さすがにダサいのは嫌だけど、“ちょっとおしゃれなぐらい”がちょうどいい」というニュアンスが中心なのではないかと推測する。だからこそ、レクサスが受けるのだ。
今後、もしもレクサスが急転直下の方向転換をして「わが社は超絶モード系でいきます!」などと言い出したら、完全に余計なお世話ではあるが、国内販売台数10万台超えはちょっと難しくなるのではないかと考えている次第だ。
あ、そういえば「2035年にはグローバルでBEV100%化を目指す」というレクサスのマニフェストにも注目である。
2035年に販売する車両すべてをBEVとするとレクサスが発表したのは2021年12月であった。その後、EVを取り巻く状況もいろいろ変わってきているので、まぁそのうち微妙な方向転換もあるのではないかと筆者はにらんでいます。ただ、言葉は悪いかもしれませんがBEVは「お金持ちの嗜好(しこう)品」としては素晴らしいモノだとも思うため、トヨタではなくプレミアムブランドのレクサスがそれを目指すのは悪くないのかも?
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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