アウディA5アバントTFSIクワトロ150kW(4WD/7AT)
実直な進化 2025.05.06 試乗記 アウディの主力ライン「A4」が「A5」へと車名を改めてフルモデルチェンジ。数字としては25%アップを果たしたわけだが、実際の進化はどれほどのものか。2リッターガソリンターボ搭載の「A5アバントTFSIクワトロ150kW」をドライブした。新しいのに古い(?)ネーミングルール
A5アバントは、同時発表の「セダン」ともども従来のA4の後継機種となる。ご承知の向きも多いように、アウディは2023年に「電気自動車(BEV)は偶数、内燃機関(エンジン)搭載車は奇数」という命名法にあらためると公言していた。現行「Q4 e-tron」と同等車格となる新しいエンジン搭載車=このクルマがA5とされるのは、その新命名法が根拠となっている。
そうなると、A5のひとつ上級となる新しいエンジン搭載車は必然的に「A7」……と思いきや、この2025年3月に「アバント」が、4月に「セダン」が続けて発表された新型アッパーミドルアウディは、従来どおり「A6」の名で世に出てきた。つまり、アウディの新命名法は約1年半で撤回されたわけだ。欧州メディアによると、パワートレインごとに数字を分ける新命名法は、世界中の販売現場や顧客から「わかりにくい」と悪評ふんぷんだったらしい。失礼ながら、そりゃそうだろう……と思う。
というわけで、原点回帰となる“新・新命名法”の第1弾が新型A6で、今回のA5や、2025年3月に国内発表された「Q6 e-tron」、そしてもうすぐ上陸するはずの「Q5」といった2024年本国デビュー組が、ひとつ前の新命名法(?)の最後になったもようだ。これらも小改良などを機にA4やQ4に再改名(Q6はおそらくそのまま)すると思われる。
また、新型A5は基本骨格となるプラットフォームを従来の「MLB evo」から「PPC」に刷新したとされる。PPCとは「プレミアムプラットフォームコンバッション」の略。末尾のコンバッション(Combustion)は“燃焼”を意味する英語で、ここでは内燃機関=エンジンをあらわす。PPCはその名から想像できるように、新型「マカン」や「Q6 e-tron」などが使うアウディとポルシェ共同開発の上級BEV専用プラットフォーム「PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)」と対になる存在だ。
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際立つワイド感
こうして車名もプラットフォームも完全刷新されたというA5だが、写真だけだと、先代A4(の後期型)によく似ている。写真ですぐに気づく差異といえば、フロントのヘキサゴングリルが上下に薄くなったことと、テールランプが左右でつながったくらいか。しかし、実車ではひと目で新型と直感できる。
ちなみに、車体寸法はホイールベースが先代A4の70mm増し、全長が同じく65mm増し。全高は仕様にもよるが、実質的に15mmほど大きくなった。で、全幅も先代A4より15mmほどワイドになっている。こうした数値では、先代A4から長さ方向の大型化が目立つのだが、実車を前にしてもっとも印象的なのは幅方向のほうだったりする。ブリスターフェンダーによる肉感的なショルダーラインは、これまでのA4にはなかったもので、一瞬「これって新型『RS 4』?」と錯覚させるほどだ。このスタイルだけで、A5に買い替えたくなる従来型A4オーナーは少なくないと思う。
インテリアデザインはまったく新しい。運転席から中央までを一枚の湾曲ディスプレイに見せる(BMWに似た)手法は、現時点の日本仕様では、Q6 e-tronとA5=2024年本国デビュー組ならではの特徴だ。さらにいえば、助手席ディスプレイも最近のハヤリだし、マッサージ機能やタッチ式ライト/サイドミラースイッチ、さらには調光ガラス(でシェードレス)のパノラマルーフや好みで選択な外装照明パターンなどなど、思いつくギミックはあらかた用意されている。
先述のように全長やホイールベースは一気に従来型A6に近づいたA5だが、室内空間の拡大は正直いって如実に体感できるほどではない。後席の広さも従来と大きく変わらず(もともと広いけど)、荷室容量は逆に減少している。ギミック満載のインテリアも調度類の素材まで子細に観察すると、良くも悪くもDセグメントの域を出ない。やはり、これは正しくA4の後継だ。
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すべてをこなせる「バランスト」モード
3リッターV6ターボの「S5」を頂点に、2リッター4気筒のディーゼルターボとガソリンターボを従える基本ラインナップは、従来のA4/S4と同じ。今回のような2リッターガソリンターボには、最高出力150PSの「110kW」と204PSの「150kW」があり、駆動方式は前者が2WD(FF)、後者が4WD(クワトロ)となる。
今回の試乗車は150kWのクワトロに、オプションをこれでもか……とトッピングした満艦飾仕様だったが、その詳細をひとつひとつ説明すると長くなってしまう。しかし、「Sラインパッケージプロ」と「テクノロジーパッケージ」、そして20インチタイヤ&ホイールを追加している試乗車が、結果的に標準の3インチアップ(!)となる20インチタイヤと電子制御連続可変ダンパー付きの「Sスポーツダンピングコントロールサスペンション」を備えていたことには留意しておくべきだろう。
で、その乗り心地は素晴らしい。選んだドライブモードによって、サスペンションは「コンフォート」「バランスト」「ダイナミック」の3種のうちのどれかに切り替わるのだが、どれも納得の仕上がりだ。「グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ」という武闘派タイヤの35偏平を、なんとも上手に履きこなしている。
どのモードも守備範囲が広いのも印象的で、本格的なワインディングロードに乗り入れると、コンフォートモードは少しだけステアリング反応がもどかしいが、上下動が過多になるわけでもない。また、逆に引き締まるダイナミックモードはほかのどれよりも俊敏だが、快適性もほとんど犠牲になっていない。バランストモードはご想像のとおり、これらの中間的な調律だが、市街地でのソフトタッチから高速道路でのフラット感、ワインディングロードでのほどよい身のこなしなどなど、「ほかのモードは不要?」と思ってしまう見事な調律である。筆者の経験上、こういうプレーンなモードがいちばん好印象なサスペンションは、ほぼ例外なく素性がいい。そして、新型A5を買うなら、少なくとも可変ダンパーだけはフンパツしたくなる仕上がりだ。
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新鮮味はないけれど……
新型A5全体では新開発マイルドハイブリッドの「MHEVプラス」も話題だが、この2リッターガソリンターボにそれは備わらず、純粋なエンジン車となる。4WDシステムは先代の同種モデルに続いて、油圧多板クラッチによるトルクスプリット型の「クワトロwithウルトラテクノロジー」で、低負荷時には2WD=FFで走るほか、さらにクラッチをもうひとつ追加することで、FF走行時には前後に貫通するプロペラシャフトもフリー化する。
そんな2リッターのパワートレインは良くも悪くもフツーの味わいだ。今回は某シリーズハイブリッド車=典型的な電動車との同時取材だったこともあり、アクセルレスポンスのわずかなラグも気になった。こうした純粋なエンジン車も最近は少数派になりつつある。
フルスロットル時の340N・mという最大トルクは十二分に強力だが、A5クワトロはこの程度の動力性能では完全なるシャシーファスターである。この“ウルトラクワトロ”は機構上はオンデマンド型だが、実際には各方向の加速度と舵角、アクセル開度などを100分の1秒間隔で監視しながら“駆動輪が空転する直前”に必要なだけのトルクを配分するロジックになっているとか。実際、今回もウエット路面を含めて、いかに唐突なアクセル操作をしてもギクシャクするそぶりは皆無で、A5は思い描いたとおりの走行ラインをしれっとトレースするのみだった。
つい最近まで「2026年までに発売する新型車はすべてBEV化」という計画だったアウディゆえか、新規プラットフォームとはいえ、PPCの実態はMLB evoの大幅改良版のようだ。それを使う新型A5も各種のギミック以外に良くも悪くも驚きは少ないのだが、そのぶん、走りはいい意味で「そうそう、アウディってこうだよね」的な熟成がきわまっていた。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=アウディジャパン)
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テスト車のデータ
アウディA5アバントTFSIクワトロ150kW Sライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4835×1860×1450mm
ホイールベース:2895mm
車重:1870kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
最高出力:204PS(150kW)/4300-6000rpm
最大トルク:340N・m(34.7kgf・m)/2000-4000rpm
タイヤ:(前)HL245/35R20 98Y XL/(後)HL245/35R20 98Y XL(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ)
燃費:13.1km/リッター(WLTCモード)
価格:706万円/テスト車=951万円
オプション装備:ボディーカラー<ホライズンブルーメタリック>(9万円)/パノラマガラスルーフ(33万円)/ロールアップサンシェード<リアサイド>(3万円)/5ツインスポークブラックメタリックアルミホイール<ポリッシュド>&245/35R20タイヤ(25万円)/ライティングパッケージ<プライバシーガラス、アンビエントライティングプロ、ダイナミックインタラクションライト、パーテーションネット>(9万円)/テクノロジーパッケージプロ<MMIパッセンジャーディスプレイ、電動チルト&テレスコピックステアリングコラム、前後席シートヒーター、ステアリングヒーター、ダンピングコントロールSスポーツサスペンション、デジタルOLEDリアライト>(45万円)/Sラインパッケージ<Sラインエクステリア、5ツインスポークグラファイトグレーアルミホイール[ポリッシュド]&245/45R19タイヤ、Sスポーツサスペンション、アコースティックガラス[フロントサイド]、スポーツシート[フロント]、3スポークレザーマルチファンクションステアリングホイール[パドルシフト、フラットトップ&フラットボトム]、マットブラッシュドアルミデコラティブパネル[リニアエンボスアンスラサイト]、グロスブラックセンターコンソールサーフェス、ステンレスペダルカバー、アルミドアシルトリム、マルチカラーアンビエントライティング、ブラックヘッドライニング>(44万円)/Sファインナッパレザーラグジュアリーパッケージ<MMIエクスペリエンスプロ、Bang & Olufsen 3Dプレミアムサウンドシステム[16スピーカー]&ヘッドレストスピーカー、Sスポーツシート[フロント]、シートベンチレーション&マッサージ[フロント]、ファインナッパレザー[ダイヤモンドステッチング]、ダイナミカラップアラウンドインテリアエレメンツ[インパネデコラティブパネル、インナードアハンドルトリム、ドアアームレスト]>(77万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:3297km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:351.2km
使用燃料:39.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.8km/リッター(満タン法)/9.3km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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