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【スペック】全長×全幅×全高=5150×1875×1475mm/ホイールベース=3090mm/車重=2380kg/駆動方式=4WD/5リッターV8DOHC32バルブ(394ps/6400rpm、53.0kgm/4000rpm)、交流同期電動機(224ps、 30.6kgm)/価格=1510万円(テスト車=同じ)

レクサスLS600hL“後席セパレートシートpackage”(4WD/CVT)【ブリーフテスト】

レクサスLS600hL“後席セパレートシートpackage”(4WD/CVT) 2007.08.15 試乗記 森口 将之 ……1510.0万円
総合評価……★★★★
レクサスのフラッグシップ「LS600h」のロングバージョンに試乗。後席にマッサージ機能が付いた上級グレードの走りと乗り心地を試す。
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大都市を移動する快感

「レクサスLS」が増えている。東京に限った話かもしれないが、発売から1年足らずの、700万円以上の高価格車としては、驚異的な確率で遭遇する。
しかもひと目で欧州のライバルと見分けがつく。上品で繊細なスタイリングにもよるが、なにより塗装のツヤが全然違う。昨2006年オーストリアで最初に乗ったときは、環境音楽的な存在だと思ったが、日本で外野から観察すると、独自の価値観で統一されたクルマだと理解できる。外から見たときの存在感。これはプレミアムブランドにとって大事だ。

そんなLSの真打ちハイブリッドは、トラムのように街を進み、のぞみのように高速を駆ける。つまり電車っぽいわけで、操縦の快感は希薄だが、移動の快感はある。とにかく静かでなめらか。環境への負荷を抑えていることも、心地よさとして伝わってくる。とくに大都市内を移動する状況では、世界一の高級車じゃないかと思った。

注文がないわけじゃない。大きな入力に弱い乗り心地はトヨタの悪しき伝統そのままだし、生産台数世界一当確の自動車メーカーとしてはハイブリッド以外にも世界を牽引する部分が欲しい。ただあの都市移動の快感は、ライバルでは味わえない。強面高速主義のドイツ車基準でプレミアムブランドを語ることは今後も正しいのか。そこまで考えさせる新種の高級車だった。

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【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
「レクサスLS600h」は、レクサスのフラッグシップ「LS」にハイブリッドシステムを搭載した最高級モデル。2006年ニューヨークショーでのワールドプレミアを経て、2007年5月に発売された。低燃費、低エミッション、低振動、低騒音など、現代のラクシャリーカーに求められる要素が詰め込まれ、トヨタ渾身の一台。

394ps、53.0kgmを発揮する5リッターV8エンジンに、224ps、30.6kgmの出力を持つモーターを組み合わせて搭載することで、システム出力445psを発生。カタログ上の燃費は12.2km/リッター(10・15モード)と記される。エンジンはLS460、モーターはGS450hのコンポーネンツを利用したものだが、それぞれLS600hに搭載されるにあたってチューニングが施された。
LS460がFR+8ATを採用するのに対して、こちらは機械式トルセンLSDによって駆動力配分を行うフルタイムAWDにCVTを組み合わせる。
インテリアはほぼLS460に準じるが、外観においては、量産車世界初採用となるLEDのプロジェクターランプが大きな特徴となっている。

(グレード概要)
テスト車「LS600hL“後席セパレートシートpackage”」は、LS600hのホイールベースを120mmストレッチしたショウファモデル「LS600hL」に、大型リアセンターコンソールや、オットマン付きの独立したリアパワーシートを追加、後席居住性を重視したモデル。ノーマルのLS600hLから180万円アップとなる。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★
LS600h/hLのインパネは本革張りとなる。継ぎ目の多さが高級感をそぐ印象もあるが、レザーの質感は高く、漆器を思わせる黒の深さが印象的だ。造形はLS460と同じ。世界一のメーカーが作る最高峰ハイブリッドだからこそ、新しい提案を望みたい。すくなくともシフトレバーがフロアにある必要はないと思うし、モーター出力計はただエンジン回転計の脇に置くのではなく、クロノグラフみたいに2つを融合させる手もあるはず。

メーターといえば、中央に表示されるエネルギーモニターは、ナビのモニターに映し出されるそれを含めて、プリウスあたりと同じ書体や絵柄で子供っぽい。ナビの地図表示もそうだが、プレミアムブランドにふさわしい雰囲気が欲しいところ。こういう部分はドイツ車よりも、イギリスやイタリアの高級車を参考にしたほうがいい。

(前席)……★★★★★
ロングホイールベースのLS600hLは、セミアニリンレザーと呼ばれる高級皮革をシートに使用している。コシの強さとしなやかさを合わせ持つ、と書くと麺類の評論みたいだが、そんな感触で、自分が体験したレザーでは心地いい部類に入る。座り心地も、表面はそんなに硬くはなく、腰を下ろすと厚みを感じつつ、芯はしっかりしているという、理想に近いものだった。150km程度を走ったくらいでは、不具合は何も感じなかった。

(後席)……★★★★★
試乗したLS600hLは“後席セパレートシートパッケージ”だった。高いセンターコンソールで仕切られた2人かけである。シートの形状は自分の体型にはあまりフィットせず、座面は硬く、サポート性能もいまひとつだった。しかし足元は楽に足が組めるほど広大で、左シートにつくリクライニングとオットマンを使えば、エアラインのビジネスクラスを思わせる安楽姿勢が取れる。

トドメはマッサージ機能。これでイチコロになってしまった。温泉施設などに置いてあるものとは比較にならないほど高度。これだけでLS600hLを買う人がいても不思議ではないし、一分一秒を争うエグゼクティブに歓迎されるだろう。こういう装備に眉をしかめる人もいるだろうが、自分はアクティブサスペンションみたいなものと考える。乗車中の疲労を軽減するという目的は同じなのだから。付け加えれば、乗り心地そのものも数あるセダンの中では、フロントとの差がかなり小さかった。

(荷室)……★★
LS600h/hLの車体まわりでいちばんの驚きはここかもしれない。奥行きがトランクリッドの開口部の少し先で終わっているからだ。幅は広いのでゴルフバッグは横置きできるし、日本人はさほど積載性能を重視しないので問題にならないのかもしれない。しかし同じハイブリッドのプリウスがバッテリーの小型化でハッチバックボディを手にしているのを知っているだけに、釈然としないパッケージングである。


レクサスLS600hL“後席セパレートシートpackage”(4WD/CVT)【ブリーフテスト】の画像 拡大
レクサスLS600hL“後席セパレートシートpackage”(4WD/CVT)【ブリーフテスト】の画像 拡大
画像をクリックすると、前後シートがリクライニングするさまが見られます。
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【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
ハイパワー・ハイブリッド(と勝手に呼ぶことにする)は同じレクサスのGSや「トヨタ・ハリアー」で体験しているので、その加速を異次元感覚とは思わなかった。しかしLS600h/hLがそれらと違うのは、圧倒的な静かさとなめらかさだ。発進からしばらくモーターのみで加速していく様子は、富山などを走っている新世代トラムを思わせる。その後はモーター依存度こそ高くないようだが、エンジンの回転を上げずに速度だけを上げていく感触はハイブリッドならでは。スピード感がないのはこれが理由かもしれないが、エンジンだけでも5リッターとLS460より大きいわけで、実際の加速は強烈と呼べるレベルにある。

フルスロットルではさすがにエンジン音が響くが、それは快音ではない。逆に静かな山の中をゆっくり流すシーンのほうが、鳥のさえずりや川のせせらぎが聞こえて気持ちいい。後述の乗り心地もそうだが、ドイツ車的な走り方より、日本車的な走り方のほうが良さを引き出せる。走行中のエンジン始動は通常はショックなく行われるが、停車中に電圧が下がって起動するときだけは、かなりの衝撃が伝わってくる。また雨の日は、リアタイヤの水跳ね音が気になった。

(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地は「LS460」からさほど進化していない。サスペンションにストローク感がなく、フロア剛性が不足気味で、大きめのショックを受けるたびに小刻みに床が震える。基礎体力のなさはスポーツの国際試合でも見られる日本の個性ではあるが、都市内でも少しペースを上げて橋を通過すると露になるのだから、改良してほしい。3段階のモードをコンフォートにすると当たりはソフトになるが、ショックを受けたあとにブルブル振動が残る。スポーツモードは逆に小刻みな上下動が気になる。つまりノーマルがいちばん快適だった。

高速での直進安定性は文句なし。ただし電動パワーステアリングは速度を上げると、これもトヨタ車にありがちだが、中心付近が重くて鈍く、その領域を乗り越えるとスコッと切れるので、直進をキープするのに気を遣う。ハンドリングはフルタイム4WDとは思えない素直さで、ブレーキは電子油圧制御であることを感じさせないなど、裏方の複雑さを表に出さず、自然な感触を伝えてくるあたり、いい意味で実に日本的である。

(写真=峰昌宏)

【テストデータ】

報告者:森口将之
テスト日:2007年6月6日から7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:4211km
タイヤ:(前)235/50R18(後)同じ(いずれも、ダンロップ SP SPORT MAXX A1)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(8)
テスト距離:356.8km
使用燃料:45.8リッター
参考燃費:7.8km/リッター

森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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