フォルクスワーゲン・ニュービートル カブリオレ(6AT)【試乗記】
存在の困るカブリオレ 2003.06.10 試乗記 フォルクスワーゲン・ニュービートル カブリオレ(6AT) ……333.0万円 今年2003年のデトロイトショーでデビューを果たしたフォルクスワーゲン・ニュービートルカブリオレ。同年6月14日からわが国でも販売が開始され、さっそくプレス試乗会が開かれた。横浜に赴いた『webCG』記者は、しかし……。
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ヤンなっちゃう
「フォルクスワーゲン・ニュービートル カブリオレ」を運転している。横浜の、平日の、どこかのんびりした海岸通り。梅雨前の明るい日差しが街にあふれる。
ステアリングコラム横の、一輪差しのヒナゲシが「いまひとつ元気がない」といって助手席のカメラマンと笑い、個々のウィンドウスイッチとは別に、すべてのサイドスクリーンを一度に下ろせる電動スイッチが備えられているのに感心し、スッとのびたドア上端のウェストラインに二枚目を気取ってヒジを載せ、片手ハンドルでブラブラと行く。もうひとまわり自分が若くて、このクルマが自分のモノで、かつ仕事中の自分を忘れることができるなら、道行く女性に声のひとつもかけたいところだ。ちょうど4人、座れるし。
2003年6月5日、神奈川県横浜で、ニュービートルカブリオレのプレス試乗会が開催された。
連日の取材・テストドライブに疲れ、原稿書きのプレッシャーにペシャンコになり、睡眠不足でヘロヘロになりながら現地に赴いたのだが、オリジナル(?)ビートルカブリオレの面影を上手に残した新型カブリオレを目にしたとたん、ウンザリした気分が吹き飛んだ。
「ニュービートルカブリオレ、カワイイじゃん……」
新しいビートルの“屋根開き”モデル、何がいいって、ホロを下ろして走ったときの「いかにもオープン!」な、アッケラカンとした開放感がたまらない。短めのフロントガラスは前方の遠いところから生え、だから上端がオデコに突き刺さらんばかりに迫ることもなく、そのうえドライバー(と助手席乗員)はボディサイドの中心付近に座ることになるので、キャビンは青空でいっぱいになる。論理の展開として逆だが、ニュービートルカブリオレは、姿カタチだけでなく、オープンエアの楽しさもなんだか懐かしい。
ステアリングホイールを握りながら、「ヤンなっちゃうなァ」と思う。このクルマの試乗記を書かなければならないのだ。客観的に「居住性」とか「走り」とか「エンジン」とかを観察して、ときには★を付けたりしなきゃいけないのだ。暖かい風に髪をなぶらせながら、「そもそもクルマのインプレッションとはなんぞや」と、考えざるをえないのだ。
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333.0万円。当面1000台。
ニュービートルカブリオレは、2003年初頭に開催された「デトロイトショー」こと「北米国際自動車ショー/NAIAS(North American International Auto Show)」でデビューした。ニュービートル(クーペ)と同じく、メキシコはプレブラ工場で生産される。
日本では、2003年6月14日が発売日。右ハンドル、「2リッター直4(116ps)+6段AT(!)」仕様のみで、車両本体価格は333.0万円。もちろんカタログモデルだが、今年の日本市場への割り当ては1000台というから、受注状況によっては、ニュービートル登場時のように、納車を待つことになるかもしれない。
カルマン社の手になる電動ソフトトップは、機械式洗車機にもかけられる丈夫な構造をもつ。ドイツ由来のオープンモデルらしく、ニュービートルカブリオレも、ホロを上げてしまえば、クーペと変わらぬ耐候性を得られる。リアウィンドウは、熱線入りのガラス製だ。
オープンにするには、リアビューミラーの上にあるリリースグリップを起こし、半回転してロックを解除、パーキングブレーキ横のスイッチを人差し指で引けば、動作は約13秒で完了する。(すくなくともテスト車は)ブレーキを踏んで、クルマが停まっていればソフトトップを動かせるので、赤信号での停車時に、気軽な開閉が可能だ。
歴代のゴルフカブリオレには、転倒時の安全性への配慮から、かたくなにロールバーを採用してきたVWだが、ニュービートルカブリオレに、それはない。かわりに、「危機的状況に陥った」とクルマが判断した場合に0.25秒で飛び出す「ロールオーバープロテクションシステム」が装備された。リアシートのヘッドレストが265mmの高さまで伸びて、乗員の生存空間を確保する。ちなみに、このシステムは、クローズド状態でも作動する。
外装色として、「クリーム色」「ベージュ」「淡い水色」といった、微妙なニュアンスに富んだ色がカタログに載る。内装は、ボディペイントに合わせて、黒かベージュのレザーシートが用意される。ソフトトップの色は黒のみ。生産と販売状況が落ち着けば、きっと折々に、スペシャルカラーのコンビネーションがリリースされることだろう。
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しっかりしたボディ
エンジンは、おなじみの2リッター直列4気筒(116ps/5400rpm、17.5kgm/3200rpm)。ヘッドメカニズムは相変わらずシングルカム2バルブだが、一方、ブロック側にバランサーシャフトを得、従来の朴訥な回転フィールがウソのようにスムーズに回る。しかも、組み合わされるトランスミッションは、「アウディTT」のオートマモデルと同じ、軽量コンパクトな6段AT。通常の「D」ポジションほか、あたかもオーバードライブが解除されたかのように働く「S」モード、および前後でシーケンシャルなシフトができるティプトロニック用ゲートを備える。
変速がスムーズなのはいいのだが、だがしかし、CVT同様、できるだけ効率のいい回転域を使おうとするためだろう。加減速の激しい街なかでは、高周波のノイズが室内に飛び込みやすい。特にオープン走行時には。ギア多段化の、痛し痒しである。
ボディは、クーペ比110kg相当の補強により、存外シッカリしている。舗装のいい道では、滑るように走る。1390kgに増加したボディの影響もあってか、乗り心地はいい。意地悪く感覚を澄ませると、荒れた路面での足もとのバタつきや、左右の凹凸によってボディがキシんで“オープン”を意識させることもあるけれど、それらはあくまで相対的なものだ。一般的なユーザーが、日常生活において「ボディ剛性」という単語を思い浮かべることは、まずないだろう。
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カブリオレになったら……
ニュービートルカブリオレの、ホロをZ字型に折り畳む方式は、この手の電動ソフトトップ装備モデルの「えてして類似したリアビューになりがち」といった呪縛から逃れ、そのうえ見るヒトのノスタルジーをかき立てる冴えたやり方だ。ドライブ中は、ミラー越しの、後方視界の底が黒くなるけれど、まぁ、カッコよさとのトレードオフである。
……と、つい評価が甘くなりがちな自分が可笑しい。
私事で恐縮だが、学生時代に「ビートル1202S」と過ごした過去ゆえか、ニュービートルのクーペモデルには愛憎半ばする感情を抱いていた。1930年代の当時において、最高の合理性を詰め込んだ“ビートルの精神”を省みることなく、カタチだけ真似た“新型”−−無意味に広いダッシュボード上面、狭い後席、情けない容量のトランク−−を、もろ手を挙げて迎えることはできなかった。
それなのに、カブリオレがリリースされたらあっさりマイッてしまった。オープンモデルには、合理性もクソもないから、か。重箱のスミをつつくようにして、「あーだ」「こーだ」言っている者には、ニュービートルカブリオレ、困った存在である。リポーターの尖った視線を、ノホホンとした顔ですり抜ける。
(文=webCGアオキ/写真=清水健太/2003年6月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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