BMW X3 M50 xDrive(4WD/8AT)
古典と熟成 2025.02.22 試乗記 立体感を強調したルックスが目を引くが、新型「BMW X3」の見どころはそれだけではない。マイルドハイブリッド化された3リッターストレートシックスと磨き込まれたシャシーが織りなす「X3 M50 xDrive」の走りは、ファンの期待を裏切らないものであった。最新のBMWっぽいディテール
X3はBMWのベストセラーモデルであり、X3は常にその時代のBMWを象徴するかのようでもある。たとえば、現在のBMWは、純エンジン車、それベースのマイルドハイブリッド車(MHEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、そして電気自動車(BEV)といったほぼすべてのパワートレイン選択肢を、ひとつの車種に並列で用意する。今から思えば、先代X3に2020年に追加されたBEVの「iX3」が、その最初だった。
新型X3では純エンジン車が廃止されて、最低でもMHEVになったのは、時代背景を考えればまあ想定できるにしても、BEVのiX3が用意されないのは意外だった。それはどういうことかと調べたら、iX3の後継の役割は、プラットフォームからBEV専用に新開発される「ノイエクラッセ」のSUV版「ノイエクラッセX」がになう。ノイエクラッセXの市販版は、この2025年の正式発表が見込まれている。
そういえば、最新の「MINIクーパー」のエンジン車とBEVも(見た目はそっくりなのに)プラットフォームから上屋まで別物のクルマである。なるほど、エンジン車とBEVでプラットフォームを共用するのは、日進月歩のBEV界わいでは今後は通用しにくくなるのかもしれない。というわけで、新型X3とノイエクラッセXが、今後のBMWの商品戦略のひな型となっていく……のかはわからない。
今やBMWのベストセラーたるX3ゆえ、失敗は許されない。その内外装デザインに今回初めて見るような真新しい挑戦はほとんどなく、ここ数年の新型BMWが先に世に問うて、顧客の目慣らしを済ませたモチーフの集大成となっている。外観では、垂直かつ大型のイルミネーション内蔵キドニーグリル、ツリ目ヘッドランプ、モール類を排してカタマリから削り出したようなプロポーション、空力を意識したフラップ式アウタードアハンドルなどが、いかにも今どきのBMWっぽい。
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プラットフォームは先代改良型
今回の取材車は、現時点での最高性能モデルとなるM50 xDriveだった。ガソリンエンジンなのに末尾に「i」がつかない商品名は、先日上陸した「1シリーズ」からの新法則だ。エンジンは3リッターストレートシックス(のターボ)で、ほかのX3同様に、エンジンスタートや加速アシスト、減速時の回生を48Vの電装システムがおこなうMHEVだ。
内装デザインも外観同様、最新BMWデザインのショールームかのようだ。12.3インチと14.9インチの液晶をつなげたカーブドディスプレイ、インパネやセンターコンソールをキラキラに彩るクリスタルイルミネーション、タッチスライダーで開閉できる隠しデザインの空調吹き出し口、スマホやタブレットなどがピタリと置けるセンターコンソール、ツマミ式ATセレクターとiDriveダイヤルが並んだシフトパネル……は、ここ数年のBMWでは見慣れたディテールばかりである。
さらに、ダッシュボードは古典的なソフトパッドではなく、硬い樹脂の表面にファブリックを貼ったものである。その手法はBMWとしては新しいが、最新のMINI各車に続く採用だ。インフォテインメントのソフトウエアが最新の「OS9」になったことで、「Apple CarPlay」に加えて「Android Auto」にも対応するようになったのは、筆者のようなAndroidユーザーには朗報であるとともに、「やっとかよ」とタメ息も出る。
荷室が先代比で20リッターほど拡大した以外、室内空間や着座姿勢には、良くも悪くも先代と選ぶところはない。というのも、新型X3のプラットフォームは先代改良型で、ホイールベースはもちろん、スリーサイズにも大きな変化がないからだ。BEV対応に大忙しの自動車メーカーには、いかにベストセラー商品とはいえ、エンジン車のプラットフォームを刷新している余裕がないのかもしれない。
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昔ながらのスポーツモデル的な味わい
新型X3のシャシーの仕上がりはいかにもBMW的だ。かつてのドライブモードが運転体験の世界観を選ぶ「MY MODE(マイモード)」になったのは最新BMWのお約束だが、「SPORT」モードにすれば、以前と同じくダンパーが引き締まり、パワートレインが元気になる。肌ざわりに少しゴツゴツ感は増すものの、明らかに俊敏になる。
SPORTモードでは、パワトレをさらに活発な「SPORT PLUS」に引き上げることも可能となる。フットワークはSPORTのままだが、走りにはさらにカツが入ってメリハリがつく。そんな設定で山坂道を走るX3は、まさに中高年カーマニアがイメージするBMWそのもの。ステアリングは正確無比で、ぴたりとねらったポイントを射抜けるコントロール性は健在。これだけの背高グルマなのに水平姿勢はくずさず、舗装がヒビ割れたような荒れた路面でも、ロードホールド性は失われない。あらゆる場面でX3はドライバーの思ったとおり動いて、なにも裏切らない。
新型X3(のM50 xDrive)をこうしてSPORTもしくはSPORT PLUSに設定して、しかるべきシーンで走らせれば、まさに“留飲が下がる”思いである。しかし、逆にダンピングが柔らかめになる設定で、日常的に走らせたときの快適性は、文句なしとはいわない。
20インチという大径ホイールを履かせたスポーツモデルということを差し引いても、その乗り心地は、電子制御アダプティブダンパーを備える最新モデルとしては、少し物足りない。ダンピングモードを問わず、低速でのゆすられ感は少し強めというほかないし、目地段差などはもっと滑らかにいなして、蹴り上げられたときには一発で収束させてほしいところである。このような良くも悪くも昔ながらのスポーツモデルを思わせる味わいは、プラットフォームの設計年次を考えれば、いたしかたないのかもしれない。
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ストレートシックスの美点はそのまま
新型X3はパワートレインもプラットフォーム同様の従来改良型だが、良くも悪くも“古典”という言葉が浮かんだシャシーに対して、アクセルペダルを踏んだ瞬間に頭をよぎったパワートレインへの形容詞は“熟成”だった。
新たに追加された48Vマイルドハイブリッドシステムは、内燃機関たるストレートシックスの、わずかな弱点を見事にカバーしている。このエンジン形式はもともとアイドリングも滑らかなので、アイドルストップと、そこからの再始動マナーともどもスルリと上質だ。さらに、印象的なほどの過給ラグの小ささも、マイルドハイブリッドのアシスト効果と思われる。念力レベル(?)の微小なアクセル操作に対するリニア感も素晴らしく、とくに2000~3000rpmの右足指に吸いつくようなレスポンスには思わず涙が出そうになる。
と同時に、内燃機関としてのストレートシックスの美点も、スポイルされていない。4000rpm、5000rpm、6000rpmと、エンジン回転がさらに高まるにつれて、サウンドにレスポンス、トルクのすべてが積み増されていって、リミットの7000rpmまでトルク落ちも感じさせず、スパッと回りきる。BMWのストレートシックスって、やっぱり滋味深い名機なんだなあ……と、あらためて思わせてくれる。
ただ、そのエンジン音がいかにも“絵にかいたようなサウンド?”に電子的に調律されているのには、感動するというより笑ってしまった。また、最近のBMW製BEV同様に、シフトパドルを長引きすると10秒間だけパワーとレスポンスを増す「BOOST」モードがこのM50 xDriveにも備わるものの、今回のようなMHEVやエンジン車では、その使い道がいまひとつピンとこない。この機能が明らかにBEV向きだからだが、クルマのパワートレイン過渡期の今は、こうしてMHEVやエンジン車にもそのまま搭載されたりする。もっとも、このストレートシックス+マイルドハイブリッドも過渡期ゆえの産物であり、その見事な融合を味わうと、過渡期も悪くないと思える。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=BMWジャパン)
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テスト車のデータ
BMW X3 M50 xDrive
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1920×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:2000kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:381PS(280kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:540N・m(55.1kgf・m)/1900-4800rpm
モーター最高出力:11PS(8kW)/3000rpm
モーター最大トルク:25N・m(2.5kgf・m)/500rpm
タイヤ:(前)255/45R20 105Y XL/(後)285/40R20 108Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:11.9km/リッター(WLTCモード)
価格:998万円/テスト車=1019万7000円
オプション装備:ボディーカラー<デューングレー>(0万円)/パーフォレーテッドキルト ヴェガンザエスプレッソ・ブラウン<ブラック>(0円)/コンフォートパッケージ(15万7000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1794km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:487.8km
使用燃料:47.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.2km/リッター(満タン法)/10.3km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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