トヨタ・クラウン ハイブリッド アスリートS(FR/CVT)【試乗記】
ラスト・チョイスにふさわしい 2013.04.21 試乗記 トヨタ・クラウン ハイブリッド アスリートS(FR/CVT)……527万6950円
ハイブリッドの「クラウンアスリート」に、徳大寺有恒が試乗。デザインやパワーユニットが大きく変わった最新型を、“巨匠”はどう評価する?
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帰ってきた4気筒
松本英雄(以下「松」):今日の試乗車は「クラウン ハイブリッド」です。
徳大寺有恒(以下「徳」):先日、富士スピードウェイでもチラっと乗ったよな?
松:ええ。あのときはまだプロトタイプで、試乗コースもサーキット構内に限られていたんですが、今回は生産型で、一般道での試乗となります。
徳:そうか。この間も話したが、新型クラウンはハイブリッドが売れてるんだってな。
松:はい。「プリウス」を筆頭とする“ハイブリッド専用車”ではなく、ガソリンエンジン車と併売されるモデルで、ハイブリッドをメインに据えたのは新型クラウンが初めてなんですが、ハイブリッドの受注比率がどんどん高まって、7割を超えたそうですよ。
徳:トヨタの思惑どおりだが、国産高級車初の本格的なダウンサイジングってことだよな。なんたってクラウンに4気筒なんだから。
松:感慨深い方も少なくないでしょうが、なにしろ「ジャガーXJ」に4気筒ターボが載る時代ですから。
徳:ごもっとも(笑)。
松:前にもお聞きしたと思いますが、クラウンで4気筒が主流だったのは、いつごろまででしたっけ?
徳:2代目のRS40系まで。その2代目の途中、1965年に2リッター直6SOHCのM型エンジンを積んだMS40系が追加されたんだ。
松:ということは、4気筒の時代は半世紀近く前になるんですね。巨匠がトヨタワークスにいた頃はまだ4気筒ですか?
徳:ああ。
松:どうでした、ワークス・クラウンは?
徳:どうもこうも、遅かったよ。直4OHVで、排気量が1.9リッターしかないんだから。
松:チューンはしてなかったんですか?
徳:多少はしていたが、あのボディーに100馬力あるかないかじゃなあ。さすがにギアボックスは3段コラムシフトから4段フロアシフトになってたけどな。当時、サーキットは鈴鹿しかなかったが、あそこはけっこう高低差があるだろ? トルクが薄くて、上りがどうにもかったるかった記憶があるよ。
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松:なるほど。話は変わりますが、クラウンはかつてターボや日本初採用だったスーパーチャージャー付きをラインナップしていたことがありますよね。あれも考えてみればダウンサイジングだったんじゃないですか?
徳:広い意味ではそうだな。クラウンには2.8とか3リッターエンジン車の設定があったが、80年代までは3ナンバー車の税金がすごく高かったから、2リッターの過給エンジンを積んだ5ナンバー車に人気があったんだ。
松:ということは、税制の改正によって2リッターの過給エンジンの必要性が薄れてしまったわけですか。
徳:うん。当時の過給エンジンは大食いだったから。自然吸気の2.8や3リッターと同じか、下手したら悪かったくらい。カタログ上では「捨てていた排気エネルギーを再利用した省資源エンジン」などとうたっていたけどさ。
松:燃費が悪かったということは、今日のダウンサイジングとはちょっと意味合いが違いますね。
徳:そうなんだ。
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“らしくない”にもワケがある
松:試乗車はこれです、ハイブリッドの「アスリートS」。「足を固めたクラウンなんて興味ない」とのことでしたが、前回は「ロイヤル」だったから、変化があったほうがいいと思って。
徳:そりゃ気を使わせて悪かったな(笑)。ところで、ボディーカラーは何色あるんだい?
松:アスリートの場合、白、黒とシルバーが2種類ずつ、そしてこのダークレッドマイカの6色ですね。
徳:白、黒、シルバーの無彩色を除いたら、選択肢はこの赤しかないのか。そりゃちょっとさびしいな。こげ茶とかあるといいと思うんだが。
松:同感ですが、おそらく出しても売れないんでしょうね。
徳:そうか。エクステリアがそうなら、インテリアは……聞くまでもないか。
松:アスリートは黒基調のみです。シート地は「テラロッサ」と呼ばれるこの赤と黒のツートンもしくは黒のファブリック、そしてオプションの黒い本革の3種類。
徳:俺の場合、内外装のカラーコンビネーションを決めるのはクルマを買う際の大きな楽しみなんだが、それは望めないってことか。
松:残念ながら。というところで、ちょっとボンネットを開けてみましょう。
徳:ほう、ハイブリッド用のケーブル類なんかがむき出しなんだ。クラウンらしくないというか、意外な気もするな。
松:ですよね。トヨタによれば、クラウンのオーナーは自らボンネットを開けることはほとんどないので、それに対する不満は聞かれないとのことですが。
徳:その言い草もなんだかなあ。クラウンなんだから、カバーぐらい付けそうなもんだが。
松:そうするとエンジンからの熱がこもっちゃうらしいんですよ。
徳:なるほど。排気量は2.4リッターだっけ?
松:2.5リッターです。「カムリ」と基本的に同じエンジンを、さらにブラッシュアップしてFR用にアレンジしたそうですが、乗用車用の4気筒としてはかなり大きいですよね。
徳:かつて三菱に2.6リッターがあったけどな。
松:ありましたねえ。三菱がそれ用に開発したサイレントシャフトを使って、ポルシェは3リッターまで作りましたが。
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徳:「968」か。それはともかく、今後は高級車といえども4気筒が増えていきそうだな。
松:そうですね。でも、先ほどクラウンのエンジニアも言ってましたが、もともと6気筒エンジン用に作られたプラットフォームに4気筒を積むとなると、それはそれでいろいろむずかしいみたいですよ。
徳:ほう、例えばどんな?
松:まずエンジン単体の重量が違いますよね。さらにハイブリッドだとモーターなども加わってくるので、パワートレイン全体の重量バランスも変わってきます。また、6気筒と4気筒では振動の大きさも質も違います。重量バランスや振動の違いは、乗り心地にも影響してきますから。
徳:静粛性や乗り心地が大切な高級車となれば、「4気筒なんだから6気筒より多少やかましかったり、ラフでもいい」というわけにはいかないものな。
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「クラウン」ならではの乗り心地
松:そろそろ走らせてみますか。
徳:ああ、そうしよう。
松:富士で乗ったプロトタイプと比べると、明らかに静かになっていると思いませんか?
徳:なってる。車外で聞くアイドリング音はあいかわらず大きめだったが、走っている限りはまったく問題ない。
松:ハイブリッドの違和感もまったくないですね。カムリもとてもいいと思ったけど、これはさらにスムーズです。カムリより車重は重くなってますが、力不足も感じないし。さすがにエコモードにすると、加速はかったるく感じますが、巨匠はエコモードなんてまず選ばないでしょうから、関係ありませんね(笑)。
徳:ああ。
松:そういえば巨匠は、初代プリウスが出てすぐに買ったんですよね。最初のうちは運転感覚の違いをすごく楽しんでいたようですが?
徳:じきに飽きちゃった。エコ運転なんてしないからさ、エンジンがしょっちゅう回っているから、うるさいし、燃費もさしてよくなかった。気が付けばあれから15年たってるんだから、これは実燃費もよくなっているんだろうな。
松:取りあえずJC08モードのカタログ燃費はリッターあたり23.2kmで、ガソリン2.5リッターV6の倍以上です。
徳:そりゃすごいな。
松:一般ユーザーはともかく、距離を走る個人タクシーのドライバーなどにとっては、ガソリン車との価格差を考慮しても経済的なメリットがあるでしょうね。
徳:ああ。彼らは燃費走行ができる人たちだから。ところでアスリートはもっと足が硬いのかと思っていたが、想像していたよりは乗り心地がいいな。
松:そこはやはりクラウンですから。ハーシュネスの出方なんかは、やっぱりアスリートだな、という感じですが。
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徳:ロイヤルと違うのは、タイヤとダンパーかい?
松:スプリングも替えてます。
徳:そうか。で、アスリートのほうが売れてるんだって?
松:ええ。アスリートのハイブリッド、つまりこれが一番人気なんだそうです。
徳:ふ〜ん。まあ、ちょいワルを気取りたい層に受けそうな気はするな。肝心の値段はいくらなんだい?
松:車両本体価格で469万円、この個体はオプション込みで530万円弱です。
徳:けっこうするんだな。
松:ベーシックなハイブリッドは、アスリート、ロイヤルとも410万円からありますよ。
徳:それでも4気筒の国産車で400万円オーバーか。ハイブリッドとはいえ、時代は変わったな。
松:それでもジャガーXJの直4ターボは900万円しますから、半額以下ですよ。(笑)
徳:そうか。今後マルチシリンダーは、ほんとにぜいたくなものになるんだろうな。
松:ええ。でも巨匠はV8もV12も散々乗ったんだから、もういいでしょう。
徳:ああ。クラウンも先祖返りして4気筒になったことだし、やっぱり終(つい)のクルマはクラウンにしてもいいかな?
松:ダットサンに始まった車遍歴(注)が、紆余(うよ)曲折を経てクラウンで終わる……日本人らしくていいじゃないですか!
注)徳大寺氏の最初の愛車は、1952年「ダットサンDB-2」。
(語り=徳大寺有恒&松本英雄/まとめ=沼田亨/写真=峰昌宏)

徳大寺 有恒
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