日産ノート オーラNISMOチューンドe-POWER 4WD(4WD)
強烈なオーラ 2024.07.18 試乗記 ベースモデルに合わせて「日産ノート オーラNISMO」もマイナーチェンジ。もちろんお化粧直しはばっちりだが、最大のトピックはNISMOでも4WDモデル、その名も「NISMOチューンドe-POWER 4WD」が選べるようになったことだ。こだわったという旋回性能をチェックした。リアモーターのトルクが標準車の1.5倍
試乗会場は神奈川県の日産追浜工場に併設されたテストコースのグランドライブ。2年半ほど前にもここで行われた試乗会に参加していて、そのときは「ノートAUTECHクロスオーバー」だった。今回乗ったのはノート オーラNISMOである。ノートは売れ筋モデルなので、さまざまなバリエーションが展開されている。
2020年にパワーユニットをシリーズハイブリッドの「e-POWER」に統一し、モーター駆動の走りが広いユーザーから受け入れられた。好調な販売を受けて、2021年にノート オーラを発売。全幅を広げてモーター出力を上げ、内外装をグレードアップして高級路線を狙うとこれが大当たり。余勢を駆ってAUTECHとNISMOという日産系の2大スポーツブランドから派生モデルが登場した。
ノート オーラは2024年6月にマイナーチェンジを受けており、それに伴って「AUTECH」が新たに設定された。以前のクロスオーバーはベース車が素のノートだったが、高級感のあるオーラをカスタマイズすることで「プレミアムスポーティー」路線を狙う。2つのブランドのなかで、豪華さと高品質を売りにするのがAUTECHで、モータースポーツのイメージを担うNISMOとの差異化が図られている。色も青と赤で対照的だ。
ノート オーラNISMOには、新グレードのNISMOチューンドe-POWER 4WDが設定された。ノートには以前から4WDが設定されていたが、ノート オーラNISMOとしては初の4WD。専用チューニングを施して走行性能向上を図っている。標準モデルのリアモーターは最高出力68PS、最大トルク100N・mだが、82PS、150N・mと大幅にアップした。
オシャレ感のあるレッドアクセント
試乗車のボディーカラーは「NISMOステルスグレー」と「スーパーブラック」のツートン。パールやメタリックといった要素の入らないソリッドでマットな質感の色だ。他のNISMOロードカーにも採用されている、ブランドを象徴する専用色である。派手さはないが、だからこそアクセントカラーのレッドとのコントラストが美しい。湘南の海をイメージした「AUTECHブルー」はなかなか浸透していないようだが、NISMOのレッドは分かりやすくスポーティーだ。
内装にもダッシュボードやドアトリムに赤のステッチが施されており、ブラックとの組み合わせが20年ほど前のプラダのような印象だ。NISMOはもちろん走りをセリングポイントにしているが、カラーリングのオシャレ感を気に入って購入するユーザーも一定数いるらしい。
オプションで赤いインテリアパネルやセンターコンソールマットを装着すると、赤黒インテリアが完成する。内外装とも「NISMO」のロゴがちりばめられていて、ブランドアピールに余念がない。アンテナやホイールナット、フットレストなどにもロゴ入りのオプションが用意されている。日産でもノートでもオーラでもなく、NISMOに乗りたいという購入動機は少なくないという。ノート オーラのなかでNISMOの販売台数は18%を占めるのだ。
試乗コースは公道を模したつくりになっていて、高低差のあるタイトなコーナーや高速コーナー、ちょっとしたストレートなどで構成されている。制限速度は100km/hとこれもリアルな設定だ。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
特別感のある「NISMO」モード
スムーズな発進からアクセルを踏み込んでいくと、加速はなかなか鋭い。それでいて上品でマイルドなのがモーター駆動らしい振る舞いだ。走りのコンセプトは「アジャイルエレクトリックシティーレーサー」で、フォーミュラEにインスパイアされたパフォーマンスなのだそう。走行中は発電用のエンジンが回っていることが多いが、さほど気にならない。遮音にも十分な気配りがなされていて、高級感を演出している。
ストレートでの高速走行でも、風切音は小さい。通常のノート オーラよりも20mmローダウンしてグリルデザインやディフューザーなどで空力性能を高めているという。レッド塗装のエアロパーツは見た目のインパクトをもたらしているだけでなく、ダウンフォース向上にも貢献する。
オーラNISMOには3つのドライブモードが設定されている。「エコ」「ノーマル」に加え、「NISMO」がこのモデル専用に開発された。エコでも基準車のスポーツモードに相当するというが、NISMOは明確に走りに特化したモードである。加減速やレスポンスが変化するのはもちろん、駆動力の配分がより後輪寄りになる。エコやノーマルでもストレスなく軽快な走行ができるが、NISMOモードには分かりやすい特別感がある。
コーナリング時の安定性が高まり、心置きなくアクセルを踏めるのがうれしい。レスポンスが向上し、加速も思いのままだ。NISMOモードの恩恵を最も強く感じられたのは、パイロンでつくられたスラロームステージだった。アクセル操作で鼻先の向きを変えやすい。エコモードだと無理にハンドルをこじってタイヤが鳴く場面もあったが、NISMOモードは抜群にコントロール性が高い。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
ノート全体のイメージをけん引
トルク配分は最大で後輪が70%に達するそうで、前輪を積極的に旋回用途に使えるようになる。リアモーターを設けたことにより、ノート オーラNISMOは新たなステージに立った。日産ではメカ式4WDに注力していた時期もあったが、2020年からスポーティーな走りの電気式4WD開発を行っているという。細やかで素早い制御は、モーターにアドバンテージがある。
走りはよくてもNISMOモードを使うと燃費が悪化してしまうのではないかと心配になったが、10%程度の落ち込みで済むということだった。その程度であれば、ワインディングロードではぜひNISMOモードを選びたいものだ。このクルマならレースでも性能が発揮できそうに思ったが、それは無理らしい。全開走行を続ければバッテリーの電力に余裕がなくなり、発電専用の1.2リッターエンジンからの供給だけでは間に合わず、真のパフォーマンスを発揮できなくなる。もちろん公道でも同じで、上りのワインディングロードでアクセルを踏み続ければ同じことが起きる。それはドライバーの問題だ。
試乗車には2タイプあり、1台はRECAROシートが装着されていた。ホールド性に優れるスポーツシートだが、以前は手動のリクライニングが使いにくいことが欠点だった。電動化されたのは朗報である。ただ、RECAROにはBOSEサウンドシステムを組み合わせることができない。標準シートもしっかりとした座り心地でホールド性も十分だったので、ゆったりと音楽を聴きたいならこちらを選んだほうがいい。
ノーマルのノートもマイチェンでデザインを一新し、エントリークラスのコンパクトカーとして魅力を増した。ノート全体のイメージアップに寄与しているのが、シリーズ最強のスポーツモデルに位置するオーラNISMOだろう。名前のとおり強烈なオーラをまとうスポーティープレミアムコンパクトは、日産のブランドイメージにも好影響を与えている。
(文=鈴木真人/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
テスト車のデータ
日産ノート オーラNISMOチューンドe-POWER 4WD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4120×1735×1505mm
ホイールベース:2580mm
車重:1390kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター最高出力:136PS(100kW)/3183-8500rpm
フロントモーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3183rpm
リアモーター最高出力:82PS(60kW)/3820-1万0024rpm
リアモーター最大トルク:150N・m(15.3kgf・m)/0-3820rpm
タイヤ:(前)205/50ZR17 93W/(後)205/50ZR17 93W(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:--km/リッター
価格:347万3800円/テスト車=442万9700円
オプション装備:特別塗装色<NISMOステルスグレー×スーパーブラック>(7万7000円)/RECARO製スポーツシート<パワーリクライニング機能付き>+Nissan Connectナビゲーションシステム+車載通信ユニット+ETC2.0+SOSコール+ワイヤレス充電器+プロパイロット<ナビリンク機能付き>(80万9600円)/フードデカール<4WD用>(6万0500円)/4WD用寒冷地仕様<ワイパーデアイサー>(8800円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:201km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.8 「MINIコンバーチブル」に「ジョンクーパーワークス」が登場。4人が乗れる小さなボディーにハイパワーエンジンを搭載。おまけ(ではないが)に屋根まで開く、まさに全部入りの豪華モデルだ。頭上に夏の終わりの空気を感じつつ、その仕上がりを試した。
-
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】 2025.9.6 空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。
-
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】 2025.9.4 24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
NEW
スポーツカーの駆動方式はFRがベスト? FFや4WDではダメなのか?
2025.9.9あの多田哲哉のクルマQ&Aスポーツカーの話となると「やっぱりFR車に限る」と語るクルマ好きは多い。なぜそう考えられるのか? FFや4WDでは満足が得られないのか? 「86」や「GRスープラ」の生みの親である多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
ホンダ・レブル250 SエディションE-Clutch(6MT)【レビュー】
2025.9.9試乗記クラッチ操作はバイクにお任せ! ホンダ自慢の「E-Clutch」を搭載した「レブル250」に試乗。和製クルーザーの不動の人気モデルは、先進の自動クラッチシステムを得て、どんなマシンに進化したのか? まさに「鬼に金棒」な一台の走りを報告する。 -
MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル(FF/7AT)【試乗記】
2025.9.8試乗記「MINIコンバーチブル」に「ジョンクーパーワークス」が登場。4人が乗れる小さなボディーにハイパワーエンジンを搭載。おまけ(ではないが)に屋根まで開く、まさに全部入りの豪華モデルだ。頭上に夏の終わりの空気を感じつつ、その仕上がりを試した。 -
第318回:種の多様性
2025.9.8カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ステランティスが激推しするマイルドハイブリッドパワートレインが、フレンチクーペSUV「プジョー408」にも搭載された。夜の首都高で筋金入りのカーマニアは、イタフラ系MHEVの増殖に何を感じたのか。 -
商用車という名の国民車! 「トヨタ・ハイエース」はなぜ大人気なのか?
2025.9.8デイリーコラムメジャーな商用車でありながら、夏のアウトドアや車中泊シーンでも多く見られる「ハイエース」。もはや“社会的インフラ車”ともいえる、同車の商品力の高さとは? 海外での反応も含め、事情に詳しい工藤貴宏がリポートする。 -
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(前編)
2025.9.7ミスター・スバル 辰己英治の目利き「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のなかでも、走りのパフォーマンスを突き詰めたモデルとなるのが「ゴルフR」だ。かつて自身が鍛えた「スバルWRX」と同じく、高出力の4気筒ターボエンジンと4WDを組み合わせたこのマシンを、辰己英治氏はどう見るか?