アウディハイブリッドモデル試乗会【試乗記】
プレミアムエコカー 2013.03.10 試乗記 アウディA6ハイブリッド(FF/8AT)/A8ハイブリッド(FF/8AT)/Q5ハイブリッド クワトロ(4WD/8AT)……772万円/948万円/789万円
アウディにラインナップされる、車型もサイズも違う3つのハイブリッドモデルを一気乗り! アウディにおけるハイブリッドカーの魅力とは。
アウディの「ハイブリッド」
アホ私大生だった80年代――。『ポパイ』だか『メンズノンノ』だかで、「西海岸でカリフォルニアロールがはやっている」という記事を読んでゲッと思った。そんなのがすしだとは絶対に認めない! 少なくともおれは食わんぞ! 十数年後、出張で訪れたシアトルで生まれて初めてカリフォルニアロールを食ったら、うまかった……。あの時に学んだのは、自分が知っているにぎりずしだけがすしではないということだ。世界各地に、自分が慣れ親しんだのとは別の形のすしがある。
アウディの3台のハイブリッド車に乗って、カリフォルニアロールを思い出した。アウディのハイブリッド車は、自分がよく見知っているハイブリッド車(つまり『トヨタ・プリウス』)とは明らかに違う。プリウスだけが正しいハイブリッド車であるという見方をすると、頭上に「?」が5つも6つも浮かぶクルマだ。
でも世界各地に自分が慣れ親しんだのとは別の形のハイブリッド車がある、という目で見ると、この3台はすとんとふに落ちる。
アウディの3台のハイブリッドとは、「Q5ハイブリッド」「A6ハイブリッド」「A8ハイブリッド」だ。先行したA6ハイブリッドに続いて、Q5とA8にハイブリッドモデルが設定されたことを受け、アウディジャパンがまとめて試乗できる機会を設けたのだ。
車型もサイズも異なる3台であるけれど、基本的なハイブリッドシステムは共通である。エンジンは211psを発生する直列4気筒の直噴ターボで、トランスミッションは8段ティプトロニック。これに最高出力54psのモーターを組み合わせ、システム全体の最高出力は245psとなる。
「211ps+54ps=265ps」にならないのは、エンジンのピークとモーターのピークが一致しないから。バッテリーはリチウムイオン電池で、荷室部分に搭載される。
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スムーズな発進、滑るような走り
3台は基本的には同じ仕組みだと書いたけれど、A8とA6がFFなのに対してQ5はクワトロである。また、A8のほうがA6よりわずかにハイギアードになっているなど、細かい差異は存在する。まずはA6ハイブリッドからスタート。
「バッテリーはびんびんだぜ♪」の状態だと、A6ハイブリッドはモーターだけでスムーズ&静かに発進する。EVモードのスイッチを押せば最高速は100km/hに達し、60km/hの一定速クルーズなら3kmまでモーターだけで走る。
そこから加速を試みると、いつの間にか始動していたエンジンも加勢して車体を引っ張る。エンジンとモーターの一連の連携は実にスムーズで、滑るように走る。走らせてみての実感だと、A6ハイブリッドはエコカーというよりプレミアムカーである。
そこからさらにアクセルペダルを踏み込むと、胸がすくような加速を見せる。この速さは、胸がすくを通り越して、胸がドキドキする。
この時、タコメーターの位置に配置されたパワーメーターの針は、右側に振り切っている。つまり、モーターが全力で駆動している。アウディは、この状態を「ブースティング」と呼ぶ。
試乗を続けて感じたのは、中速〜高速のフィーリングが高度に洗練されていることに比べると、低速はやや粗っぽいということだ。停止状態から不用意にアクセルペダルを踏み込むと、巨大なトルクに耐えきれずに前輪が空転、すかさずESPが介入して空転を鎮めにかかり、「ガッガッガッ」という不快な振動が伝わる。
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モデルの魅力を際立たせる
不思議なことに、同じパワーユニットで同じ駆動方式(FF)を採るA8ハイブリッドにはこの症例が現れなかった。そこだけに限らず、乗り心地の滑らかさも一枚上手、さすがにフラッグシップはひと味違う。
遮音も行き届いている。加速中のA6ハイブリッドでは耳に入ったよく言えば軽快な、悪く言えば軽薄な4気筒っぽいエンジン音が影を潜めている。
遮音材をおごっているのもあるだろうけれど、それだけではなくA8に標準装備されるアクティブノイズコントロールもかなりの効果を発揮しているようだ。この仕組みは、オーディオのスピーカーがノイズと逆位相の波動を発することで、互いを打ち消し合うというものだ。つまり、矢吹丈と力石徹のクロスカウンターで両者ノックダウンという状態だ。
ハイブリッドシステムの動力性能は、A8の大柄なボディーに対しても十分。モーターが備わるとはいえ、排気量がたった2リッターの4気筒エンジンが、A6ハイブリッドより80kg重い1930kgの車体をスムーズに動かすのは驚きだ。
ハイブリッドシステムは、軽快でスマートに速いというA8の魅力をさらに際だたせている。A8は、そもそも新世代エグゼクティブ御用達といった雰囲気だったけれど、ハイブリッドモデルはさらにその傾向が強まった。
個人的に一番気に入ったのはQ5ハイブリッドだった。
低速からグイッと力強く加速してほしいSUVにとって、電流が流れた瞬間に最大のトルクを発生するモーターのアシストはぴったりだ。Q5ハイブリッドも、発進加速からストレスなく加速する。
停止状態から力強く加速しようとしても、FFのA6ハイブリッドと違って、4つのタイヤが大トルクをバシッと受け止めてくれる。やっぱりアウディはクワトロだ、と思う。今回は3台を駆け足で試乗したので、燃費は計測できなかった。以前、別の機会にA6ハイブリッドの燃費を測ったところ、高速8割、一般道2割といった使い方で10km/リッターをほんのわずか超える燃費だった。
「全然よくないじゃん」と思われるのはごもっともで、プリウスだったら最低でも倍の燃費を記録していただろう。
けれども、アウディのハイブリッドが魅力的でないかといえば、そんなことはない。速くて乗り心地が快適で、ハンドリングが楽しいうえにインテリアが充実しているから乗っているとわくわくする。つまり、乗ると高揚するけれどそんなに燃費が悪くないプレミアムカー、というのがアウディにおけるハイブリッドの位置付けではないか。にぎりずしだけがすしでないのと同じように、日本のハイブリッドだけがハイブリッド車ではないのだ。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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