BMW M3セダン(FR/6MT)【試乗記】
長く愛して 2008.07.01 試乗記 BMW M3セダン(FR/6MT)……1045万2000円
胸をはってハイパフォーマンスカーに乗るのがはばかられる昨今。「M3セダン」に乗りながら、この楽しさを味わい続ける方法を考えた。
高性能車を悪者にするな
あまり認めたくはないけれど、高性能車に逆風が吹いていることは疑いようがない。でも優れたクルマに接すると、いい音楽を聴いた時と同じように幸せな気持ちになるのもまた事実。
「M3セダン」に乗りながら、柄にもなく高性能とエネルギー、環境問題の両立が図れないものか、なんてことを考えた。
このM3セダンは、2007年10月に日本へ導入された「M3クーペ」に続いて今春から日本での販売が始まっている。ちなみに、M3のセダン版が日本に正規輸入されるのは今回が初めて。
クーペとの違いは、クーペがルーフの素材にカーボンを採用していることと、ドアの枚数。それ以外は、4リッターV8エンジンのスペックからインテリアにいたるまで同じ仕立てである。
なお、試乗車はコンベンショナルな6MT仕様だったが、テスト日の数日後に、M3クーペ/セダンともに、2ペダルMTの「M DCTドライブロジック」(ダブル・クラッチ・トランスミッション)搭載モデルが追加された。
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ゆっくり走っても楽しい
重くもなければ軽くもない、適度な踏み応えのクラッチを踏んでスターターボタンを押すと、ややバラついた4リッターV8のアイドリングが始まる。これまた適度な手応えのシフトレバーを1速に入れる。クラッチやシフトレバーの操作フィーリングが抜群に精緻で滑らか、足の裏や手のひらの感触にほれぼれする。
420psの最高出力を8300rpmで発生する高回転型エンジンでありながら低回転域でのトルクも充分で、アイドリング状態でクラッチをミートしてもスムーズに発進する。
エンジンが暖まるまでそろそろと走っていると、水温計の針が動く。水温と油温によって、タコメーターのイエローゾーン、レッドゾーンの回転数が変化するのは面白い仕組みだ。
街なかをゆっくり流してわかるのは、いいクルマはスピードを上げなくても楽しいということ。前述したように操作系は繊細な手応えだし、交差点を曲がるくらいでもしなやかな身のこなしは実感できる。ステアリングフィールと乗り心地はどちらも抜群だ。
市街地では、このクルマの“滋味深さ”を味わうことができる。
マグロみたいなエンジン
各部が暖まったところで首都高速の入り口を駆け上がる。エンジンは、4500-5000rpm付近からその表情を変える。低い回転域ではジェントルで柔らかい印象だったのに、中回転域から上ではカキーンという金属的な音とともにシャープに回転を上げるのだ。1台の中に上質と硬質が共存する、1粒で2度おいしいエンジンだ。
高速道路で直線番長を楽しむのもアリだけど、このクルマが真価を発揮するのは中速コーナーの連続だろう。
V8エンジンは、低回転域では粘り強さ、中回転域ではパンチ力、そして高回転域ではレーシィな雰囲気と、回転域によって異なる味わいを堪能できる。いいマグロは赤身、中トロ、大トロとどこを食べても美味しいのに似ている。
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「KY」と後ろ指さされないために
その極上V8を右足で操りながら、適度なロールとともにコーナーをクリアする。カーッと興奮することもできるし、イイモノを操っているという幸せをじわじわと噛みしめることもできる。いろんな楽しみ方ができる、なんと贅沢なクルマであることか。
試乗を終えてクルマを返却する時に脳裏をよぎったのは、なんとか「KY」とか言われずにこのパフォーマンスを楽しむ術はないものか、ということ。
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たとえば、20年間乗り続けることを誓ってこのクルマを楽しむというのはどうでしょう? エコカーを頻繁に乗り換えるよりも、1台のクルマに乗り続けるほうがトータルでみれば省資源だ。
このM3セダンは、20年ぐらい愛せそうな魅力に満ちている。しかもドアが4枚あるから、家族の増減などライフスタイルの変化にも柔軟に対応できると思うのだ。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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