メルセデスAMG GLC43 4MATIC(4WD/9AT)
もはやお手の物 2024.06.01 試乗記 現行型「GLC」のAMGバージョンがついに上陸。先代モデルと大きく違うのは、電気の助けを借りているとはいえエンジンが2リッターの4気筒に縮小されているところだ。最高出力421PSの「メルセデスAMG GLC43 4MATIC」の仕上がりをリポートする。今やすっかり大黒柱
ずいぶんと見かけるようになった、と感じるのは気のせいではないらしい。メルセデス・ベンツのミドルクラスSUVであるGLC(2015年発表)は、初代のモデルライフ末期にもかかわらず、2021年にはベースとなった「Cクラス」を抜いてメルセデスの乗用車のベストセラーになったと聞く。セダンびいきの昭和オヤジにはにわかに信じられないが、今ではSUVが堂々の主流派なのである。しかも2022年にモデルチェンジした新型(2代目)は従来型と見た目もサイズもあまり変わらないこともあって(全長は50mm、ホイールベースは15mmだけ延長されている)、新旧まとめて路上で見かけるGLCが多いなあ、という印象を受けるのかもしれない。
すっかり見慣れてしまったのは縦バーが並ぶ、いわゆる「パナメリカーナグリル」も同様である。かつてはAMGのなかでも最高性能版だけに与えられた特別なアイテムだが、今では特段その名を主張することもなく、AMGモデルにあまねく使われるようになった。多用するとスペシャル感が薄くなってしまうのではないかと心配になるが、そのうちまた新たなシグネチャーを考え出すに違いない。
2023年春の日本導入当初は2リッター4気筒ディーゼルターボを積む「GLC220d 4MATIC」(ISG付きマイルドハイブリッド)のみだったが、2024年2月にメルセデスAMG仕様が2モデル追加された。最高性能版の「GLC63 S Eパフォーマンス」と、ここで紹介するGLC43 4MATICである。63 Sはプラグインハイブリッドだが、43は48V電源によるマイルドハイブリッドである。
電動ターボチャージャーを搭載
63 Sもこの43もエンジンはM139型2リッター4気筒ガソリンターボを搭載する。一足先に「SL43」や「C43」に積まれて登場したユニットと同じく、コンプレッサーとタービンの間にモーターを組み込んだ電動ターボチャージャーを備えているのが特徴。フェンダーにはそれを主張する「TURBO ELECTRIFIED」のエンブレムが取り付けられている。電動ターボの狙いは排気圧が十分ではない低回転域でもコンプレッサーをモーターで回して過給すること。またスロットルペダルのオン/オフにかかわらず過給圧を維持できるためにレスポンスにも優れる。17万5000rpmまで回るという水冷式ターボは48V電源で駆動される。
43のエンジンの最高出力と最大トルクは421PS/6750rpmと500N・m/5000rpm。63 S用の476PS/545N・mよりはちょっと控えめだが、2リッターターボとしては超ハイスペックである。注目すべきは今どきのエンジンにしてはパワーもトルクも高回転でピーク値を生み出すことだ。扱いやすさを重視するダウンサイジングターボは1500rpmぐらいから最大トルクをフラットに発生するものだが、GLC43は明確にパワー志向である。低回転域は14PSながらBSG(ベルトドリブンスタータージェネレーター)のアシストをあてにしているのだろう。GLCは縦置き後輪駆動ベースの4WDなのだから、より強力なモーターアシストが可能なISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)のほうが合理的と思われるが、GLC43はGLC220dと同じ9段ATながらトルクコンバーターではなく湿式多板クラッチを使用する「AMGスピードシフトMCT」を採用している。それゆえにトランスミッションのエンジンとギアボックスの間にモーター/ジェネレーターを内蔵するISGではなくBSG仕様となる。それでも0-100km/h加速は4.8秒と、2tもあるSUVとしてはびっくりするほどの俊足である。ちなみにシステムトータル680PSを誇るGLC63 Sは3.5秒と桁違いだ。
すっかりおなじみのインテリア
インテリアはもう見慣れた最新世代メルセデスの建て付けである。「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」を組み込んだ11.9インチの縦長タッチスクリーンを中心としたダッシュボードは他のモデルと変わらないが、AMG仕様として巧妙に差別化されており、精悍(せいかん)かつ華やかな内装を持つ。ただし、アルミトリムをインレイにしたダッシュのオープンポアウッドトリムなどは「レザーエクスクルーシブパッケージ」に含まれるオプションである。これだけで100万円余りもするパッケージだが、ナッパレザーシートやパノラミックスライディングルーフ、ヘッドアップディスプレイ、3Dサラウンドサウンドシステムなどが含まれる。結果、1170万円の本体価格は1300万円近くまで引き上げられるが、もうこれでどこにも文句なしのメルセデス・ベンツとなる。
さらにオフロードモードではトランスペアレントボンネット機能(車両直下のバーチャル画像を映す)と悪路走行での必要な情報をまとめて表示・操作可能な「オフロードスクリーン」なる機能も備わっている。20インチタイヤが標準となるAMGのGLCで悪路に踏み込む人がどれほどいるかはちょっと想像がつかない。プラグインハイブリッド仕様とは違ってバッテリーに浸食されないGLC43のラゲッジスペースは標準状態で620リッター、最大1680リッターと広大だ。
いつもの洗練度
高速道路でも山道でも「AMGライドコントロールサスペンション」とリアアクスルステアリングを備えるGLC43の足さばきは盤石である。ただし、エアサスペンションも備える他のGLCの何事にも動じないフラットさと比べると、速度によっては若干の上下動が気になる乗り心地だ。またリアアクスルステアリングもモデル・キャラクターによってつくり分けているようで、GLC220d 4MATICは60km/hを境にどちら側にも最大4.5度の切れ角を持ち、そのおかげで最小回転半径は5.1mとびっくりするほど小回りが利いたが、それに対してこの43では100km/hを境界として逆位相約2.5度、同位相0.7度に設定されており、最小回転半径も5.9mとだいぶ大きくなることに注意されたい。
とはいえ、乗り心地も回転半径も問題になるほどではない。どこにも不満はないし、洗練度も高い。だが欲をいえば、巧妙につくり分けられた多店舗展開高級レストランのようで、新鮮味が薄い。だからこそのベストセラーなのだろうが、私は220dで十分満足だ。それだって庶民には敷居が高いのだけれど。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデスAMG GLC43 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4750×1920×1640mm
ホイールベース:2890mm
車重:2000kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:421PS(310kW)/6750rpm
エンジン最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/5000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/2500-5100rpm
モーター最大トルク:58N・m(5.9kgf・m)/50-1300rpm
タイヤ:(前)265/45ZR20 108Y XL/(後)295/40ZR20 108Y XL(ブリヂストン・ポテンザ スポーツ)
燃費:10.2km/リッター(WLTCモード)
価格:1170万円/テスト車=1285万7000円
オプション装備:ボディーカラー<スペクタクルブルー>(8万1000円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(107万6000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト車の走行距離:3057km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:261.0km
使用燃料:32.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.0km/リッター(満タン法)/8.4km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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