BMW M6(2ペダル7MT)【海外試乗記】
心身ともにリアルスポーツ 2005.05.11 試乗記 BMW M6(2ペダル7MT) 6シリーズのボディに「M5」の5リッターV10を積んだ「M6」。「ただそれだけ……」と思っていた自動車ジャーナリストの河村康彦は乗った瞬間、あまりの違いにオドロイタ!予想と違うジャン……
オーバー500psのパワーを発生する5リッターV10エンジンに、2ペダル式7段MT「SMG III」の組み合わせ――たったこれだけの情報を聞いただけでもう自然とワクワクして来てしまう“最新Mマーク”のモデルに、ラッキーにも再び乗れる事になった。新型「M5」に続き今回お伝えするのは、ウワサされてきた「M6」。「Z8」なき今となってはBMWラインナップ全体のイメージリーダー的役割を担うことにもなりそうだ。
「そうは言っても、6シリーズのボディにM5のパワーパックを移植した(だけの)クルマでしょ……」なんて、大方の読者は思うかもしれない。ぼくも当初はその程度のキャラクターの持ち主に過ぎないと予想をしていた。だから正直言って国際試乗会が開催されるスペインはセビリアへと向かう道すがら、試乗インプレッションをいかなるスタンスで仕上げるか、すでにある程度の目星をつけていたつもりだったのだ。
ところが、そんな構想(妄想?)がまるで役に立たないと知ったのは、試乗が始まってすぐのことだった。19インチのシューズや専用造形の前後バンパーなどを与えられ、オリジナルの6シリーズにも増してよりダイナミックなエクステリア・デザインを実現させたM6に乗り込み、V10の心臓に火を入れたまさにその瞬間だったのである。何故ならば、そんなM6からはまるであの新型「ポルシェ911」(997型)のそれを髣髴とさせる派手な咆吼が放たれたのである。
「M5って、こんな音じゃなかったジャン……」
この時点で“6シリーズにM5の動力性能の印象記をはめ込む(!?)”というぼくの浅はかな原稿執筆の戦略は、見事に粉砕されることになった。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
仕事を忘れる加速感
M6のサウンドが、低中回転域まででは意外なほどにジェントルだったM5と大きく異なる、グンとエキサイティングなものとなったワケはすぐに解明できた。スペック的にはM5用とまったく同じとされてきたが排気系に手が加えられ、「触媒から後方のデザイン/レイアウトは別モノ」と説明されたからだ。
開発陣はその理由として「M6は“リアルスポーツカー”だから」と述べる。たしかに、M6にM5のサウンドでは少々おとなし過ぎる印象となりそうだし、逆になるとM5を「最も速く、ゴージャスなセダン」と受け入れようとする人にとっては刺激が強過ぎるかもしれない。
なんとなく微妙に思ったのは、M6が登場したこのタイミング。前述のようなエンジンに火が入った瞬間からのエキサイティングな音のチューニングは、やっぱり911のそれを意識したのではないだろうか?
M6が“リアル”なのは音だけではない。M5では見ることのなかったCFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)製ルーフの採用などでさらなる軽量化を図り、重量はM5に対して50kg近くダイエット。かくして、動力性能もM5をさらに上回り、0-100km/h加速タイムは、M5をコンマ1秒凌ぐ4.6秒と発表されている。
もちろん、指先の軽いパドル操作で7段MTを自由に操りつつ、右足に込める力加減ひとつでオーバー500psのパワーをコントロールする快感は、何度味わっても最高! その大半を雨に祟られたM5のテストイベントのうっぷんを晴らすべくアクセルペダルを踏み込むぼくは……スミマセン、このときばかりは、ちょっと仕事を忘れてました。
素晴らしきボディ
動力性能に対する印象がM5とは随分異なるM6は、フットワークテイストでもやはりリアル・スポーツカーとしての独自性をアピールする1台に仕上げられていた。
テストプログラムに設定されていたサーキットコースでM5以上に自由度の高いハンドリングを見せたのは、5シリーズのボディより10cmほど短いホイールベースの持ち主だけに、ある程度予想のついたポイントである。が、2ドアの恩恵かディメンションの違いか、はたまた例の“CFRPルーフ”のなせる業か、ボディ全体が発する剛性感そのものは、明らかにM6のほうが高く感じられた。
結果としてそうしたボディ剛性感の高さが、コーナリング中の横剛性感の高さや、減速などで前寄り荷重となった際のスタビリティ、そして脚は硬めであるにもかかわらず「しなやか」という表現すらを使いたくなる乗り味といった、すべてのフットワーク・テイストにも影響を与えていたように思う。ちなみに、ブレーキの実力のほどは耐フェード性の点で“ポルシェ・ブレーキ”には叶わないけれど、BMWシリーズ中では随一のタフネスぶりという印象である。
とにかく、M5とはあらゆるテイストが異なっていた事実にビックリのM6。いやいや、ちょっとマジで欲しいです。
(文=河村康彦/写真=BMW Group Japan/2005年5月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
NEW
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。 -
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか?
2026.3.3デイリーコラム2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。 -
電動式と機械式のパーキングブレーキ、それぞれメリットは?
2026.3.3あの多田哲哉のクルマQ&A一般化された感のある電動パーキングブレーキだが、一方で、従来型の機械式パーキングブレーキを好む声もある。では、電動式にはどんなメリットがあって普及したのか? 車両開発者の多田哲哉さんに話を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.3.3試乗記「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。












