第295回:行きずりの恋
2024.10.21 カーマニア人間国宝への道オレ好みの「DS 4」
私は世の中のことを知らない。カーマニアなのにクルマのことも知らない。
先般ある取材で、「明日の撮影車は『DS 4』です」と言われた。
DS 4ってどんなんだっけ。後席サイドウィンドウがはめ殺しのアレかなと思って検索したら、いつの間にか新型になっていた。
それが大変カッコいい。サイズはコンパクトながらDSらしくキラキラ感満点。ステランティス自慢の1.5リッター直4ディーゼルも用意されている。「こんなオレ好みのクルマ、いつの間に出たんだ」と思ったら2年以上も前! 知らなかった……。
これでも私は、「シトロエンDS3」の元オーナーだ。DS 4、めちゃめちゃいいじゃん! ちょいワル特急こと「プジョー508」の後釜として真剣に検討したい! うおおおお、久しぶりに欲しいクルマができた! ウキウキ!
私は初恋に胸をときめかせる少女のように、翌日の取材に向かった。
実物のDS 4は、写真で見たとおりのキラキラ感満点なコンパクトハッチバックだった。コンパクトといっても全幅は1830mmもあるが、508よりは30mmコンパクトである。
今の私にとって、508は無意味にデカい。2人以上乗る機会なんてほとんどないし、荷物を満載することもない。もうちょっと小さいほうが合理的だ。その点DS 4はすべてがピッタリ! 「プジョー408」もよかったけど、あれにはディーゼルの設定がない。DS 4にはディーゼルもあってほぼ理想的。うおおおお、このクルマ欲しい!
私は、ごくまっとうなカーマニア活動を実行することにした。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
DSの正規ディーラーはキラキラ感が満載
まずは新車ディーラーに突撃だ。DSはディーラー数が猛烈に少ない。検索したら東京都内に1店しかない! フェラーリでも2店あるのに、それより少ないんだから超レア物件! 行ってみなきゃ!
私は、都内唯一のDSディーラーであるDSストア東京(中央区晴海)へ向かった。
そこは、プジョー/シトロエンのディーラーとひと続きの店舗だったが、DSストア東京のショールームにはDSらしいキラキラ感満点の内装が施されており、しっかり差別化されていた。
キラキラした店内でキラキラしたDS 4の展示車を眺めていると、「イオナ、私は美しい……」というCMのフレーズが浮かんでウットリだが、新車を買う気はゼロなので、ペラペラの価格表だけもらって撤退する。
ちなみにディーゼルモデルのお値段は555万円から。2年前の発表時は469万円からだったので、80万円以上値上げされているが、新車は買わないのでカンケーない。なら新車ディーラーに来るなって感じだけど、メンテナンスでお世話になるかもしれないじゃないですか! 一応、下見ってことで。
次なる目的地は中古車店だ。
検索したところ、現行DS 4の中古車は全国にわずか24台。東京都内には1台もない! こんな都会派のクルマなのに、新車ディーラーは都内に1店、中古車は都内に0台! 「フェラーリ296GTB」の中古車なら都内だけで16台もそろってるのに、DS 4は一番近くて埼玉県三郷市! ただし三郷の1台こそ、ズバリ全国最安値! 支払総額383万8000円の「DS 4リヴォリBlueHDi」だった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
安いのには理由があった
その店に行くのはためらいもあった。なぜなら、安い順に並べるとだいたい一番上にくる超激安店「ジャンプ三郷センター」だったからだ。
その個体も「なぜこんなに安いの?」というくらい安い。修復歴アリなのか? いや「なし」だ。ただし保証も「なし」。2023年式で保証なしとはこれいかに?
レビューを読むと、どうやら自分でディーラーに持ち込んで保証継承を受ければいいようだ。車内清掃もしてくれないらしい。つまり、最安と引き換えに「そのまんまでどうぞ」っていう店なのね! 怖いもの見たさでGO!
到着すると、そこは想像よりはるかにちゃんとした大規模店だった。在庫は300台近い。お客さま駐車場も多数完備でビックリ!
「DS 4はどこでしょう?」と声を掛けると、店員さんが親切に連れてってくれた。
オレ「全国で一番安いですね」
店員「ええ。うちの車両価格は仕入価格そのものなので、だいたいいつも全国で一番安いんです」
オレ「ええっ!? 仕入価格で売ってるんですか!?」
店員「はい。利益は全部諸経費で出してるんです。清掃とか保証とか整備とかもオプションですけど、他店さんはそのぶん分車両価格に乗っけてますから。ウチはそれがゼロなんで」
ガーンガーンガーンガーンガーン……。すげえっ!! 特攻好きな俺にピッタリじゃん!
ブツは走行1.2万km、登録からまだ1年4カ月のピカピカのタマ(多少ひょう害アリ)だった。よし、買うならこれだ! と思ったが、そこでハタと立ち止まった。
デザインもインテリアも走りも、今のプジョー508と同系統。サイズがコンパクトで、設計が新しいぶん乗り心地がよりしなやかになってることくらいしか、買い替えるメリットがない。508はすでに走行6万km。下取りはせいぜい150万円だろう。つまり追い金約250万円。そんだけ払って大差ないんじゃ割に合わないゼ!
冷静に考えると、DS 4への思いは行きずりの恋だった。ごめんよちょいワル特急。まだまだお前を愛するぜ! あと2年くらい。
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第336回:やっぱり絶交! 2026.5.25 清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた?
-
第335回:水平尾翼が効いてるのかな 2026.5.11 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで2代目となった「シトロエンC5エアクロス」で、夜の首都高に出撃した。最新のデザイン言語を用いて進化した内外装とマイルドハイブリッドの走りに、元シトロエンオーナーは何を感じた?
-
第334回:親でもここまではしてくれまい 2026.4.27 清水草一の話題の連載。先日試乗した「トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ」はすごかった。MTと縦引きパーキングブレーキの組み合わせを用意してくれるトヨタは、カーマニアにとってもはや神である。
-
第333回:毛が生えようが、ハゲようが 2026.4.13 清水草一の話題の連載。「ジープ・アベンジャー」に追加設定された4WDモデル「アベンジャー4xeハイブリッド」で夜の首都高に出撃した。ステランティスで広く使われるマイルドハイブリッドパワートレインと4WDの組み合わせやいかに。
-
第332回:クルマ地味自慢 2026.3.30 清水草一の話題の連載。最近、年齢とともに地味なモデルが大好きになった。そんななか、人気の「フォレスター」や「クロストレック」の陰にひっそりと隠れたスバルを代表する地味モデル「インプレッサ」に試乗。果たしてその印象は?
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。










































