フィアット600eラプリマ(FWD)/メルセデス・ベンツEQS450+(RWD)/フォルクスワーゲン・パサートTDI 4MOTION Rライン(4WD/7AT)
カーライフにスマイルを 2025.02.23 JAIA輸入車試乗会2025 いま新車で買える輸入車のなかで、人に薦めたくなるクルマといえば? さまざまな車種を取りそろえたプレス向けの試乗会から、webCGスタッフが気になる3モデルの“いいところ”を報告する。モテるに決まってる!
フィアット600eラプリマ
自動車業界では毎年2月の恒例イベントとなっている、JAIA(日本自動車輸入組合)の試乗会。昨年はホットなコンパクトEV「アバルト500e」について「理想のファミリーカーになりうる」などとリポートした筆者(関連記事)は今年、その兄弟にあたる新型車「フィアット600e」を目の前にして色めき立った。
3ドアの500eとは違って後席用のドアがある。一充電あたりの走行距離は493kmで、150km以上も長い。それに、(ファミリーカーでなくとも大事なことだが)見た目がいい。愛嬌(あいきょう)のある、ちょっと眠そうな表情を見ていると、4歳と1歳のわが子が毎日笑顔でこのクルマとふれ合う姿が目に浮かぶ。
インテリアもいい! 座面や背もたれが「FIAT」ロゴの刺しゅうまみれで、遊び心いっぱい。でも華美だとか、うるさく感じることはない。さすがイタリア。うまいなぁ。
中の広さはコンパクトな外観なり。でも前席の背面を大きくえぐるなどの工夫のおかげで、自分の身長(163cm)ならひざ前が15cmほど空く。ヘッドレストが5つあっても4人乗りだと割り切れば余裕。チャイルドシートを常設するなら必然的にそうなるし、後ろがお子さま専用なら空間的な不満はない。ただ、天井は低めだから、開放的なルーフが選べたらいいのにな、とは思う(海外でも設定ナシ)。まぁフィアットのことだ、いずれグラスルーフやキャンバストップも設定してくれるでしょう。
荷室は意外にイケそうだ。幅はホイールハウスが出っ張るところでも100cm(実測)あるから、子連れの大荷物となるベビーカーも、たいていのものは積めるはず。フロアは上下の2段調節式。通常70cmの奥行きは、後席を倒せば120~140cmくらいにまで延ばせる。
とまぁ、ほれたがゆえにねちねちとチェックしたが、600eの最大の魅力はその走りだ。思わず笑ってしまうほど、「軽快」で「ストレスフリー」。EVらしく、欲しいときに望むだけの加速ができて、軽いステアリング操作でひょいひょいと街を駆け抜ける。でっかいホイールを履いている割に乗り心地がいいのにも驚かされた。
これなら人気が出るだろうと思ったら、実際セールスは好調だそうで、もっと知名度の高い「フィアット500e」よりも売れているとか。「多くの方はセカンドではなく、ファーストカーとして買われている」というインポーターの説明にも納得がいく。それでもEVを選ぶのは難しい……という向きは、2025年半ばに追加予定のマイルドハイブリッドモデルを待ってはいかが? 価格は400万円前後になるというから、これも見逃せない存在だ。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4200×1780×1595mm/ホイールベース:2560mm/車重:1580kg/駆動方式:FWD/モーター:交流同期電動機/最高出力:156PS(115kW)/4070-7500rpm/最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/500-4060rpm/タイヤ:(前)215/55R18 99V/(後)215/55R18 99V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス2)/一充電走行距離:493km(WLTCモード)/交流電力量消費率:126Wh/km(WLTCモード)/価格:585万円
実はドライバーズカー
メルセデス・ベンツEQS450+
最新の輸入車が一堂に会すこの試乗会では、時代を反映してか、年々EV比率が増えていて、今年は参加全ブランドのおよそ4割を占めていた。そんなEVのなかで、フィアット600eの対極にあるのが、「メルセデス・ベンツEQS450+」だろう。
車名に「S」とあるとおり、かの「Sクラス」のEV版ともいえる高級フル電動サルーン。価格は補助金適用前で600eより約1000万円高い1535万円。オプション込みなら1775万1800円。じゃあそれだけの効用が得られるのかと言われれば、答えはイエスだ。
なかでも“おいしいところ”とされている後部座席は、「高級サルーン」と聞いて多くの人が連想するであろうぜいたく空間そのものだ。ふかふかのクッションやヘッドレスト、温度調節からマッサージ機能まで付いたなめらかなレザーシートに、エアラインを思わせる専用モニターとタブレット型パネルで楽しむ高級オーディオに各種エンタメ。もともとホイールベースが3.2mもあるおかげでキャビンは広いのに、スイッチひとつで助手席を前方に追いやって、何不自由なく足が組める。投げ出せる。「さて、飲み物や車内食の用意はないのかな?」なんて勘違いしてしまいそうだ。
でもそんなEQSで、最も「思いのまま」が意識されたのは、運転席にいるときだった。メルセデスの高級車らしく、加速をはじめとする動力性能に不満がないのは当然、そのアクセルやブレーキのレスポンス、ステアリングの手ごたえから、「自分で操っている」「クルマとひとつになっている」という感覚に包まれる。そしてそれが、大きな信頼感や安心感へとつながっていく。
実際、EQSのオーナーは、多くがそうした「メルセデスらしさ」に重きを置く人だという。皆さん「新しいものに関心の高い層」で、Sクラスからの乗り換えも少なからずあるそうだが、一度体験すると、EVならではの静かさにすっかりハマってしまい、「こっちがいいや」となるらしい。
ちなみにEVで重視されるであろう一充電走行距離(WLTCモード)は、2024年11月の仕様変更で700kmから759kmへと延びている。充電インフラにしても、150kW級の急速充電器が利用可能となり、300kW級も開発途上にあるなど、ちょっとした休憩中にドンとチャージできる世の中になりつつある。
いやぁ、そうは言っても自分には縁遠い世界だよと思う方は、前期型のEQS450+が今いくらなのか、中古車相場もぜひチェックしてほしい。うんと身近に感じられること請け合いです。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5225×1925×1520mm/ホイールベース:3210mm/車重:2500kg/駆動方式:後輪駆動/モーター:交流同期電動機/最高出力:360PS(265kW)/最大トルク:568N・m(57.9kgf・m)/タイヤ:(前)255/45R20/(後)255/45R20(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック5)/一充電走行距離:759km(WLTCモード)/交流電力量消費率:188Wh/km(WLTCモード)/車両本体価格:1535万円
根っからマジメ
フォルクスワーゲン・パサートTDI 4MOTION Rライン
立て続けに2台のEVを紹介したけれど、まだEVに移行せずエンジン車でカーライフを送るとしたら? 燃料代が高止まりの昨今、ここはハイオクより2割安い軽油で乗れる、ディーゼル車を選びたい。
で、今が旬の一台といえば……? フルモデルチェンジした「フォルクスワーゲン・パサート」のTDI(ディーゼルターボ)はどうだろう。新型はセダンが設定されずワゴンに一本化されたものの、小さな子のいる筆者の場合、もともとワゴンが本命だ。
と思ったら、「実際のパサートオーナーは平均年齢が50代半ば」で、「子連れファミリーは2割にとどまる」というから驚いた。つまり、経済的な余裕があって、趣味が多彩な方に選ばれているわけだ。大人の仲間と出かけるにあたっては、新型パサートの広々とした後席は確かに喜ばれるだろう。なにせ、ひざ頭から前席までは25cmほどと、前述のEQS(同30cmほど)に迫るスペースが確保されているのだから。
ハイライトとなる荷室は、後席に友人を乗せたままでも690リッターもの容量が確保される(フロアは幅100~107cm×奥行き110cm)。言っておいて自分はピンとこなかったのだが、2リッターのペットボトル345本分と思えばもう十分。最大1920リッターという容量は、先代モデルに対して140リッターも増している。
大きいといえば、目を引くのが、インパネ中央のセンターディスプレイだ。15インチサイズのそれは、違和感すら覚えるほどの存在感で、各種インフォテインメントはもちろん、車両設定の多くが画面上で行える。今風である。で、乗る人がよく使うであろうメニューはすぐタッチできるレイアウトになっているなど、使い勝手がよく考えられているのがフォルクスワーゲンらしい。
さすがディーゼル車とあって、ピックアップに不満はない。でも、これといった刺激もない。淡々と高速道路を流していると「実直な良い道具」のイメージが浮かんできた。新型の車内は、確かにレザーやスエード調の表皮でプレミアム感が増しているし、特にこの「Rライン」は躍動感のある見た目もウリ。でも、根がすごくマジメなのだ。
聞けばパサートユーザーの9割は、買い替えに際してまたパサートを選ぶという。それもまた、このクルマの良さを物語る事実だろう。とにかく頼れる、しっかり者の相棒を求める人にお薦めしたい。
(文=関 顕也/写真=峰 昌宏/編集=関 顕也)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1850×1500mm/ホイールベース:2840mm/車重:1750kg/駆動方式:4WD/エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ/トランスミッション:7段AT/最高出力:193PS(142kW)/3500-4200rpm/最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1750-3250rpm/タイヤ:(前)235/40R19/(後)235/40R19(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック6)/燃費:16.4km/リッター(WLTCモード)/価格:645万8000円

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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