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【スペック】全長×全幅×全高=4270×1785×1445mm/ホイールベース=2635mm/車重=1320kg/駆動方式=FF/2リッター直4DOHC16バルブ(201ps/7800rpm、19.7kgm/5600rpm)/価格=298.0万円(テスト車=同じ)

ホンダ・シビック タイプR ユーロ(FF/6MT)【試乗記】

今さら、でも欲しくなる 2009.12.24 試乗記 島下 泰久 ホンダ・シビック タイプR ユーロ(FF/6MT)
……298.0万円

日本で買える唯一の英国製「シビック」、「タイプR ユーロ」に試乗。個性的なスタイリングだけでなく、その走りも、いかにも「ホンダ」なクルマだった。
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抜群の存在感

やっと? それとも今さら? とにかく2009年も終わりになって、「シビック タイプR ユーロ」が日本上陸と相成った。そもそもイギリス生産のハッチバックの日本導入は無いと言っていたホンダだが、2008年夏にはその方針が転換され、ヨーロッパ向けタイプRの投入が発表される。ところが秋に起こった世界的な経済危機でイギリス工場が操業停止。日本向けの生産も出来なくなり、話は延期になる。それがここにきて、ようやく実現の運びとなったわけである。

目の前にたたずむ姿を見ていると、待った甲斐はあったとしみじみ感じる。登場当初、ヨーロッパで話題を呼んだスタイリングは今ここ日本で見ても存在感はやはり抜群。シャープで躍動感、凝縮感にあふれ、未来的でもあるフォルムは、いかにもホンダ、いかにもシビックらしい。

ヨーロッパでは単に「タイプR」であるこのタイプR ユーロは、この魅力的なボディにファンならお馴染みのK20A型2リッターi-VTECユニットを積み込む。最高出力は201psと、日本の「シビック タイプR」(225ps)に比べれば抑えられているものの、それでもリッター当たり100ps以上という、自然吸気としては文句無しの超高性能を誇る。7800rpmという最高出力発生回転数だけでも、十分ソソられてしまうというものだ。

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乗り心地は、けっこうツラい

ドアを開け、大きなサイドサポートを持ったシートに身をあずけると、目の前にはノーズ先端のそれと同じ、赤地にHの文字が刻まれたマークが。各部に入れられたステッチ、さらにはカーペットまで真っ赤に染め上げられていて気分を昂揚させる。
ただしフィットと同じセンタータンクレイアウトのプラットフォームを使い、つまり前席下に燃料タンクを擁することもあって、着座位置は高め。しかもスライドを相当前寄りにしないと、前後に長いシートの座面前端が太腿の裏と干渉してペダルを踏み込みにくいのは、これがスポーツモデルだけに、なおのこと大きな不満である。

6段MTの丸いシフトノブを1速に入れてクラッチを繋ぐと、まさにその瞬間、クルマが弾けるように前に出る。1320kgの車重は絶対的には軽いというほどではないが、それでも活発さにあふれたこの動き出しだけで、テンションは一気に高まる。

従来のタイプRでは代名詞のようになっている乗り心地の悪さが、このタイプR ユーロは改善著しいというのが世間の評判である。しかし実際のところ、それは基準をどこに置くかによりそうだ。たしかにセダンのタイプRよりは随分ましである。しかし、それはレーシングカーと比べるようなもので、一般的な基準で見れば決して良いとは言えない。硬いアシが突き上げてくるのはある程度は仕方無いとして、ツラいのはそのあと地面に向かって引き戻されるような感覚を伴うこと。しかも本来フラットになってほしい高速域ほどこの傾向が強まるのだ。実は昨年、アウトバーンでこのクルマを走らせた時にも、長距離走行は腰が痛くなり、また食後すぐには走り出せず、結構ツラかった記憶がある。

回さずにはいられない

しかし痛快きわまりないパワートレインは、それでも構わずアクセルを踏み込ませてしまう。3000rpm台中盤からトルクの出てくるエンジンは5400rpmでVTECのカムが高速側に切り替わると明らかに音が変わり、そこからは一気呵成に吹け上がる。しかも最高出力を発生する7800rpmのちょっと手前あたりで、さらにもうひと伸びするのだからたまらない。これに乗ったら誰だってトップエンドまで回したいという誘惑からは、逃れられないだろう。

コーナリングは程々のペースで飛ばすぐらいなら軽快で楽しい。しかし思い切り攻めていこうとすると、やや心許なく感じられたのも事実だ。着座位置が高く、また硬いアシのわりにはロールも大きいこと、ステアリングレシオは速いがノーズの入り自体はそれほど良くないことなど、原因はひとつでは無い気がする。ヘリカルLSDの効果で脱出は素早いから、それを生かしてコーナー前半では無理しなければいいのだが、それではちょっとタイプRらしくない。また、こうした印象は雨ではさらに強まる。

日常域で楽しさが味わえ、お勧めできるクルマだとは思う。しかしほぼ同時期に同じカテゴリーに投入された「ルノー・ルーテシアRS」の、乗り込んだ瞬間からクルマを信じて全開でいける素晴らしい走り、そして快適性を味わった後では、正直ちょっと点数を下げざるを得ない。硬派なら硬派、洗練なら洗練と、もう少し明確にどちらかに振っても良かったのではないかと思う。

とは言いつつも、見た目にしろ走りにしろ際立って強い存在感には、やはり大いにひかれるところがあるのもたしか。2010台という限定台数はすでに捌けてしまい、あとは販売店在庫のみという状況のようだが、それも頷ける話だ。色々書いたが、久々に、理屈を超えて欲しいと思わせるホンダ車の登場である。

(文=島下泰久/写真=荒川正幸)

島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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