スバル・エクシーガ2.0i-L(FF/4AT)/2.0GT(4WD/5AT)【試乗速報】
見た目で決めるな! 2008.06.27 試乗記 スバル・エクシーガ2.0i-L(FF/4AT)/2.0GT(4WD/5AT)……304万5000円/342万3000円
新型7シーター「エクシーガ」がデビューした。ミニバン花盛りの日本にスバルが放つ、ひさびさの多人数乗用車は、どんな乗り味をもたらすのか?
食べすぎ(?)レガシィ
水平対向4気筒エンジンを積んだミニバンといえば、真っ先に思い出すのが「ランチア・メガガンマ」だ。
なにそれ?という人は「イタルデザイン・ジウジアーロ」のウェブサイトをごらんいただきたい。「マイルストーン(Milestones)」のコーナーの最初に出てくる、1978年生まれのこのコンセプトカーこそ、いま日本の道を埋め尽くしている、すべてのミニバンのルーツなのである。
ベースの「ランチア・ガンマ」はフラット4を縦置きした前輪駆動車。そのパワートレインを流用してメガガンマは作られた。だから、スバルがミニバンを出すという噂を聞いた瞬間から、脳裏にはメガガンマの姿が現れて消えることがなかった。でも試乗会場に着いた僕を迎えてくれたのは、ゴハンを食べすぎたレガシィツーリングワゴンのようなクルマだった。
全長×全幅×全高=4740×1775×1660mmとレガシィよりやや大きなボディは、エンジンルームとキャビンが明確に独立したパッケージングから、グリルやサイドウィンドウなどのディテールまで、徹底してレガシィ流。エクシーガ改め「レガシィ7(セブン)」とでも呼んだほうが正しいかもしれない。
でも、レガシィの呪縛から解放してあげたほうが、もっとスタイリッシュにできたんじゃないだろうか。
そんなことを思いつつ乗り込んだ前席は、インストゥルメントパネルの造形だけでなく、着座位置まで同社の「インプレッサ」や「フォレスター」に近い。ATのセレクターレバーはフロアから生えているから、3列シート車という感じがしない。なお、シート地はモケットとオプションのレザーが用意され、前者のほうがカラダになじんで心地よかった。
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非凡な7シーター
驚きだったのは、2列目と3列目の広さ。身長170cmの僕ならきっちり7人座れる。前席よりかなり高い位置に座る2列目は、シートをいちばん後ろにスライドすれば、足が組めるほど。大きさや角度も文句なしだ。
この状態でも3列目のヒザは前席にぶつからず、頭がルーフに触れることもない。たしかに座り心地は硬めだけれど、サイズはおとなでも不満なし。着座位置は2列目以上に高めだから見晴らしも上々。一般的なミニバン以上の高効率パッケージングである。
エンジンは2リッターの自然吸気とターボ。同等のサイズを持つ他社のミニバンが、オーバー2リッターを用意するのとは対照的だ。
自然吸気ユニットは4段AT。でも4段なりに練られていて、シフトショックは皆無だし、1名乗車であればFFで1.5トン弱のボディを思いどおりに加速させてくれた。エンジン音はそれなりに耳に届くけれど、スバルファンじゃなくてもBGMと感じられる音だろう。
それ以上に印象的だったのは乗り心地。レガシィより80mm長い2750mmのホイールベースに、インプレッサで定評のあるマクファーソン・ストラット/ダブルウィッシュボーンの足を融合したシャシーは、しっとりしていてフラット。自分が体験した7シーターではベスト3に入るほど快適だった。
そのぶんコーナーでの身のこなしはおっとりしているが、インプレッサでは鈍いと感じても、エクシーガなら性格にふさわしいと好意的にとれる。しなやかに動く足のおかげでロードホールディングは抜群。
背の高さを意識させないのは、水平対向エンジンゆえの重心の低さのおかげか。FFでもコーナー立ち上がりのトラクションに不満はなく、高速道路での直進安定性はすばらしい。どこをとっても文句のつけようがない走りだ。
ターボは加速が魅力だけれど……
続いて乗ったターボ4WDのGTは、レガシィやインプレッサでおなじみの2リッターターボユニットを225psにデチューンしてある。
トランスミッションは5段ATのみ。それでも1650kg(オプション込み)のボディを豪快に加速させる。こんなダッシュ、他の7シーターじゃ味わえない。それでいてターボの立ち上がりは2500rpmあたりからと、スバルとしては低めだから、扱いやすい。GTに標準装備となるSI-DRIVEダイヤルで、エンジンレスポンスがマイルドになる「I」モードを選んでも、レガシィのようなじれったさは感じなかった。
足はこのハイパワーに対応して硬めの仕上がり。とはいえ、街なかでも鋭いショックを巧みに吸収し、高速道路では姿勢をフラットに保ってくれた。
ただしハンドリングはかなり安定志向。イニシャルで45:55の前後トルク配分を自在に変化させるVTD-4WDシステムを用いるのに、同じメカを使うレガシィの2.0GTと違い、早い段階からフロントが外へ膨らもうとする。ステアリングは自然吸気よりクイックだが、その後背の高いボディがグラッとくるのも気になった。
設計者が口にしていたように、走りのバランスは“ターボなし”のほうが上。自然吸気モデルの乗り心地とハンドリングは、マジですばらしい。パッケージングもいい。
……だからこそ、このカタチが気になってしかたがない。ここは、ジウジアーロさんに一筆振るっていただいてはいかがでしょう?
(文=森口将之/写真=峰昌宏)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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