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MINIクーパー(FF/6MT)/クーパーS(FF/6AT)

小さなMINIの、大きな進化 2014.03.04 試乗記 渡辺 敏史 3代目となった新型「MINI」がいよいよ登場。一新されたプラットフォームとパワーユニットの実力に触れた。

ただ今、世界を席巻中

もはやその商圏は100カ国以上。気づけば年産30万台規模の一大ブランドと化していた――。そうMINIのことだ。もちろん背景にはこれでもかのバリエーション拡大があるだろう。オリジナルモデルには並ならぬ思い入れのある日本市場にしても、今や全数の3割以上は4ドアの「クロスオーバー」で稼いでいるのだから、本末転倒とツッコまれると、ちと苦しい状況だ。

が、先述の通りMINIの商圏は広がり、大きいことがいいこととされるアメリカや、なんなら「BMW 3シリーズ」までロングボディーにしてしまう中国でも今やMINIはプレゼンスを示し始めている。ちなみにMINIアメリカ市場での2013年の販売実績は対前年比で9%増。思えば西海岸あたりでは、確かにMINIとすれ違う機会は確実に増えている。

すなわち、この新しいMINIは世界戦略を担う中核となるモデルといっても過言ではない。が、一見するにそのアピアランスは完全にキープコンセプトだ。室内空間の若干の拡大と共に各種衝突安全要件を満たすべく、新型の寸法は全長が98mm、全幅が44mm、全高が7mm、そしてホイールベースが28mmと、それぞれ前型より拡大している。車格的には完全にBセグメントの領域だが、面で表情をスキッとみせるデザインやテールランプの大型化など、あえて小さくみせる小技を盛り込んでいる。ちなみにこの面取り効果もあってか、Cd値はベースグレードで0.28。燃費の鬼、トヨタの「アクア」と変わらない。

2001年に登場した初代「ニューMINI」から数えて3代目となる新型「MINI」。衝突安全性の向上や居住性の改善などにともない、ボディーサイズを従来モデルからひとまわり拡大している。
2001年に登場した初代「ニューMINI」から数えて3代目となる新型「MINI」。衝突安全性の向上や居住性の改善などにともない、ボディーサイズを従来モデルからひとまわり拡大している。 拡大
横基調のインパネに丸いメーター、モニター、エアコン吹き出し口を配するなど、インテリアデザインは初代、2代目と受け継がれてきたイメージを踏襲。
横基調のインパネに丸いメーター、モニター、エアコン吹き出し口を配するなど、インテリアデザインは初代、2代目と受け継がれてきたイメージを踏襲。
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インテリアにおける「MINI」の特徴の一つであるトグルスイッチ。従来モデルではパワーウィンドウのスイッチもここに配されていたが、新型ではドアに移されている。
インテリアにおける「MINI」の特徴の一つであるトグルスイッチ。従来モデルではパワーウィンドウのスイッチもここに配されていたが、新型ではドアに移されている。
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メーター内のマルチファンクションディスプレイには、新たに設定されたセットアップ切り替えシステム「MINIドライビング・モード」の状況も表示される。
メーター内のマルチファンクションディスプレイには、新たに設定されたセットアップ切り替えシステム「MINIドライビング・モード」の状況も表示される。
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垣間見えるBMWの戦略

変わらないために変わるという、いわば「ポルシェ911」のようなフルモデルチェンジの道を選んだMINI。3代続けば末代続くというわけか。そのぶん、進化を存分に盛り込むべき中身では、前型との共通部品は一切ないというほどの完膚無きまでの刷新を敢行した。

そのプラットフォームは現行クロスオーバー系を発展活用するかと思われたが、エンジニアいわく、まったく別の新規ものだという。サスペンション形式は前型を踏襲するが、これも設計はもちろん別物だ。むしろ共通化を進めたのは間もなく上市されるだろう、BMWのFFピープルムーバー「2シリーズ アクティブツアラー」である。つまりBMWとMINIの間でさらに強くエンジニアリングの共通性を計り、低コスト化や、ひいては生産の柔軟性をあげようという青写真が伺える。

併せて、エンジンもBMWのストラテジーにのっとり全てが刷新された。今回試乗した「クーパー」の側には1.5リッター3気筒の直噴ターボが、「クーパーS」の側には2リッター4気筒の直噴ターボが積まれている。両者は気筒当たり500ccのモジュラー構造になっており、今後はBMWにとってのご本尊ともいえる3リッターストレート6との共通化も控えるわけだ。ちなみにこのエンジンは縦置きも可能……ということで、「1シリーズ」あたりに展開されることにもなりそうだ。また、プラグインハイブリッドの「i8」に搭載されるエンジンも、クーパーのそれをベースにハイチューン化したものだという。

新型「MINI」のエンジンは、1.2リッターと1.5リッターの直3ガソリンターボと2リッター直4ガソリンターボ、および最高出力の異なる2種類の1.5リッター直3ディーゼルターボの全5種類。写真は「クーパーS」の2リッター直4ガソリンターボ。
新型「MINI」のエンジンは、1.2リッターと1.5リッターの直3ガソリンターボと2リッター直4ガソリンターボ、および最高出力の異なる2種類の1.5リッター直3ディーゼルターボの全5種類。写真は「クーパーS」の2リッター直4ガソリンターボ。
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標準仕様のシート素材はファブリックだが、オプションでファブリックとレザーのコンビ仕様や、レザー仕様のシートも用意されている。
標準仕様のシート素材はファブリックだが、オプションでファブリックとレザーのコンビ仕様や、レザー仕様のシートも用意されている。
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ラゲッジルームの広さは211リッター。オプションで、床面の高さを調整できるフロアボードも用意される。
ラゲッジルームの広さは211リッター。オプションで、床面の高さを調整できるフロアボードも用意される。
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ダウンサイジングエンジンのお手本

その3気筒エンジンの出来栄えは、ともあれ驚きに満ちたものだった。同じ3気筒でも「フォルクスワーゲンup!」や「フォード・フィエスタ」のようにバランサーレス構造を採らなかったのは全域で4気筒に匹敵する快適性を狙ったがゆえだろう。そのかいあってこのエンジンにはおよそ振動らしきものが存在しない。低回転域から粛々と粘り強く回りつつ、わずか1250rpmで22.4kgmのピークに達するトルクは、重量増を抑えた車体を発進からモリモリと加速させる。いわゆるターボラグのようなものは無に等しい、まさにダウンサイジングの模範解答のようなフィーリングだ。

反面、136psの力強さは十分に感じられるものの昨今の直噴ターボらしく、6000rpm付近でパワーの伸び感がグッと頭を打つ感触があるのは今後の課題というところだろうか。巧みなサウンドチューニングなどでドロップ感をマスクしているが、6段ATで0-100km/hが7.8秒といえばBセグメントでは十二分にホットハッチといえる領域だけに、この辺りは改善を望みたい。

「クーパー」に搭載される1.5リッター直3直噴ターボエンジンは、最高出力136ps、最大トルク22.4kgmを発生。オーバーブースト作動時には、最大トルクは23.4kgmとなる。


    「クーパー」に搭載される1.5リッター直3直噴ターボエンジンは、最高出力136ps、最大トルク22.4kgmを発生。オーバーブースト作動時には、最大トルクは23.4kgmとなる。
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環境性能の改善も新型「MINI」の特徴。「クーパー」の6段MT車では、4.5~4.6リッター/100km(21.7~22.2km/リッター、欧州テストサイクル)の燃費を実現している。
環境性能の改善も新型「MINI」の特徴。「クーパー」の6段MT車では、4.5~4.6リッター/100km(21.7~22.2km/リッター、欧州テストサイクル)の燃費を実現している。
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今までとは一味違う

シャシー側でみても、このモデルチェンジの一番の変化は快適性の大幅な向上かもしれない。試乗コースは道幅が狭い上に路面の補修もままならず随所で凹凸が露出……という、総じて試乗には向かない環境だったが、そんな路面を17インチの「ピレリPゼロ」で見事にいなすアタリの丸さは今までのMINIに望むべくもなかったところだろう。

乗り心地の伸びしろはむしろクーパーSの方が顕著で、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の2リッターエンジンと相まって、ちょっとしたGTともいえるキャラクターを得ている。オプションで装着される電子制御可変ダンパー(!)はクーパーSの側で試してみたが、そのスポーツモードは明らかに山道でゴーカートフィールを堪能しまくるためにしつらえられたもので、一般的なスポーツ走行のニーズには標準の決め打ちサスでも十分と思わせた。

言い換えれば新しいMINIは、ディーゼルいらずとも思える効率をもった驚愕(きょうがく)の1.5リッター3気筒を搭載するクーパーにこそ、最も進化の痕跡が強く伺えるというのが個人的な印象だ。

(文=渡辺敏史/写真=BMW)

シフトノブの付け根に装備された「MINIドライビング・モード」のロータリースイッチ。
シフトノブの付け根に装備された「MINIドライビング・モード」のロータリースイッチ。
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「クーパーS」のタイヤサイズは195/55R16が標準だが、テスト車にはオプションの17インチアルミホイールと、205/45R17というサイズの「ピレリPゼロ」が装着されていた。
「クーパーS」のタイヤサイズは195/55R16が標準だが、テスト車にはオプションの17インチアルミホイールと、205/45R17というサイズの「ピレリPゼロ」が装着されていた。
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MINIクーパー
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テスト車のデータ

MINIクーパー

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3821×1727×1414mm
ホイールベース:2495mm
車重:1085kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:136ps(100kW)/4500-6000rpm
最大トルク:22.4kgm(220Nm)/1250-4000rpm
タイヤ:(前)175/65R15 84H/(後)175/65R15 84H
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

 

MINIクーパーS
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MINIクーパーS

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3850×1727×1414mm
ホイールベース:2495mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:192ps(141kW)/4700-6000rpm
最大トルク:28.6kgm(280Nm)/1250-4750rpm
タイヤ:(前)195/55R16 87W/(後)195/55R16 87W
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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