レクサスLS460のライバル車はコレ【ライバル車はコレ】
フラッグシップ対決 2007.05.18 試乗記 レクサスLS460のライバル車はコレFセグメントにおいて名実共に他を圧倒している「メルセデス・ベンツ Sクラス」と「BMW 7シリーズ」。そしてその牙城を切り崩すべく投入された「レクサスLS」。“レクサスの提案”はいかに?
レクサスLS460(770.0万円〜965.0万円)
■トヨタの意気込み
日本きってのプレミアム・ブランド「レクサス」。そのラインナップにあって最高峰に位置するモデルが、2006年秋にリリースされた「LS」。ご存知のように、日本では「セルシオ」と称したモデルを、アメリカを初めとする諸外国では以前から「レクサスLS」としてセールスしてきた。そういう意味で最新モデルは、1989年の初代モデル誕生以降、“4代目のLS”ともいえる。
そんな新しいLS460は、“すべてを一新する!”という意気込みの下、デザインイメージを大きくチェンジした。ボディ/シャシーからパワートレーンに至るまで、オールニューのアイテムを採用。コストダウンの嵐が吹き荒れ、可能な限り“手持ちの駒”を組み合わせるというクルマづくりが一般化するなか、こうした事実からもこのモデルにかけるトヨタの意気込みが感じられる。
メルセデス・ベンツやBMWといったコンペティターに対する競争力を引き上げるべく、排気量はそれまでの4.3リッターから4.6リッターへとアップ。最高385psを発するオール新開発のV8DOHCエンジンと組み合わされるのは、やはり新規開発にして世界初の8段AT。いまのところその出力によって駆動されるのは後輪のみだが、ハイブリッドモデルである600h用に前輪駆動用トランスファが開発された現在、「ガソリンモデルにも全輪駆動モデルが登場するのは時間の問題」と考えるのが自然だろう。
姿勢制御システム「VDIM」との統合制御を行うアクティブ・ステアリング・メカを標準採用するほか、フロント側はもとよりリア側も監視するプリクラッシュ・セーフティ・システムを設定。先進装備で他の追随を許さないのも、新しいLSの大きな特徴になる。
【ライバル車その1】メルセデス・ベンツSクラス(996.0万円〜1930.0万円)
■インテリアデザインと走行性能で勝負
こうしたカテゴリーのモデルとしては、常識はずれとも思えるボリューム感溢れるフェンダーフレアを採用。まずは極めて大胆なエクステリア・デザインで走りのダイナミズムをアピールするのが現行「メルセデス・ベンツSクラス」。ここまで躍動感の強いスタイリングを採用したのは、多分にBMWを意識してのことと考えられる。
ルックスに限らず走りのテイストなど、どのモデルのどの部分を見ても随所に“BMWコンプレックス”が滲み出るのが、実はこのところのメルセデスのクルマづくりでもあるのだ。
今度のレクサスLSは、セルシオ時代のちょっと力感に欠けるイメージとは決別し、柔と剛を織り交ぜたオリジナリティの高い造形で頑張る。が、それでも、“脂ぎる”といえるほどエネルギッシュなルックスのSクラスと並べられると、まだ多少線が細い感じも受ける。「日本ならではのしとやかさのあらわれ」と好意的に解釈をすべきだろうか?
しかし、さらにSクラスがLSに差を付けたと思えるのはインテリアのデザイン。ステアリングホイールを握る手の指先を伸ばすだけでシフト操作が行える「ダイレクトセレクト」や、ジョイスティック感覚でマルチメディアを操作出来る「COMMANDシステム」などの新しい操作系を提案。夜間にはムーディな間接照明が周囲のトリムを淡く照らすSクラスのインテリア。見慣れた印象で安心感は漂うものの、新奇性にはまったく欠けるLSのそれに比べると随分スッキリ、そしてやはり新鮮に映る。
それゆえ(?)、使いやすさという点ではまだ課題を残すものの、LSの、いかにも保守的で、5年先にはかなり古臭くなってしまいそうなインテリアと比較すれば、ずっと先進的で魅力的に見えるという意見は自分だけのものではないはずだ。
安全・快適装備面での各種先進アイテムの採用という点ではLSに先行を許した感はあるものの、走りの重厚感や高速走行時の安心感――なかでもハンドリングの正確性――ではまだ一歩前を行く仕上がりをみせる。静粛性が、この分野では定評あるLSに勝るとも劣らないのも、現行Sクラスの売り物だ。
【ライバル車その2】BMW7シリーズ(915.0万円〜1745.0万円)
■BMWブランドのなせる技
Sクラスに登場願ったからにはやっぱり外せないのが「BMW7シリーズ」。現在売られているのはすでに大規模なマイナーチェンジを経験し、いかにもアクの強かったフロントマスクやテールエンドのデザインをややオーソドックスな方向へと“戻した”モデルだ。
そもそも、4代目となる7シリーズがデビューしたのは2001年。まだニューモデルの香りが漂うLSやSクラスに較べると、そろそろモデルライフの終盤に近づきつつあるというハンディキャップを背負った感が否めない。
とはいえ、Sクラス同様、インテリアの雰囲気は今でもLSよりこちらの方がモダンで新鮮。センターパネルを中心に多数のスイッチ類が雑然と並ぶLSと比較して、7シリーズのダッシュボード周りはずっとシンプル。そうした整理整頓されたイメージが新しさにつながってもいる。7シリーズのようなフラッグシップでは、モデルチェンジを追うごとに拡充されてきた様々な機能によってスイッチ類の数が増えたことを自ら問題視。その解決のために、現行7シリーズからトライしたひとつのアイディアがジョイスティックタイプのコントローラーをメインに構成される「iDrive」で、実際にそれがスイッチ数の大幅削減に貢献した。
しかし何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」。空調やオーディオ操作系のスイッチまでもをメインメニューの下層部へとヒドン化し、ATセレクターやシート調整にも独自のロジックを採用した結果、初めて乗った人はまずはレクチャーを受けないとドライビング・ポジションすら決められない。そうした反省からか、当初はひとつのコントローラーのみで構成されたiDriveに、スタート画面に戻る「メニュー」のスイッチを加えるなど、ここでもマイナーチェンジで多少「戻した」感がある。
それにしても、こうして誰もが手がけた事のないアイディアに果敢にアタックをするのが、BMW。ダイナミクス性能はやはりこのカテゴリー随一の“ドライバー本位”のテイストで、たとえこうしたハイエンド・モデルであっても「後席の安楽性よりはドライバーへのプレジャーの演出を重視する」と、そんなスタンスが感じとれる。
よく言えば個性的。悪く言えばとことん唯我独尊。が、「それこそがBMWらしさ」と好意的に受け取って貰えるところが、まだまだ「レクサス」とは段違いのブランド力の成せる技。
(文=河村康彦)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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