ルノー・トゥインゴGT(FF/5MT)【試乗記】
いまや貴重な選択肢 2008.09.05 試乗記 ルノー・トゥインゴGT(FF/5MT)14年ぶりにモデルチェンジしたルノーのコンパクト、「トゥインゴ」。
発売を目前に、日本の道で100psのホットバージョンを試した。
生まれ変わってもフランス車
発売前ということもあり、現時点でこのクルマに関する詳細な情報は知らされていない。が、とにかく日本で試乗できたのでフィーリング主体のインプレッションをお届けしましょう。
1993年に登場した初代のトゥインゴは、デザイナーのパトリック・ルケモンが頭角をあらわした初期作品であり、個性的で可愛らしくもあった。その後14年も基本フォルムを変えず長生きした実績のとおり、魅力はいまだ衰えていない。
今度の新型トゥインゴは、2007年のジュネーブショーに登場、同年6月に本国で発売。1年以上を経て、ようやく日本でも販売される見込みがついたようだ。実車に接してみると、最初は日本の軽自動車のようにも感じられたが、乗ってみるとやはりルノーでありフランス車であることに安心させられる。
個性的だった“酔眼”は、目元パッチリの現代的な化粧がほどこされ、衣装も立派になった。でもそれは、インターナショナル感覚で一般化したと受けとめられるかもしれない。ドアハンドルには旧型で特徴的だった仕組みが継承された。レバーを指で引き上げて簡単に開けられる。
試乗車の右ハンドル仕様は、日本ではなく英国の仕様。ウィンカーレバーは左、ワイパーは右にくる。ホーンスイッチが左レバー先端に固定されているのは朗報だ。ステアリングホイールのパッド上など、動いてしまう部分に無いことは好ましい。これも、元をただせばフランス車の古典的流儀のひとつである。
同じくフランス車のよさを知らしめるのはシート。一見平板に見える座面と背もたれの関係も、座ってみればクッションはソフトで面圧の配分は絶妙。腰はすっぽりと納まって柔らかく固定される。言うまでもなく、背もたれへの面圧配分も十分だ。初期のメガーヌよりも良好かもしれない。この日、たまたま某国産ミニバンのテストも並行して行ったが、もうそのミニバンのシートには座りたくなくなってしまったくらいだ。
エンジンは“北島康介型”
3つのペダルはGT専用で、もちろん5MTと組み合わされる。中央、Bペダルのハイトはやや高め。ヒール&トゥの踏み始めにちょっと意識させられるが、深く踏み込んで行けばまずまず。器用な人なら自分で調整できる範囲だろう。
軽いクラッチを踏んで、ややストロークの大きなギアレバーを操れば、1149ccしかない小排気量エンジンでも活発に走らせることができる。3ペダルは“マニュアルモード付きのAT”とは異なる。ATはあくまでもスムーズに繋げることに腐心するけれども、回転差のあるものを繋げる時のショックを自分の足で調整するのもまた楽しみのひとつ。多少の差はあれ、後方にのけぞるくらいの勢いで高回転域でカンカン繋いでいけば、活気が湧いてくる。
クラッチの断続点は加速Gの開始点ともいえる。ATのように満遍なくスムーズに盛り上がるよりも、段階的に高まるエンジンパワーを直接味わえるのはイイ。
100ps/5500rpm と14.8kgm/3000rpm の絶対値は、今ではさほど目ざましいとは言えないものの、1トンほどのボディを意のままに加速させるに不足はない。現代のターボ技術は極端な盛り上がりのない平坦なトルク特性を持つものも多いが、このターボは加速度の高まりが一直線ではなく二次曲線的で、グンと高まる明確な“山”を持つタイプ。
とはいえ、ドカンとトルクステアを発生し手に負えなくなるという絶対値はない。いわば、シュン、シュンと要領よく掻き進む北島康介型といえる。エンジンパワーの勢いは、あたかも自分自身に備わる力と錯覚する。この右足にこめる力と自分の意思がシンクロするときの楽しさは、ATでは得られないMTならではの快感といえる。
5速のギアレシオはステップアップ比が1.82-1.47-1.35-1.30と特別クロースしてはいないし、エンジン許容回転もイエローが6000rpmと極端に伸びるわけではない。しかし、普段の実用走行でもちゃんと上まで回して使える現実的な設定だ。
5ドアが欲しい!
フランス車ならではの美点は、直進性と乗り心地のよさだ。多少ラフな路面でもタイヤの上下動によるトーやキャンバー変化が少ないのは、アーム長がしっかりとられている証拠。ボトミング的な大入力に対しても、ストロークが確保され、最終的に受け止めるバンプラバーの形状などもよく考えられている。
ましてや入力の小さい良好な路面では、ピターッとフラットな姿勢を保つ。これは2360mmとホイールベースの短い小型車では望外の仕上がりといえる。GTという名前から想像される乗り心地面での荒さは、一切ない。
185/55R15という大きめサイズのタイヤでもバネ下が不当にバタバタ暴れる気配がないのは、サスペンション剛性が高い証拠だ。アシは全体的にガッシリと強固。「小さなクルマほどコキ使われる」という実態に鑑み、長期的耐久性能もしっかりと確保されているようだ。
旧型からの懸案事項は3ドアゆえのドアの長さ。「小さなクルマ=狭い場所で使い勝手がいい」という点から5ドア待望論も出ていたが、新型も5ドアは導入予定がないとのこと。
ここで古き良きフランス車の伝統を持ち出すならば、「ルノー・キャトル」や「シトロエン2CV」の例もある。小さいゆえに小さなドアが便利だということを思い出すべきだろう。今度の新型トゥインゴは、5ドアにしてもスタイリングが成り立つだろうし、先代より可能性は高いはずだ。
ともあれ、キビキビ走る欧州製小型車のMT仕様を求めるユーザーにとっては、数少ない選択肢のひとつ。価格は240万円前後とのことである。
(文=笹目二朗/写真=菊池貴之)

笹目 二朗
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