アウディSQ6 e-tron(4WD)
電気が見せた理想と悩み 2025.09.17 試乗記 最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。日本でも本気です
アウディといえば、この2025年に「A5」と「Q5」、そして「Q6 e-tron」に「A6 e-tron」が、次々と上陸している。アウディの主要商品であるミドルクラスが、エンジン搭載車とBEVの両方で一気に刷新されたわけだ。アウディの正規販売店はさぞや大忙しだろう。
このなかで、BEV側の主力となるのは、おそらくQ6 e-tronだ。競合車としては、なんだかんだで市場の中心にいる「テスラ・モデルY」を筆頭に、「レクサスRZ」、DNAを共有する「ポルシェ・マカン エレクトリック」、さらには先日ついに姿を現した新しい「BMW iX3」、そして来る2026年に上陸予定の「キャデラック・オプティク」、同年デビュー予定の「ボルボEX60」などがあげられる。つまり、Q6 e-tronは上級BEVの最激戦区に真っ向勝負でいどむ。
アウディはQ6 e-tronを日本にもガチで売り込みたいようで、日本仕様のラインナップも豊富だ。ちょっと小さめの電池(83kWh)で1モーター2WDとなる素の「Q6 e-tron」と、100kWh電池+2モーター4WDの「Q6 e-tronクワトロ」という基本的な2機種に、それぞれ「アドバンスト」と「Sライン」を設定している。
ちなみに、本国には100kWh電池を積む2WDの「Q6 e-tronパフォーマンス」もあるが、現時点ではそれは日本未導入。逆にいうと、未導入なのはそれだけで、前記のQ6 e-tron(以下、Q6)各車に加えて、今回連れ出した最高性能のトップモデル「SQ6 e-tron(以下、SQ6)」も、他のQ6と同時発売となった。
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モデル内、グループ内での微妙な位置関係
アウディQ6/SQ6とポルシェ・マカン エレクトリック(以下、マカン)が、「アウディe-tron GT」と「ポルシェ・タイカン」のときと同様に、土台となる「PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)」を2895mmというホイールベースともども共有しているのは、カーマニアならご承知のとおりだ。
こうして基本骨格となるプラットフォームや、それに含まれる電子アーキテクチャーやシャシー関連のメカ、そして駆動バッテリーも共通化するいっぽうで、フロントモーターの種類やリアモーターの搭載位置、あるいはドア構造(アウディはサッシュ付き、ポルシェはサッシュレス)などはブランドごとに専用化。e-tron GT/タイカンのときより、乗り味の差別化がはるかに巧妙になっているのも、Q6/SQ6の大きな特徴である。
SQ6の動力性能はシステム出力が489PS(ローンチコントロール時516PS)で、0-100km/h加速は4.3秒(ローンチコントロール使用時)となっている。ひとつ下のQ6クワトロはバッテリーはSQ6と共通だが、ローンチコントロールは非装備。システム出力はSQ6比で102PS低く、ゼロヒャクは1.6秒遅い。しかもバッテリー制御が寸止めとなっているのか、ツルシの状態(=オプションの「レンジプラスパッケージ」非装着車)では、一充電航続距離(WLTCモード、以下同じ)もSQ6にゆずる。
そんなSQ6を、ある意味で最大のライバルであるマカンと比較すると、動力性能は「マカン4S」とまあ同等といっていい。厳密にはシステム出力はSQ6のほうが41PS高い(ローンチコントロール作動時は同じ516PS)が、ゼロヒャクは0.2秒ゆずる。そして、一充電航続距離はSQ6のほうが長い。ただ、マカンにはさらに速い「ターボ」がある。マカン ターボはずばぬけて速く、ゼロヒャクはSQ6に1秒もの差をつける。
そんなSQ6だが、その高性能とは裏腹に、これ見よがしなビジュアルをよしとしない。普通のQ6でもスポーツ系のオプションを選ぶと、どんどんSQ6と区別がつきにくくなる。
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アウディの気合を感じる完成度
マカンは素のモデルでも、中立付近がタイトなステアリングと引き締まったフットワーク、リアタイヤの“蹴り”をそこはかとなく感じさせるトラクション感など、その走りは予想以上に“ポルシェ”である。しかも、上級モデルになるほど、その度合いが増す。
いっぽう、SQ6は電子制御のエアサスペンションや連続可変ダンパーがもっとも締め上げられるはずの「ダイナミック」モードでも、すこぶる滑らかで快適だ。ほかのモードと比較すれば、確かに少し硬めでロール方向の動きも抑制されるが、前時代的なガチガチスポーツではない。以前試乗したQ6のエアサス仕様(参照)と比較しても、少し引き締まった感があるだけで、快適性はほとんど負けていない。エアサスというと細かい凹凸で突っ張る例も少なくないが、SQ6にその種のクセは皆無だ。
パワートレインも速さはきっちり上乗せしつつも、あくまで洗練されている。デフォルトの「バランス」モードだと、Q6にも増して以心伝心のアクセル特性に感銘を受ける。ダイナミックモードだと体感的には“即全開!?”とばかりのキック力を披露するが、ギアのかみ合わせに起因するショックを、おそらくワザとほんの少しだけ感じさせつつも、不快さを抱かせない調律は見事というほかない。
アウディのBEV開発もすでに2巡目、あるいは3巡目に入っていると思われる。そして、Q6/SQ6は冒頭のように社運を賭けて激戦区に送り込む戦略BEVである。少なくとも、走りについては全身くまなく完成度が高い。
前記のようにビジュアル的な特別感は薄いSQ6だが、よほどの特殊な状況でなければ、この2.5t近い車重を確実に止めてくれる赤いキャリパーのブレーキだけはQ6にはなかった。赤いキャリパーはSQ6専用のオプションという。
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電動化時代の“スゴいクルマ”の課題
Q6/SQ6では、加速時に疑似的な走行サウンドがキャビンに響く。それはポルシェ版のマカンも同様だが、マカンがエンジンを模したサウンドなのに対して、アウディは文字にすると“ドーン”という、えもいわれぬ音である。こういうところのつくり分けも細かい。
SQ6でも低負荷時は後輪駆動で必要に応じてフロントに駆動配分するが、“後輪駆動ベース”という体感はまるでなく、いかなるときにも弱アンダーステア的な安定感を維持する。あえてフェイント気味にステアリングとアクセルをあつかっても、前後どちらかが優勢かのような挙動は見せない。絵に描いたようなオンザレールだ。ちなみに、マカンは対照的に、常に後輪駆動感を漂わせる調律である。
このように、SQ6は間違いなくクラストップ級の動力性能をもつにもかかわらず、見た目にも乗り味にも、これ見よがしなところはない。ビジュアルはよくも悪くも普通のQ6と大差なく、乗り心地や静粛性、快適性、洗練性はそのままに、スピードだけが上乗せされる。
考えてみれば、こうした“上位互換”的なクルマこそ、ある意味でアウディのSがずっと目指してきた姿だろう。ただ、従来のエンジン車だと動力性能を一定以上に引き上げようとすると、必然的にエンジン形式も変わり、それがよくも悪くも独特の味わいにつながっていた。BEVはアウディのSのようなクルマづくりに好適なフォーマットということもできる。
音も、トルク特性も、ほぼそのままに出力だけを上げられるBEVは、コストを積んだら積んだぶんだけ、なんの損失もなく、そのまま機能や性能が上乗せされたクルマが手に入る。それは同時に、過剰な性能にあえて高いお金を支払うありがたみも薄れる可能性もはらんでいる。BEV化により、クルマの世界観としてはより理想に近づいたアウディのSモデルだが、そのぶん、今後は商品として“Sでなければダメ”な魅力を打ち出す工夫が、より必要になると思われる。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=アウディジャパン)
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テスト車のデータ
アウディSQ6 e-tron
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1965×1670mm
ホイールベース:2895mm
車重:2460kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流誘導電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:275N・m(28.0kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:580N・m(59.1kgf・m)
システム最高出力:489PS(360kW)<ローンチコントロール使用時:516PS(380kW)>
タイヤ:(前)255/45R21 106W XL/(後)285/40R21 109W XL(ブリヂストン・トランザT005)
一充電走行距離:672km(WLTCモード)
交流電力量消費率:158Wh/km(WLTCモード)
価格:1320万円/テスト車=1517万円
オプション装備:パノラマサンルーフ(25万円)/Bang&Olufsen 3Dプレミアムサウンドシステム<16スピーカー>+フロントヘッドレストスピーカー(7万円)/MMIパッセンジャーディスプレイ(13万円)/カラードブレーキキャリパー レッド(7万円)/アルミホイール 5Yスポークダイナミックデザイン ブラックメタリック ポリッシュト<Audi Sport><前:9J×21後ろ:10J×21、タイヤサイズ 前:255/45 R21 後ろ:285/40 R21>(27万円)/ダークAudi rings&ブラックスタイリングパッケージ<Audi exclusive><ダークAudi rings+ブラックスタイリングパッケージ+エクステリアミラーハウジング グロスブラック+ルーフレール ブラック>(16万円)/ラグジュアリーパッケージS ファインナッパレザー アラスレッドインテリア<アダプティブエアサスペンション スポーツ+デジタルOLEDリアライト+Sスポーツシート+マッサージ機能[フロント]+ファインナッパレザー ダイヤモンドステッチング+ラップアラウンドインテリアエレメンツ ダイナミカ[インストルメントパネルデコラティブトリム、ドアトリム、ドアアームレスト、センターアームレスト、センターコンソール]>(90万円)/ファンクションパッケージ<プライバシーガラス+ロールアップサンシェード リアサイド+フルペイントフィニッシュ>(12万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2455km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:374.7km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.7km/kWh(車載電費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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