アウディA6アバント 3.0 TFSI クワトロ(4WD/6AT)【試乗記】
変化は狙い通りに 2009.01.14 試乗記 アウディA6アバント 3.0 TFSI クワトロ(4WD/6AT)……860.0万円
アウディのアッパーミドルクラス「A6」が、4年ぶりの世代交代。3リッタースーパーチャージドエンジンを搭載する新グレードの実力を、ワゴンモデルの「アバント」で試した。
時代に合った進化
技術の戦いにおいて、勝者には更に強くなるための素地ができ、ファンの支持もそこに集まる。今やアウディは技術志向のメーカーとして頂点に君臨し、なかでも「A6」は、プレミアムアッパーミドルクラスにおいて敵無しの感さえある。今回、4WDのクワトロシステムや直噴エンジンのFSIに代表されるアウディの看板技術はさらに磨かれ、輝きを増しての新登場となった。
アウディの主張はわかりやすく理に適っており、時代というものをちゃんとわきまえている。ボディは全長5mクラスの堂々たるサイズながら、全車四輪駆動にもかかわらず、セダンが1840kg、ワゴン版のアバントでも1900kgと重量は軽めだし、5.7mの回転半径も立派。初めて登場したときにはややギョッとさせられたものの、シングルフレームグリルの顔もすっかり見慣れて、力強さが印象に残る。アウディの個性を強烈に主張している。
エンジンは整理され、時代を反映した布陣となった。大排気量に頼ることなく、ちいさな排気量から高性能を引き出す。省燃費なこともセールスポイント。3.0TFSIは従来の3.2リッターV6より高性能で、トルクは27%増し、出力は14%増しながら、燃費は8%改善したと主張される。
このあたり、同郷のライバルたる後輪駆動のメルセデスやBMWの同クラス車よりも優れているといえる。
より質の高い「安全」
実際の走行感覚はといえば、アウディの「クワトロ」システムはスムーズの一語につき、これ以上洗練された乗り物はないだろうと思われるほどである。
クワトロも今や前輪駆動の補填ではなく、トルク配分は後輪のほうが60%と大きく、アンダーステアを大きく軽減させており、クワトロ黎明期のFF車以上に曲がりにくかった性格など、微塵も残っていない。
四駆が雨や氷雪路など低ミュー路で強いことは周知の事実ながら、それは単にスリップ輪のないことによる走破性の高さだけにとどまらない。スロットルをオン/オフしたときのステア特性の急変に対し、四駆はとにかく安定していて姿勢変化が少ない。エンジンブレーキが四輪にかかる特性により、二輪駆動車では危なっかしい姿勢制御をこともなげにこなす。
ESPなど、今ではブレーキのおかげで何とか誤魔化せる手段もあるものの、それでは速度がガックリと落ちてしまうのが普通だ。速く、安全に、自信をもって、自然にコーナーをクリアできることが、何にもまして「コイツはいいクルマだなあー」と思えるポイントだ。
このクルマで唯一不満なのは、今回もまたアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏むと、エンジンが吹けなくなってしまうことだ。ポルシェも旧型では同じことが指摘されていたけれども、最新型においてのPDK搭載とともにこの悪癖は取り払われ、むしろ左足でブレーキを踏むことを奨励している発進項目もある。アウディもそろそろ現実に目を向ける時期ではないだろうか。
仕上がりは優等生的
さて、現在ラインナップする2.8と3.0を比べてみたとき、あなたがそれほど動力性能を重視しないユーザーならば、絶対的な軽快さやコストパフォーマンスを考え2.8を薦めざるをえない。
しかし、220psと290psのパワー差と、スーパーチャージャーのパワーフィールに目を向ければ、なるほど、今回のモデルチェンジの目玉である後者の性能は魅力的だ。
アウディはターボによる過給エンジンの経験も豊富だが、パワー/トルクの絶対値よりもフィーリングを重視して、また、より微細な燃費効率を得るべくスーパーチャージャーを採用した。
これまでのターボチューンは、多めの過給でフラットなトルクを得ており、レスポンスに不満こそなかったものの、あまりにもフラットなゆえにパワーフィールとしては面白味に欠けた。また、ターボはエンジン回転と過給圧の関係がいつもリニアではないため、そこをならす意味でも、必要以上に過給しておいてオーバーな部分をカットするという、やや無駄のある手法を採らざるをえなかった。
その点スーパーチャージャーならば、エンジン回転と過給圧の関係をリニアなものに近づけやすいし、容量を適正に選べばエネルギー効率の点でも都合がよい。盛り上がり感のあるパワーフィールも作りだせる。
結果として、このパワーユニットはその狙いどおりに仕上がっており、いうなれば大排気量NAエンジンの特性に近い優等生的な解答が得られている。メカで回すスーパーチャージャーの作動音も、今の技術によって影を潜めている。
このエンジンに、なにか欠点があるとすれば? 強いて挙げるなら、洗練され過ぎた感があり少々刺激が欲しくなってしまうといったら、イジワルだろうか。もっと上をみるならば、V10エンジンを搭載する、はるかにパワフルな「S6」や「RS6」も控えている。そういった選択肢があるというのも、また悩ましい限りである。
(文=笹目二朗/写真=菊池貴之)

笹目 二朗
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。
































