クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

フォルクスワーゲン・ポロGTIエディション25(FF/7AT)

やり過ぎないという美学 2024.04.25 試乗記 渡辺 敏史 「フォルクスワーゲン・ポロGTI」のデビュー25周年を祝う限定車「Edition 25(エディション25)」が登場。マニア心をくすぐる数々のディテールによって特別感が演出されているのが特徴だ。小さなボディーに大パワーエンジンというGTIの基本をあらためて味わってみた。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

日本への割り当ては227台

2024年は「ゴルフ」が登場から半世紀、50年の節目を迎えたが、来年はポロにそのアニバーサリーが巡ってくる。こうしてみるとフォルクスワーゲン(VW)にとって1975年前後というのが、「タイプ1」「タイプ2」「タイプ3」のラインナップを刷新し、水冷FF化とともに現在のフォーメーションを構築する、いかに一世一代なタイミングであったかということがよく分かる。

日本では2代目から正規輸入が始まったポロに、ゴルフ譲りのGTIグレードが登場したのは3代目、1998年のこと。当初は欧州内での限定販売だったそれがカタログモデルに昇格した2000年からは、日本でも正規販売が始まった。以来、ベースモデルの更新に合わせて時折のブランクはあったものの継続的に販売されているのはご存じのとおりだ。

その1998年からの25周年ということで、2023年夏に欧州ではエディション25なるアニバーサリーバージョンが発売されている。その限定2500台のうちの227台が日本仕様枠にあてがわれ、日本でも発売された。

その内容は主に装備の充実にあり、外装ではルーフパネルやサイドミラー、ホイールなどをグロスブラック化、ボディーカラーには取材車の「アスコットグレー」が専用色として設定されている。内装はGTIのアクセントカラーでもある赤が部分的に用いられたレザーシートやステアリング、専用オーナメントがあしらわれるほか、ベースモデルではオプションとなる18インチホイール&タイヤ、電子制御可変ダンパー、インフォテインメントシステムの「Discover Proパッケージ」も標準で装備と、もはや選択の余地はないフルフル状態だ。

2024年4月25日に発売された「フォルクスワーゲン・ポロGTIエディション25」。世界限定2500台のうち、日本には227台が導入される。
2024年4月25日に発売された「フォルクスワーゲン・ポロGTIエディション25」。世界限定2500台のうち、日本には227台が導入される。拡大
欧州各国では1998年の初代「ポロGTI」の発売から25年目の2023年に発売。わが国には26年目の導入ということになる。
欧州各国では1998年の初代「ポロGTI」の発売から25年目の2023年に発売。わが国には26年目の導入ということになる。拡大
カタログモデルの「GTI」ではオプションの18インチホイール&タイヤを装備。「Adelaide」と名づけられたホイールは専用デザインだ。
カタログモデルの「GTI」ではオプションの18インチホイール&タイヤを装備。「Adelaide」と名づけられたホイールは専用デザインだ。拡大
サイドシルには「ONE OF 2500」と記されたプレートが貼られる。
サイドシルには「ONE OF 2500」と記されたプレートが貼られる。拡大
フォルクスワーゲン ポロ の中古車webCG中古車検索

恨めしきかな円安

そして価格はベースモデル比で38万円高の486万5000円。と、その値段を聞いてドン引きしてしまったわけだが、それはエディション25がうんぬんというよりも、ベースグレードの価格がいつの間にやら爆騰していたことだ。2018年に現世代のGTIが登場したときの価格は344万8000円と、現在よりほぼ100万円安かった。その後、2022年にはエンジンのパワーアップやDSGの7段化、ヘッドライトの高機能化などの大きなマイナーチェンジを受けているが、にしても……の感はある。

VWに限らず、輸入車全般に当てはまるこの話。でも、その間の経済の推移を重ねてみれば、納得させられるところもある。

何より大きいのが為替相場だろう。2018年の1ユーロ/円は平均値で約130円と、それでも例年よりは高めに推移していた。が、2024年は平均値で約161円。25%ほど高振れしている。この異常円安の契機となったのはコロナ禍によるサプライチェーンの不全が巻き起こしたインフレ、その対策としての金利上昇という世界的な波だ。そこに全力で逆行し続けたマイナス金利政策の行き着いたところが、円安由来な現在の国内インフレということになる。この間、ビッグマックが370円から480円になったとあらば、ポロGTIの価格上昇率もあながち理不尽な話ではないだろう。

フロントがストラット、リアがトーションビームの足まわりには減衰力可変式ダンパーを装備している。
フロントがストラット、リアがトーションビームの足まわりには減衰力可変式ダンパーを装備している。拡大
カタログモデルではオプションの純正ナビゲーションシステム「Discover Pro」を標準装備。グロスブラックのデコラティブパネルも「エディション25」ならではのポイントだ。
カタログモデルではオプションの純正ナビゲーションシステム「Discover Pro」を標準装備。グロスブラックのデコラティブパネルも「エディション25」ならではのポイントだ。拡大
ステアリングホイールに貼られた「25」のバッジ。赤いアクセントは随所にあしらわれる。
ステアリングホイールに貼られた「25」のバッジ。赤いアクセントは随所にあしらわれる。拡大

車線が広く感じられる

かつて輸入車が外車と呼ばれ、ウイスキーが洋酒と呼ばれた、そんな舶来品崇高の時代に戻った感もある今日この頃だが、高根の花となったポロGTIは相変わらず人懐っこいサイズでドライバーを気軽に迎え入れてくれる。ゴルフもしかりだが、VWはクルマの肥大化については節度をもって踏みとどまってくれているように思う。ちなみにポロGTIのサイズは、ゴルフになぞらえれば4世代前のゴルフ(4代目)にほど近い。このくらいの車格だと、Cセグメント級に比べれば気持ちの開放感が全然違ってくる。狭所での取り回しうんぬんよりも、車線が広く感じられるのがいい。

ただし、パッケージについては車格なりにタイトで、キャビンは大人4人が長時間をともにするにはちょっと窮屈だ。荷室は351リッターとまずまずの容量が確保されるなど、昔ならファミリーカーとしても通用しただろうキャビンも、軽ハイトワゴンのような鬼パッケージを当たり前としている日本のユーザーには狭く感じられても仕方がない。ことクルマ好きにおいては、それを補って余りあるものとして期待する筆頭が、舶来ものならではの動的質感ということになるわけだ。

ポロGTIの搭載するエンジンはグループの4気筒ラインナップの基幹となるEA888型だ。パワートレインの変遷の過程ですっかりプレミアムユニットと化したそれは、最高出力207PS/最大トルク320N・mをマークする。特にトルクの側は1500rpmという低回転域からその全量を発生するとあって、ポロの小さな体には高いギアをものともせず、ぐんぐん車体を押し込んでいく加速が印象的だ。

この試乗車のボディーカラーは「アスコットグレー」。「ポロGTI」には初めて設定された黄みがかったグレーだ。
この試乗車のボディーカラーは「アスコットグレー」。「ポロGTI」には初めて設定された黄みがかったグレーだ。拡大
レザーシートはカタログモデルでは選べない特別なアイテム。背もたれには「GTI」のステッチが、サイドには赤のアクセントが入る。
レザーシートはカタログモデルでは選べない特別なアイテム。背もたれには「GTI」のステッチが、サイドには赤のアクセントが入る。拡大
後席は日本のファミリーカーに慣れ親しんだ人には窮屈に感じるかもしれない。座面も背もたれもしっかりとしたつくりだが、足元の空間はボディーサイズなりだ。
後席は日本のファミリーカーに慣れ親しんだ人には窮屈に感じるかもしれない。座面も背もたれもしっかりとしたつくりだが、足元の空間はボディーサイズなりだ。拡大
フロントに積まれる2リッター4気筒ターボの「EA888」エンジンは最高出力207PS、最大トルク320N・mを発生する。
フロントに積まれる2リッター4気筒ターボの「EA888」エンジンは最高出力207PS、最大トルク320N・mを発生する。拡大

適切さこそが持ち味

よって高速巡航はお手の物で、力量からくるストレスは皆無だ。足るを知ることがまっとうだと頭では理解しつつも、やはり小さな車体に大きなエンジンという過分のうまみは離れがたいものがある。クルマ任せに変速させておくぶんには7段DCTのつながりもカツカツとトウの立ったところはなく滑らかだ。ことパワートレインに関して、GTとしての性能には文句がない。以前、先代のポロGTIで700km近い行程を一気に走りきったことがあるが、そのときのBセグメント離れした疲労の軽さを思い出した。

ただし乗り味についてはもう少し車体の据わりのよさが欲しいと思う場面もある。取材車のオドメーターが3ケタとまだ若過ぎることや、本来はオプション扱いの18インチタイヤを履くことは差し引かなければならないけど、シャシー側のスタビリティーはきっちり保たれているだけに、上屋の動きの収まりが渋いのはなんとももったいない。ワインディングロードではアベレージを上げていくほどに生き生きと向きを変えるようになっていく、その様子を見ていると想定負荷がかなり高いのかなとは思う。でも代々のGTIのコンセプトからいえば、もう少しアジリティーを譲ってでも高速クルージングの快適性を高めるべきだろう。まあ2万~3万kmからが本番というのはドイツものではあるあるなので、そのタイミングでは見事な味変を遂げていることを期待しよう。

僕のようなオッさんにとってポロGTIは、青春時代に憧れたゴルフGTIの軽やかさを投影できる存在だ。これ以上速くなくてもいいですし、サイズもできればこれ以上大きくなりませんように……と、買いもしないくせに注文はやたらと多い。申し訳なく思うが、2023年秋に発表された「ID.GTIコンセプト」を見るに、電気自動車の時代になってもVWは、適切や絶妙といったGTIの趣旨をしっかり守っていく所存なのだと思う。

(文=渡辺敏史/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝)

2022年登場の最新モデルでエアコン操作がタッチスイッチ式に切り替わった。「エディション25」専用のシートヒーターのスイッチが両端に備わっている。
2022年登場の最新モデルでエアコン操作がタッチスイッチ式に切り替わった。「エディション25」専用のシートヒーターのスイッチが両端に備わっている。拡大
ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「カスタム」の全4種類。
ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「カスタム」の全4種類。拡大
「カスタム」モードのセッティング画面。「Sport Selectランニングギヤ」がダンパーの項目で、「ゴルフ」等に設定のある「DCC」との違いは減衰力が連続可変式ではなく、普通の「ノーマル」とハードな「スポーツ」の固定式ということ。
「カスタム」モードのセッティング画面。「Sport Selectランニングギヤ」がダンパーの項目で、「ゴルフ」等に設定のある「DCC」との違いは減衰力が連続可変式ではなく、普通の「ノーマル」とハードな「スポーツ」の固定式ということ。拡大
荷室の容量は351~1125リッター。ハイトワゴンのようには積めないが、そのぶん走りのよさは折り紙付きだ。
荷室の容量は351~1125リッター。ハイトワゴンのようには積めないが、そのぶん走りのよさは折り紙付きだ。拡大

テスト車のデータ

フォルクスワーゲン・ポロGTIエディション25

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4085×1750×1430mm
ホイールベース:2550mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:207PS(152kW)/4600-6000rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1500-4500rpm
タイヤ:(前)215/40R18 89W XL(後)215/40R18 89W XL(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:15.6km/リッター(WLTCモード)
価格:486万5000円/テスト車=488万7000円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(2万2000円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:912km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:224.0km
使用燃料:17.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.0km/リッター(満タン法)/13.2km/リッター(車載燃費計計測値)

フォルクスワーゲン・ポロGTIエディション25
フォルクスワーゲン・ポロGTIエディション25拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

試乗記の新着記事
  • アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】 2025.9.17 最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。
  • トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】 2025.9.16 人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。
  • BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】 2025.9.15 フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。
  • スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.13 「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。
  • トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”【試乗記】 2025.9.12 レースやラリーで鍛えられた4WDスポーツ「トヨタGRヤリス」が、2025年モデルに進化。強化されたシャシーや新しいパワートレイン制御、新設定のエアロパーツは、その走りにどのような変化をもたらしたのか? クローズドコースで遠慮なく確かめた。
試乗記の記事をもっとみる
フォルクスワーゲン ポロ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。