ホンダ・オデッセイ アブソルート(FF/5AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・オデッセイ アブソルート(FF/5AT) 2009.01.19 試乗記 ……350万9500円総合評価……★★★★★
第一印象では大きな変化はみられないが、中身は格段に進化した新型「オデッセイ」。スポーティモデルでその走り、使い勝手を試す。
細かな工夫で大きく変わった
新しい乗用車の姿として、セダンからミニバンへの主力の座の転換をもたらした「ホンダ・オデッセイ」も、新型で4世代目。低床低重心を謳い、タワーパーキングへも入庫可能なローフォルムで登場した先代のプラットフォームを引き続き用いるせいでもあるが、そのコンセプト自体もほぼ継承されているのを見ると、そろそろオデッセイというモデル自身、その立ち位置がしかと定まったということだろうか。
ハッキリ言って、そのコンセプトやデザインに新鮮味はあまりない。先代オーナーに「すぐに買い替えなきゃ」と思わせたり、オーナー以外の人に「今度のは良いかも」と感じさせるオーラが薄いのは事実だ。実際に乗るまでは、筆者自身も大して変わり映えしないだろうと思っていたのだが、その先入観は良い意味で裏切られた。
磨きのかった走りもそうだが、それ以上に感心させられたのが室内の居心地が格段に良くなっていることだ。先代は全高を下げたことで機動性とハンドリングを向上させるのと引き換えに、この手のミニバン、ホンダ的にはピープルムーバーにとって何より大事なはずの室内環境を犠牲にしてしまっていた。特に2列目など、ステーションワゴンの後席に乗っているようでミニバンならではの楽しさがまったく感じられなかったし、3列目も味わえるのは閉塞感だけだったと言っても過言ではない。
ところが新型は、2列目左右席の着座位置を中央に寄せたのをはじめ、細かな工夫を積み重ねることで、それらを改善。2列目でも3列目でも、ミニバンらしい開放感や寛ぎが得られるようになった。また前席も、フロントピラーのスリム化やサンバイザーの薄肉化、薄型ワイパーブレードの採用などによって、視界がすっきりクリアに。これらの効果で、どこに座っていてもクルマでの移動を楽しめるよう変身を遂げたのである。
走りは気持ち良く、機動性もあり、見映えもボックス型ミニバンに比べれば格段に生活臭は薄く、それでいて室内は快適。7人乗っても全員が満足できるに違いないオデッセイは、まさしく今の時代の乗用車の新しい姿を体現している。
惜しいのは、その中身の良さをアピールしきれていないスタイリングである。セールスは現在、目標値に届いていないというから何とももったいない話。実際に乗ってみれば非常に良くできたクルマなのに、その気にさせてくれないのだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
オデッセイは、1994年10月にデビューしたホンダの7人乗りミニバン。スライドドアを持たない乗用車ライクなスタイルが特徴で、低床・低重心・低全高がもたらす(ミニバンにしては)シャープなスタイリングや走りをセリングポイントとする。
2008年10月のフルモデルチェンジで、4代目にバトンタッチ。デザインや寸法上は大きな変化がないものの、ドライバーの視界や3列目の居住性に配慮するなどし、さらなる正常進化=熟成が図られた。
エンジンは173ps、22.6kgmを発生する2.4リッター4気筒(「M」「L」「Li」に搭載)をベースに、さらにハイチューンを施した206ps、23.7kgm(FF)の2本立て。後者は、エアロパーツでエクステリアを飾ったスポーティグレード「アブソルート」に搭載される。組み合わされるトランスミッションは、ベーシックグレードのFFモデルのみCVT、それ以外は5段ATとなる。全てのグレードに、FFと4WDがラインナップされる。
(グレード概要)
テスト車は、スポーティグレードの「アブソルート」。エンジンはベースモデルと同じ2.4リッターだが、出力はFFが206ps、23.7kgm、4WDは204ps、23.5kgmを発生する。トランスミッションは5段ATでパドルシフトが備わる。
本革巻ステアリングホイール&ATセレクトレバーや、1列目スポーツシート、エアロパーツ、18インチホイールなどが専用装備となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
パッと見には煩雑な感もあるインストルメントパネルのデザインだが、これは使い勝手を追求した結果。奥の方に置かれたナビ画面は視線移動量を少なくしているし、一方でグッと手前に鎮座しているプログレッシブコマンダーと呼ばれる「プッシュ、回転、ジョイスティック」を組み合わせた操作系も、実際に使ってみると直感的な操作が可能だ。
また、複雑に折り重なったように見える正面のメーターも、走り出してみると視認性に問題はなく、それどころか瞬間・平均燃費まで含めた多くの情報を瞬時に読み取ることができるといった具合で、見映えだけでなく実際に使ってみてどうかというところを、丹念に煮詰めていることが窺える。
カップホルダーや小物入れなどが充実しているのも嬉しい。ステアリングホイールの形状、触り心地も上々だ。現行「シビック」あたりから最近のホンダ車は、9時15分の正しい位置でもつと親指がスポークの硬い部分に触れてしまう。まったくいただけない形状を広く採用していたが、それが早期に見直されたのだ。大いに歓迎したい。
(前席)……★★★★
開口部が大きくとられたドアのおかげで乗降性は上々。アブソルート専用のスポーツシートも比較的ゆったりとしたサイズで身体を心地良く包む。サイドサポートの張り出しは大きめだが圧迫感はなく、快適に座れるシートである。
ポジション調整は電動式。調整範囲は十分で、適切な着座姿勢をとることができる。ヘッドクリアランスも十分。ポジションはそれなりに高めだが、高過ぎることはなく、適度な囲まれ感もある。それていて30%ものスリム化を実現した自慢のフロントピラーと、高さを抑えたダッシュボードによって視界は開放的だ。
総じて、単に広い、狭い、あるいは開放的、閉鎖的というのではなく、心地良さを感じられる空間に仕上がっていると言えるだろう。これまた念入りなチューニングの賜物に違いない。
(2列目シート)……★★★★
中央席を割り切り、実質的に2人掛けとすることで、左右席は十分なサイズとドアトリムとの適度な間隔を確保。前席に対してやや内寄り且つ高めの着座位置、それでいて余裕のある頭上空間、広い足元などが相まって、居心地は非常に良い。先代では全高を下げた分、着座位置も下がり視界も遮られ、ミニバンの後席に乗る楽しさがスポイルされてしまっていたが、新型はそこをしっかり修正してきた。後述するように乗り心地は実は今ひとつなのだが、少なくとも空間的には、オデッセイの特等席はここだと言っていいだろう。
とは言うものの、そこにある以上は中央席にもヘッドレストと3点式シートベルトを用意するべきだ。ちなみにヘッドレストについては、オプションの前席サイドエアバッグ&カーテンエアバッグを選んだ時だけ付いてくることになっている。
(3列目シート)……★★★★
身長177cm、残念ながら座高も低くはない筆者の場合、頭髪が天井にかすかに触れるし、2列目シートバックも間近まで迫ってはいるものの、着座姿勢自体には無理はなく、しっかり座ることができる。2列目シート下部の構造を工夫したということで、爪先が窮屈でないのが結構効いている。アームレストも大きいしカップホルダーもある。前方や側方の視界だって思ったよりずっと開けているから、一旦乗り込んでしまえば、実は居心地は悪くない。
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(荷室)……★★★★
3列目まで使った時の荷室容量は259リッター。低く広いフロアの形状に手を入れ、テールゲートの薄型化を図ることによって、先代に対して15リッターの容量アップを果たしている。
さすがに7人で旅行に行くなら1泊以上は荷造りに工夫が要るだろうが、逆に言えば、そんな状況でもない限り大きな不満に繋がることはないはず。フロアボードの下には22リッター分の小物スペースが用意されているし、ボードを外せば高さのある荷物も容易に積み込むことができる。また先代と同じく3列目をカラクリのように床下に格納すればフラットな荷室に変えることも可能だ。普段、これでも足りないということは、そうそうないだろう。
不満は、その3列目を格納した際、2列目との間にできるフロアの谷間を埋めるべく用意されたフレキシブルラゲッジボードの展開が相当に厄介なこと。これは普段は床下小物スペースのリッドとなっているもので、たしかにそれを使えば谷間を埋められると考えたところまでは良い。しかし、無理にアイディアを具体化しても、煩雑すぎて使ってもらえないとしたら意味がない。やるならやるで、もう少し煮詰めてからでもよかったのでは?
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ノーマルエンジンに対して吸排気系を見直し、更に高圧縮比化を図って最高出力206psを得た2.4リッターユニットは、単にスムーズなだけでなく回転上昇とともに心地良いサウンドとパワーが盛り上がる魅力的な特性に仕立てられている。アブソルートは、それを活かすべくトランスミッションはベースモデル(FF)のCVTではなく5段ATを採用する。絶対的なパフォーマンスにはそれほどの差はないのかもしれないが、エンジンの鼓動や息吹きを、よりダイレクトに堪能できるのが、その魅力。Dレンジでもダイレクトに反応するパドルシフトも、その歓びを増幅してくれる。
もっとも、1速、2速のローレシオ化と、5段というギア段数のおかげで、ある程度の速度以上ではシフトの楽しさをそれほど満喫できないのも事実。やはり6段以上のATが欲しいなぁ……というのが本音である。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
低速域では45%偏平の18インチタイヤが若干ゴツゴツした感じを伝えるものの、ペースが上がるにつれて、乗り心地はどんどんよくなってくる。それでも正直、2列目は始終揺すられる感があるし、3列目は真下のリアタイヤからの突き上げをダイレクトに感じるのだが、先代から継承する低重心プラットフォームの恩恵で、余計な動きが反復することはないから、結果として疲れは少ない。
しかし何より感心させられるのがフットワークの良さだ。まず素晴らしいのがステアリングフィール。微小舵角から電動パワーステアリングとは思えないほど正確、且つしっとりとした手応えが返ってきて、とにかく気持ち良い。シャシーも熟成が進められたようで、そのステアリングの操作に対する前後のバランスの良い旋回感、ぴたっと安定した姿勢コントロールなど、走りの質全般が非常に高いレベルでまとめあげられている。
しかも、それは無闇に飛ばさなくとも、交差点や高速道路の導入路などでも感じられる素直なノーズの向きの変わり方や、最小限の舵角で決まり余計な揺り戻し感などとも無縁のレーンチェンジなど、日常のふとした瞬間にも濃厚に味わうことができる。走れば走るほどに深く沁み入ってくる。そんな世界が広がっているのだ。
(写真=webCG)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2008年12月9日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)225/45R18(後)同じ
オプション装備:マルチビューカメラシステム(8万4000円)/Honda HDDインターナビシステム+プログレッシブコマンダー+6スピーカー+ETC(33万6000円)/コンフォートビューパッケージ(3万1500円)/運転席8ウェイパワーシート(5万2500円)/トリプルゾーンコントロール・フルオートエアコンディショナー(5万2500円/)Hondaスマートキーシステム(6万3000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(8)
テスト距離:203.7km
使用燃料:20.1リッター
参考燃費:10.1km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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