BMW 320dブルーパフォーマンス ツーリング スポーツ/320i xDrive ラグジュアリー【試乗記】
遅れてきた主役 2012.11.26 試乗記 BMW 320dブルーパフォーマンス ツーリング スポーツ(FR/8AT)/320i xDrive ラグジュアリー(4WD/8AT)……619万1000円/598万8000円
かつてないほど大規模なファミリーになりつつある「BMW 3シリーズ」。セダンにワゴン、ガソリンにディーゼルにハイブリッド、さらにはFRに4WD――さて、ベストバイはどれなのだろうか。
ラインナップに死角なし
BMWはできる限りICE(内燃機関)を貫こうとする自動車メーカーだと思っていた。社名に発動機と付く会社だし、これまでつくってきたエンジンはどれもスイートだったから、同じように考えた人は少なくないはずだ。
それでも、いよいよICEだけで時代を乗り切るのはキツいとなった際、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、EV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車)へ向かうのではなく(もちろん研究はしていただろうが)、FCEV同様に水素は用いても、発電のためではなくICEの燃料として使う姿を見て、多くのクルマ好きがバイエルン発動機を応援したはずだ。
ところが、別にこっそり増やしたわけではないだろうが、BMWはいつの間にかICEあり、HVあり、EVも量産しようと思えばできますよという多種多様なソリューションをもつメーカーになっていた。そりゃBMWはエンジンを組み上げる職人集団ではなく、利潤を追求する企業だから、よそに負けぬよう効率よく(自動車の)効率を上げるのは当然だ。BMW=エンジンというイメージが薄れる積極展開に一抹の寂しさはあるが、同時にこの会社がつくる次世代車はどうなんだ? と興味もわいてくる。
そう思って先日「アクティブハイブリッド3」に乗ったらあなた、読んでいただければわかるように、組み合わせられるエンジンの魅力すら増幅させるパーフェクトな出来栄えだった(アクティブハイブリッド3の試乗記はこちら)。
さらに、BMWはエミッションが世界有数に厳しい日本市場にもディーゼル車のラインナップを増やす努力を続けている。「3シリーズ」にもディーゼルが追加された。日本で同一車種にガソリン、ディーゼル、HVの3種の動力源を用意するのは(日本車を含めても)「3シリーズ」と「5シリーズ」だけ。すべての組み合わせが選べるわけではないものの、3シリーズは、ガソリンありディーゼルありHVあり、MTありATあり、それぞれに5つのトリムあり、そしてワゴンありと、どっからでもかかってこい! と言わんばかりだ。
来年にはクーペも出る。カブリオレも出るだろう。当然、Mも出る。Mのパワートレインはどう変わるのか? 驚かせてほしい。
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ワゴンなら迷わず「320d」
「320dブルーパフォーマンス ツーリング スポーツ」というのが、今回テストしたモデルの名前。「ブルーパフォーマンス」はメルセデスの「ブルーテック」に相当するクリーンディーゼル搭載車の証しだ。
2リッター4気筒の直噴ターボは、最高出力184ps/4000rpm、最大トルク38.7kgm/1750-2750rpmを発生する。マツダが「アテンザ」(や「CX-5」)に搭載するSKYACTIV-Dエンジンは、同175ps/4500rpm、同42.8kgm/2000rpmと、プラス200ccの余裕もあってさらにトルキーなスペックを誇るが、まぁ最新の2リッター4気筒のディーゼルターボエンジンはだいたい180ps、40kgm前後の実力を有するということ。
トルクが40kgm近くあれば、そりゃ速い。わずか1750rpmから最大トルクを発生するので、低回転からグイグイくる。近頃はガソリンでも直噴ターボだと最大トルクは同じくらい低い位置で生み出すが、発生する絶対値が違う。アクセルをグイッと踏んだら4リッター級のV8ガソリンエンジンと同程度の力を発生するわけで、それを車重1620kgの車体に載せているのだから、推して知るべし。
6段時代から変速時のスムーズさに優れていたATは、8段化によってステップ比が小さくなり、余計にスムーズに。加速がシームレスなので、いつ変わっているのか注意していないと気付かない。振動も騒音も巧妙に抑えられていて、ディーゼルのデメリットはないに等しい。価格は511万円。多少の装備の違いはあれど、ガソリンの「328iツーリング スポーツ」が607万円だからディーゼルは約100万円安で買える。動力性能は遜色ないどころか、少なくとも体感上は上回る。もちろん燃費はいいし、燃料代も安い。ツーリングの場合、セダンと違って「320i」や「アクティブハイブリッド3」は設定されず、エンジンはガソリンの328iかディーゼルの320dから選ぶことになるのだが、買うならもう絶対に320dだ。
なお、新型のツーリングはまっとうなパッケージで、リアシートまではセダンとまったく同じように使え、当然ながらラゲッジ容量はセダンを上回る。ツーリングはセダンよりも70kg重いが、ディーゼルの太いトルクで帳消しになるし、セダンとの挙動の違いはわからないレベルだ。セダンとの価格差は21万円だから迷ったらワゴンを買っていいのでは? ともあれ、3シリーズはとにかくディーゼルを薦めたい。
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「xDrive」で安心して駆けぬける歓び
秋の3シリーズ試乗祭りの最後は、4WDの「320i xDrive ラグジュアリー」。320iのドライブトレインに前輪駆動を加えたモデルだ。通常はフロントに40%、リアに60%のトルク配分で走行し、状況に応じて前後のトルク配分を変化させる。
320iに比べ、重量増が70kg程度に抑えられていることもあって、一般道のドライ路面でFRか4WDかを見極めるのは難しい。くねくねと曲がりくねった乙女峠をスイスイ走ることができた。4WDだからといって何も我慢するところはなく、エコカー減税も適用されるし、燃費もFRの320iに比べ1km/リッター程度しか落ちていないので、寒い地方に住む方、寒い地方へよく行く方にとっては安心感の高い3シリーズとして魅力的に映るだろう。
豊富なラインナップの3シリーズ。エンジニアリング面で最も感心したのは怒濤(どとう)のパワーと直6エンジンのスムーズネスを味わえるアクティブハイブリッド3だが、ベストバイはその8割程度のパワーを約230万円安く得られる320dだと思う。だが、3シリーズの一番の魅力はラインナップの豊富さかもしれない。
(文=塩見智/写真=小林俊樹)
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塩見 智
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