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「フォルクスワーゲン・ポロ」誕生50周年 その歴史を振り返り次世代モデルを予想する

2025.06.19 デイリーコラム 生方 聡
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新世代を担う水冷FF車の末っ子

私が初めて「フォルクスワーゲン・ポロ」を運転したのは、1990年代のなかば、並行輸入された3代目だった。当時、3代目ポロの正規輸入は始まっておらず、左ハンドルのMT仕様車に試乗したのだが、愛嬌(あいきょう)のあるデザインからは想像できないくらい骨太の走りに驚いた記憶がある。

その後、3代目ポロが日本に正規輸入されてからは、3代目を2台と4代目を1台の都合3台と暮らしたが、いずれも都内を走らせるには絶妙なサイズで、このクルマでほぼ毎日のように混雑する都心を駆けずり回っていたのが、いまではとても懐かしい。

そんなフォルクスワーゲンの人気コンパクトカーが、2025年5月、登場から50年を迎えたということで、ここでは初代から現行型の6代目までの足跡を振り返ってみたい。

今年50周年を迎えるということからもわかるように、初代ポロが誕生したのは1975年のこと。この時期、フォルクスワーゲンは、長らく同社の主力モデルを務めた「ビートル」こと「タイプ1」の後継モデルを矢継ぎ早に発売していて、1973年の「パサート」、翌1974年の「ゴルフ」に続く、第3の水冷FF車であるポロを市場に投入したというわけだ。

1973年の「パサート」、1974年の「ゴルフ」に続くフォルクスワーゲンの水冷エンジン搭載車として1975年に登場した「ポロ」。1974年に発表された「アウディ50」の姉妹車という位置づけだった。
1973年の「パサート」、1974年の「ゴルフ」に続くフォルクスワーゲンの水冷エンジン搭載車として1975年に登場した「ポロ」。1974年に発表された「アウディ50」の姉妹車という位置づけだった。拡大
「ポロ」の最新モデルは2017年に登場した6代目(写真右)で、現在販売されているのは2022年にマイナーチェンジが行われた改良型。1975年に初代モデルがデビューして以来50年にわたり進化を続け、これまでに世界で累計2000万台を販売したという。
「ポロ」の最新モデルは2017年に登場した6代目(写真右)で、現在販売されているのは2022年にマイナーチェンジが行われた改良型。1975年に初代モデルがデビューして以来50年にわたり進化を続け、これまでに世界で累計2000万台を販売したという。拡大
直線基調のシンプルな2ドアハッチバックモデルとして販売が開始された初代「ポロ」。デビュー当初は最高出力40PSの0.9リッターの直4エンジンを搭載していた。
直線基調のシンプルな2ドアハッチバックモデルとして販売が開始された初代「ポロ」。デビュー当初は最高出力40PSの0.9リッターの直4エンジンを搭載していた。拡大
初代「ポロ」のインテリア。全長3.5mのコンパクトなボディーに大人4人と荷物を搭載できるスペースを確保し、「Small on the outside. Big on the inside.(コンパクトなボディーサイズと広々とした室内)」がうたい文句だった。
初代「ポロ」のインテリア。全長3.5mのコンパクトなボディーに大人4人と荷物を搭載できるスペースを確保し、「Small on the outside. Big on the inside.(コンパクトなボディーサイズと広々とした室内)」がうたい文句だった。拡大
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初代ポロは「アウディ50」の兄弟車だった

初代ポロは、角張ったデザインが特徴の3ドアハッチバック。ひとあし早く登場した「アウディ50」と基本設計を共有しながら、よりシンプルさを際立たせているのがフォルクスワーゲンらしい。全長3.5mのコンパクトなボディーには大人4人と荷物を搭載できるスペースを確保し、「Small on the outside. Big on the inside.(コンパクトなボディーサイズと広々とした室内)」がうたい文句だった。モデルサイクルの途中には、2ドアノッチバックの「ダービー」が派生モデルとして登場し、1981年までに110万台以上を販売。兄貴分のゴルフとともに、フォルクスワーゲンの新時代を築くことになった。

1981年には初のフルモデルチェンジが実施され、2代目ポロが誕生する。初代譲りの角張ったスタイルとしながら、全長を3.66mに拡大するとともに、2ドアのミニステーションワゴンともいえる「スクエアバック」として登場したのは、いま見ても斬新である。その後、ファストバッククーペや、ダービーをポロに統合した後継モデルとなる「ポロ クラシック」が追加されるなど、バリエーションが拡大していく。コンパクトなボディーに、スーパーチャージャー付きエンジン「Gラーダ」を搭載した「ポロクーペGT40」が500台限定で登場したのもトピックのひとつで、その後、Gラーダ搭載の「ポロクーペG40」がカタログモデルとなった。

なお、2代目のポロクーペは少数ながら日本にも正規輸入されているが、本格的に販売が始まり、人気に火がつくのは次の3代目からである。

ドイツ・ウォルフスブルクのフォルクスワーゲン本社工場に設けられた「ポロ」の生産ライン。初代モデルは1981年までに110万台が生産されたという。
ドイツ・ウォルフスブルクのフォルクスワーゲン本社工場に設けられた「ポロ」の生産ライン。初代モデルは1981年までに110万台が生産されたという。拡大
全長を3.66mに拡大した第2世代の「ポロ」が1981年に登場。フォルクスワーゲンが「スクエアバック」と呼ぶ、2ドアのミニステーションワゴン風にデザインされたフォルムが特徴だった。
全長を3.66mに拡大した第2世代の「ポロ」が1981年に登場。フォルクスワーゲンが「スクエアバック」と呼ぶ、2ドアのミニステーションワゴン風にデザインされたフォルムが特徴だった。拡大
2代目「ポロ」のインテリア。初代モデルのデザインを立体的に進化させたインストゥルメントパネルが採用された。
2代目「ポロ」のインテリア。初代モデルのデザインを立体的に進化させたインストゥルメントパネルが採用された。拡大
ノッチバックスタイルを採用し、「ポロ」の派生モデルとして登場した「フォルクスワーゲン・ダービー」。写真は2代目で、1984年に車名が「ポロ クラシック」に変更された。当時のインポーターであったヤナセによって、日本にも少数が正規輸入された。
ノッチバックスタイルを採用し、「ポロ」の派生モデルとして登場した「フォルクスワーゲン・ダービー」。写真は2代目で、1984年に車名が「ポロ クラシック」に変更された。当時のインポーターであったヤナセによって、日本にも少数が正規輸入された。拡大

日本への本格導入は3代目から

ここまでは比較的淡々と紹介してきたが、実は2代目までは私自身、ほとんど触れる機会がなかったからだ。その点、3代目以降は新車をリアルタイムで経験したぶん、思い入れもある。

1994年に登場した3代目は、“ハッピーフェイス”と呼ばれる親しみやすいフロントマスクや丸みを帯びたフォルムが魅力。5ドアモデルが用意されたのもこの世代からで、日本でも1996年に販売がスタートしている。エアバッグやABSなど安全装備が強化されているのも見逃せない。また、この3代目からはスポーツモデルの「GTI」がラインナップに加わった。個人的にはキャンバストップを備えた「ポロ オープンエア」を所有していたことがあり、いつかまたあのスタイルが復活することを期待している。

2001年にモデルチェンジした4代目ポロも忘れられない一台で、丸目4灯の愛らしいフロントマスクが気に入って、思わず購入してしまったことを覚えている。先代同様、スポーツモデルのGTIが用意されたほか、SUV人気にあわせて、のちに「クロスポロ」となるクロスオーバーの「ポロ ファン」(日本未導入)が登場したのもこの4代目だった。

2009年にデビューした5代目は、全長が4mまで拡大されるとともに、先代に比べてデザインがよりシンプルになった。それでいて安っぽさを感じさせないのは、当時、デザインの指揮を執っていたヴァルター・デ・シルヴァのすごいところだ。GTIが用意され、また、WRC(世界ラリー選手権)にポロが投入されたこともあり、スポーツイメージが高まったのもこの世代だ。デュアルクラッチギアボックスの「DSG」が初めて搭載され、販売台数は歴代最高の630万台に及んだという。

“ハッピーフェイス”と呼ばれる親しみやすいフロントマスクや丸みを帯びたフォルムが特徴の3代目「ポロ」は、1994年にデビューした。
“ハッピーフェイス”と呼ばれる親しみやすいフロントマスクや丸みを帯びたフォルムが特徴の3代目「ポロ」は、1994年にデビューした。拡大
エアバッグやシートベルトテンショナーなどを採用し、安全性の向上も図られた3代目「ポロ」のインテリア。
エアバッグやシートベルトテンショナーなどを採用し、安全性の向上も図られた3代目「ポロ」のインテリア。拡大
2001年のフルモデルチェンジによって誕生した4代目「ポロ」。丸目4灯の愛らしいフロントマスクが目を引いた。
2001年のフルモデルチェンジによって誕生した4代目「ポロ」。丸目4灯の愛らしいフロントマスクが目を引いた。拡大
4代目「ポロ」のマイナーチェンジモデルに追加設定された「クロスポロ」。SUV風味をトッピングしたクロスオーバーモデルとして人気を博した。
4代目「ポロ」のマイナーチェンジモデルに追加設定された「クロスポロ」。SUV風味をトッピングしたクロスオーバーモデルとして人気を博した。拡大

ポロの未来は?

現在販売されているのは、2017年にワールドプレミア、翌2018年3月に日本上陸を果たした6代目である。モデルチェンジによりボディーサイズは全長×全幅×全高=4060×1750×1450mmに拡大し、日本では5ナンバーサイズから3ナンバーサイズとなった。その中身も大きく進化し、ゴルフ同様、フォルクスワーゲンのモジュールコンセプト「MQB」を採用することで、優れたボディー剛性や高い安全性を確保している。水平のラインを強調するフロントマスクを採用したこともあり、“小さなゴルフ”といえるほどの進化を遂げている。パワフルな2リッター直4エンジンを積むGTIも用意され、ゴルフとの距離が縮まっている印象だ。

その後、2021年4月にはマイナーチェンジが実施され、ラジエーターグリルには左右のデイタイムランニングランプを結ぶLEDライトストリップが備わり、さらに、LEDマトリクスヘッドライト「IQ.LIGHT」も選べるようになって、先進的なイメージを強めている。

いまや3ナンバーサイズになったとはいえ、ゴルフよりひとまわりコンパクトなポロは取り回しが良く、気軽に運転できるクルマであることに変わりはない。

気になるのはポロの未来で、フォルクスワーゲンはポロクラスのBEV(電気自動車)である「ID.2all」の量産版を2026年に市場に投入するとしているが、BEVの普及が停滞気味である現状を考えると、これに置き換わるのはまだ先の話だ。ウワサでは2025年内に2度目のマイナーチェンジを行うことで、あと数年は6代目ポロに頑張ってもらうつもりらしい。

個人的にはID.2allでフォルクスワーゲンが提案する新しいコンパクトカー、そして、新しいデザインをいち早くのぞいてみたい。

(文=生方 聡/写真=フォルクスワーゲン/編集=櫻井健一)

2009年にデビューした5代目「ポロ」。デュアルクラッチギアボックスの「DSG」がポロとして初めて搭載された。販売台数は歴代最高の630万台を記録した。
2009年にデビューした5代目「ポロ」。デュアルクラッチギアボックスの「DSG」がポロとして初めて搭載された。販売台数は歴代最高の630万台を記録した。拡大
Cセグメントモデルと比べても見劣りしないくらいの高級感が漂う5代目「ポロ」のインテリア。ステアリングにはチルトのほかにテレスコピック調整も付き、“小さなゴルフ”といえるほどの進化を遂げた。
Cセグメントモデルと比べても見劣りしないくらいの高級感が漂う5代目「ポロ」のインテリア。ステアリングにはチルトのほかにテレスコピック調整も付き、“小さなゴルフ”といえるほどの進化を遂げた。拡大
6代目「ポロ」は2018年3月に上陸。2024年4月には高性能モデル「ポロGTI」の誕生25周年記念特別仕様車「エディション25」(写真)も発売された。
6代目「ポロ」は2018年3月に上陸。2024年4月には高性能モデル「ポロGTI」の誕生25周年記念特別仕様車「エディション25」(写真)も発売された。拡大
2023年3月に発表された新型電気自動車「ID.2all」のコンセプトモデル。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4050×1812×1530mmで、フロントに最高出力226PSのモーターを搭載し前輪を駆動する。当初は内燃機関搭載の「ポロ」に代わるモデルと目されたが、ポロに置き換わるとしてもそれはまだ先の話になりそうだ。
2023年3月に発表された新型電気自動車「ID.2all」のコンセプトモデル。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4050×1812×1530mmで、フロントに最高出力226PSのモーターを搭載し前輪を駆動する。当初は内燃機関搭載の「ポロ」に代わるモデルと目されたが、ポロに置き換わるとしてもそれはまだ先の話になりそうだ。拡大
生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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