ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS(4WD)
都会派は明朗快活 2025.11.15 試乗記 ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」にスポーティーな新グレード「RS」が追加設定された。ベースとなった4WDのハイブリッドモデル「e:HEV Z」との比較試乗を行い、デザインとダイナミクスを強化したとうたわれるその仕上がりを確かめた。ホンダファン御用達の追加仕様
ヴェゼルに今回追加されたRSといえば、あの「タイプR」ほど暑苦しくないスポーツグレードとして定番化している。モデルライフ後半期のテコ入れのために登場する“スポーツカー好きのホンダファン御用達”のバリエーションという意味では、今回のヴェゼルRSも「シビック」や「フィット」のそれと同様といっていい。
今のシビックとフィットのRSは、モデルライフ折り返し地点といえるマイナーチェンジ時に追加されている。思い返してみれば、先代ヴェゼルにRSが用意されたのも、デビューから2年強が経過した最初のマイチェン時だった(先代ヴェゼルは長寿だったこともあり、2度目のマイチェンもあった)。
「N-ONE RS」にしても、初代はやはりマイチェンからの追加だったが、2代目のそれは2020年末の2代目そのもののデビュー時に最初から用意された。また、今のヴェゼルも2024年春にマイチェンを済ませており、今回のRSはそこからさらに約1年半後の追加とされた。モデルライフ後半というより、これは末期に近い……のかもしれない。
いずれにしても、個々のクルマで販売や開発の事情は異なるわけで、RSのあつかいもお約束があるようで、厳密にはないということだ。
いっぽうで、内外装の要所をスポーツテイスト仕立てにしつつ、パワートレインはノーマルのままか、少なくとも大きく手は入れず、メカニズムのキモは主にシャシー方面……というのが、近年のRSで共通する約束事である。実際、今回RSに積まれる1.5リッター直4エンジンを源流とするe:HEVのハイブリッドパワートレインは、普通のヴェゼルと寸分のちがいもないという。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ヴェゼル初の“立駐対応”
おなじみの赤い「RS」バッジ以外にも、内外装のRS専用仕立ての部分は少なくない。最新のヴェゼルRSでなにより目につくのは、フロントセンターグリルだろう。ほかのヴェゼルに採用される横ルーバーの車体同色グリルとは好対照の、黒い網目状の専用デザインだ。さらに、ミシュランタイヤは18インチのサイズ、銘柄ともe:HEV Zの4WD車と共通だが、ホイールのカラーは専用。そして内装の赤いアクセントもRS専用という。
また、前後バンパーやサイドシルのガーニッシュも専用。ほかのヴェゼルのバンパーがSUVらしいオフロード風味を増すスキッドガード風デザインなのに対して、RSではオンロードスポーツ的に低く見せる意匠となっている。実車を見ると、なるほどそれは見事に成功している……と思ったら、デザイン処理による視覚的な低重心“感”だけでなく、実際に最低地上高が15mm低い専用ローダウンサスペンションが組み込まれている。
通常のヴェゼルの全高は1580~1590mmだから、それだけだとRSの全高は1565~1575mmになる計算だが、今回はさらにアンテナもRS専用にガラスプリント式とする(ほかのヴェゼルはルーフのシャークフィン式)ことで、全高が日本の伝統的な立体駐車場にも対応する1545mmになっている。開発陣に聞くと、“立駐対応”が最初のねらいではなく、まずは走りのためにローダウンしたところ、「あとちょっとで立駐に入るのでは?」というハナシになって、アンテナに手をつけることにしたのだという。
今回はローダウンに合わせてバンプストッパーもそのぶん短縮されており、サスペンションのストローク量はほぼ変わっていないとか。コイルやスタビライザーといったバネ類のレートもそのままで、車高以外でのシャシーでの変更点は、前後ダンパーの減衰力と、パワーステアリングの制御だという。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
割高感があるのは否めない
つまり、新しいヴェゼルRSのシャシーでの変更点は、基本的に、車高、ダンパー減衰、パワステ制御の3つ。繰り返すが、パワトレには手を入れていない。
こうして見ると、バネやダンパーの設定のみならず、サスペンションやステアリングのハードにも「タイプR」用パーツを惜しげもなく使い、専用の6段MTのほか、ドライブモードや軽量フライホイールなどでパワトレも武装したシビックRS、あるいは専用タイヤ(ただし、リプレイス用)をはじめとしたシャシーの全面リチューンだけでなく、ドライブモードと減速セレクターを専用に追加して、さらにエクステリアもしっかり仕上げられているフィットRSと比較すると、ヴェゼルRSは、良くも悪くも軽めの仕立て内容というほかない。
それはそれでいいのだが、だとすれば、ベースモデルともいえる「e:HEV Z」に対して50万円弱の上乗せとなるヴェゼルRSの価格は、ちょっと高いかも……と思わなくもない。
というのも、たとえばシビックRSも同じ1.5リッターターボの「EX」との価格差は50万円強と、金額的には今回のヴェゼルと似たようなものだが、クルマの内容は明らかに凝っている。また、フィットRSも今回のヴェゼルRSより専用部分が明らかに多いにもかかわらず、強いていえばベースモデルといえる「HOME」との価格差は20万円強にとどまる。しかも、その本体価格は同じフィットの「クロスター」や「LUX」より安い。
もっとも、資材調達コストが右肩上がりとなっている現在は、開発年次が新しいほどコストもかさむのが現実ではある。だから、シビックRSやフィットRSもいま新たに発売するとなると、より高い値づけになることは間違いないが、現状では、同じRSだとヴェゼルにちょっと割高感があるのは否定しない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ステアリングはより正確で俊敏
今回の取材は、東京タワーのたもとの某有名ホテルという超都心を拠点としたメディア試乗会だった。で、webCG取材班にあてがわれた試乗車は4WD。先代ヴェゼルRSはFWDのみだったから、新しいヴェゼルRSは史上初めて4WDも選べるRSでもある。RSに興味がありながらも、4WDがないことであきらめていた(かもしれない)降雪地域のホンダファンには、これは朗報というほかない。
試乗ルートも時間も非常にかぎられた今回の取材だったが、かわりに同じ場所でベースモデル的なヴェゼルe:HEV Zにも乗れたのはありがたかった。こうして直接比較すると、なるほどRSはステアリングがより正確で俊敏、そしてムダな動きが明らかに少ない。既存のヴェゼルもSUVとしてはかなりシュアな走りをするタイプだが、RSと乗り比べると、その所作は良くも悪くもゆるくて牧歌的に感じられてしまった。
いっぽうで、ジョイントや路面のペイントなどのシーンで乗り心地が悪化したようにほとんど感じられないのは、タイヤやバネ系があえてそのままだからだろう。わずかなアクセル操作やブレーキングに対する荷重移動もスムーズだ。パワトレは変わっていないはずだが、動力性能にメリハリが増した気がしないでもなかったことについては、「シャシーの接地感が高まっているので、自然とアクセルペダルを積極的に踏まれたのかもしれません。あと、今のホンダの4WDは舗装路でも積極的にリアタイヤに駆動力を配分しています」というのが、走りのプロである開発担当氏の見立てである。
同担当氏は「次はぜひワインディングロードでも乗ってみてください」と語っておられた。ただ、今回のような都心の大きめの交差点や首都高速のジャンクションでのパリッとした身のこなしに、意外なほど留飲が下がるのも、良くも悪くもライトな仕立てのヴェゼルRSの美点だったりして……とも思う。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1790×1545mm
ホイールベース:2610mm
車重:1460kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:131PS(96kW)/4000-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3500rpm
タイヤ:(前)225/50R18 95V/(後)225/50R18 95V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:21.4km/リッター(WLTCモード)
価格:374万8800円/テスト車=390万1600円
オプション装備:ボディーカラー<スレートグレー・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット プレミアム(4万7300円)/ドライブレコーダー3カメラセット(6万7000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:857km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.2.11 フルモデルチェンジで3代目となった日産の電気自動車(BEV)「リーフ」に公道で初試乗。大きく生まれ変わった内外装の仕上がりと、BEV専用プラットフォーム「CMF-EV」や一体型電動パワートレインの採用で刷新された走りを、BEVオーナーの目線を交えて報告する。
-
ホンダN-ONE RS(FF/6MT)【試乗記】 2026.2.10 多くのカーマニアが軽自動車で唯一の“ホットハッチ”と支持する「ホンダN-ONE RS」。デビューから5年目に登場した一部改良モデルでは、いかなる改良・改善がおこなわれたのか。開発陣がこだわったというアップデートメニューと、進化・熟成した走りをリポートする。
-
日産キャラバン グランドプレミアムGX MYROOM(FR/7AT)【試乗記】 2026.2.9 「日産キャラバン」がマイナーチェンジでアダプティブクルーズコントロールを搭載。こうした先進運転支援システムとは無縁だった商用ワンボックスへの採用だけに、これは事件だ。キャンパー仕様の「MYROOM」でその性能をチェックした。
-
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】 2026.2.7 モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。
-
インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)【海外試乗記】 2026.2.6 アメリカの老舗、インディアンの基幹モデル「チーフ」シリーズに、新機種「チーフ ヴィンテージ」が登場。このマシンが、同社のラインナップのなかでも特別な存在とされている理由とは? ミッドセンチュリーの空気を全身で体現した一台に、米ロサンゼルスで触れた。
-
NEW
核はやはり「技術による先進」 アウディのCEOがF1世界選手権に挑戦する意義を語る
2026.2.13デイリーコラムいよいよF1世界選手権に参戦するアウディ。そのローンチイベントで、アウディCEO兼アウディモータースポーツ会長のゲルノート・デルナー氏と、F1プロジェクトを統括するマッティア・ビノット氏を直撃。今、世界最高峰のレースに挑む理由と、内に秘めた野望を聞いた。 -
NEW
第860回:ブリヂストンの設計基盤技術「エンライトン」を用いて進化 SUV向けタイヤ「アレンザLX200」を試す
2026.2.13エディターから一言ブリヂストンのプレミアムSUV向けコンフォートタイヤ「アレンザLX100」の後継となるのが、2026年2月に発売された「アレンザLX200」。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて開発された最新タイヤの特徴を報告する。 -
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(前編)
2026.2.12あの多田哲哉の自動車放談イメージキャラクターの「デリ丸。」とともに、すっかり人気モノとなった三菱の軽「デリカミニ」。商品力の全体的な底上げが図られた新型のデキについて、元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんが語る。 -
ホンダアクセスが手がけた30年前の5代目「プレリュード」に「実効空力」のルーツを見た
2026.2.12デイリーコラムホンダ車の純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスがエアロパーツの開発に取り入れる「実効空力」。そのユニークなコンセプトの起点となった5代目「プレリュード」と最新モデルに乗り、空力パーツの進化や開発アプローチの違いを確かめた。 -
第948回:変わる時代と変わらぬ風情 「レトロモビル2026」探訪記
2026.2.12マッキナ あらモーダ!フランス・パリで開催されるヒストリックカーの祭典「レトロモビル」。客層も会場も、出展内容も変わりつつあるこのイベントで、それでも変わらぬ風情とはなにか? 長年にわたりレトロモビルに通い続ける、イタリア在住の大矢アキオがリポートする。 -
第287回:宝石を盗んで西海岸のハイウェイを駆け抜けろ! 『クライム101』
2026.2.12読んでますカー、観てますカーハイウェイ101で発生する宝石盗難事件はいつも迷宮入り。「ダッジ・チャレンジャー」で素早く逃走する犯人の犯罪心得は、殺さず、傷つけず、証拠を残さないこと。泥棒、刑事、保険ブローカーが華麗なる頭脳戦を繰り広げる!





























































