トヨタiQ GAZOO Racing tuned by MN/GRMN ヴィッツ ターボ コンセプト【試乗記】
スポーツ魂ここにあり! 2010.11.28 試乗記 トヨタiQ GAZOO Racing tuned by MN(FF/6MT)/GRMN ヴィッツ ターボ コンセプト(FF/5MT)クルマの楽しさを伝えるべく、トヨタが取り組むプロジェクト「GAZOO Racing(ガズーレーシング)」。では、その活動を具現するという2台のコンパクトカーは、どんな走りを見せるのか?
「GRMN」の再来か?
いよいよ「トヨタiQ」の「130G MT→」が発売される。この「→」(「ゴー」と発音する。以下「ゴー」と表記。)というグレードは、「iQ」の中でもスポーティーな仕様のことで、足まわりが硬く、16インチタイヤ(175/60R16)を履き、リアブレーキがディスクになる。しかも車名にあるとおり、MT仕様も用意されるのだ。
何が言いたいのかというと、これってつまり「iQ GRMN」の再来ではないのかと期待しているわけである。2009年8月の発表日から1週間で完売してしまった100台限定の、“幻のiQ”のことである。
カタログを見れば見るほど、期待は高まる。レギュラーガソリン仕様である「MTゴー」は(「GRMN」はハイオク仕様だった)、1.3リッターユニットのスペックが94psと12.0kgmにとどまるが、6段MTのギア比は最終減速比を含めて「GRMN」とまったく同じだし、車重も950kgと変わらない。それで価格は32万2000円安の165万円ときている。幻を買い逃した人にとって、好機到来の可能性大。待てばガズーの日和ありですよ、きっと。
……と、ここまでアオっておいて言うのもなんだが、そうはいっても「MTゴー」と「GRMN」は完全なる別モノかなという気も一方ではしている。先日、いち早く市場に出たCVT仕様の「ゴー」に乗ったが、その足まわりは思いのほか硬く、路面が悪いとピッチング方向に細かな上下動を繰り返していた。今年の秋口に富士スピードウェイのショートサーキットで乗った「iQ GRMN」は本当、素晴らしかったもの。
安定感と小気味良さの好バランス
サーキットで乗った「iQ GRMN」は、ひとことでいうなら全長3m×全幅1.7mという小さな枠に収まるクルマとは思えないほど泰然自若としていた。ブレーキを残しながら、タイトベンドに進入する。約30mmローダウンされたサスペンションと、無駄なコンプライアンスが抑え込まれた硬いブッシュのおかげで、回頭性はよりシャープになっている。しかし、明確なフロント荷重となったこの状態でステアリングを切り増せば、ホイールベースがわずか2mしかない短いボディはたちまちクルッと回ってしまう……そう考えるのが普通だ。
しかしリアタイヤがしっかりと路面をとらえ、「iQ GRMN」は弱アンダーステアの姿勢を崩さないのである。急なステアリング操作に対しては、さすがにS-VSC(標準装備)が介入してきて姿勢を維持するが、その一連の挙動が全長3mクラスのクルマとは思えない、ゆったりとしたものだった。前を向いて運転に没頭しているかぎり、「ヴィッツ」ぐらいのサイズのクルマと何ら変わらない安心感がある。
だからといって、乗り心地がさほど犠牲になっていないのも素晴らしいところ。今回は路面が平滑なサーキットでの試乗に限られたため、一般道での印象とは多少違うところもあるかもしれないが、少なくとも姿勢変化を嫌うガチガチに固められた足まわりではなかった。日常的に使えそうな柔軟性を備えており、やるなGRMNッ! と拍手を贈りたくなるようなものだったのである。同じことは「GRMNヴィッツ ターボ コンセプト」にも言えた。
古典的だが新しい
「GRMN ヴィッツ ターボ コンセプト」は、まだ市販されていない、その名のとおりコンセプトモデルである。「RS」の1.5リッターモデルをベースにターボ化されており、ヴィッツファミリーの中で断トツにパワフルな150ps/6000rpmと20.0kgm/4800rpmを発生する。ボンネットにはエアインレットが設けられ、リアバンパーの下部にはセンターマフラーがのぞくなど、外観からしてすでに走りの気配がただよっている。
実際に走らせてみると、エンジンはターボトルクを一気に爆発させるような古典的なセッティングではなく、どちらかといえばリニアなトルクカーブを持つ、より現代的な味付けだ。ちょうど、より大きな排気量のクルマに乗っているような感覚である。そうはいっても、標準型のヴィッツと比べたら速さは別モノ。指針式のブースト計が正圧に振れてからの加速感は、まるで前方に吸い込まれていくかのようだ。
サスペンションもそれ相応に締め上げられており、ステアリングを切った瞬間からノーズは軽快に向きを変える。絶対的な車重は1060kgと標準型を比べて特に軽いわけではないが、パワーウェイトレシオで圧倒的に有利なこちらは身軽さが際立っていた。
GRMNのクルマたちには、日本では事実上、絶滅の危機にひんしているホットハッチのDNAが引き継がれている。エコカーばかりではないトヨタのスポーティな一面を見てホッとすると同時に、こういったスポーツカーの精神を「ガソリン時代の記憶」にとどめるのではなく、未来のクルマにもどんどん翻案していってもらいたいものだと感じた次第だ。
(文=竹下元太郎/写真=高橋信宏)

竹下 元太郎
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。






































