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第1回:最新モデルを“通”はこう見る

作りのよさが伝わってくる 2014.12.24 ボルボV40の“いま”を知る サトータケシ ボルボV40 T5 R-DESIGN(FF/8AT)

日本デビューから1年半を経て、新たなパワートレインを得た「ボルボV40 T5 R-DESIGN」。それで走りはどう変わったのか? 日ごろ〝変更前のV40”に乗っている、モータージャーナリスト 桂 伸一さんに印象を聞いた。

出だしから「変わった」

イヤーモデルという言葉を聞いたことがある方も多いと思う。ヨーロッパの自動車メーカーの多くが、年次ごとの改良を施しているのだ。したがって特にマイナーチェンジと銘打たなくとも、2014年モデルと2015年モデルとの間には違いが生じる。
ボルボV40シリーズの2015年モデルも、前年のモデルから実効的な改良を受けた。中でも大きく変わったのがT5で、エンジンとトランスミッションがそっくり変わっている。

では、V40シリーズのT5はどのように変わったか? 変化の度合いを最も的確に評価できるジャーナリストが、桂 伸一さんだ。なぜなら桂さんは、2014年に「ボルボV40クロスカントリー T5 AWD」をご自身で購入しているからだ。
箱根のワインディングロードと周辺の高速道路で、2015年モデルのボルボV40 T5 R-DESIGNとご自身のV40クロスカントリー T5 AWDを乗り比べ、両者の違いを解説していただいた。

新装なったボルボV40 T5 R-DESIGNのステアリングホイールを握りエンジンを始動、アクセルペダルを踏み込んで発進してわずか数秒、桂さんが「うーん」とうなった。
「いやぁ、出足がかなり軽くなりましたね。アクセルペダルをそれほど踏み込まなくても、すーっと前に出る感じがします」というのが桂さんのファーストインプレッションだ。

ここで解説を加えると、ボルボV40シリーズのT5はこれまで2リッターの直列5気筒ターボエンジンと6段ATを搭載していた。2015年モデルからは2リッターの直列4気筒直噴ターボエンジンと8段ATの組み合わせとなった。「Drive-E」と呼ばれる、ボルボの新世代パワートレインである。

従来の5気筒ターボの最高出力は213ps/6000rpm、最大トルクが30.6kgm/2700-5000rpm。対して、新しい4気筒直噴ターボはそれぞれ245ps/5500rpmと35.7kgm/1500-4800rpmと、パワー、トルクともに向上している。
ただし出足が軽くなったのは、エンジンだけの手柄ではないというのが桂さんの見立てだ。

「ボルボV40」のスポーティーグレードである「T5 R-DESIGN」。4気筒ターボエンジンを搭載する最新型は、日本では2014年11月に発売された。
「ボルボV40」のスポーティーグレードである「T5 R-DESIGN」。4気筒ターボエンジンを搭載する最新型は、日本では2014年11月に発売された。 拡大
 
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新しい4気筒の「T5」を試す、モータージャーナリストの桂 伸一さん。プライベートでは、5気筒エンジンを搭載する「V40クロスカントリー T5 AWD」に乗る。
新しい4気筒の「T5」を試す、モータージャーナリストの桂 伸一さん。プライベートでは、5気筒エンジンを搭載する「V40クロスカントリー T5 AWD」に乗る。 拡大
これまでに比べ、最高出力と最大トルクが増大したパワーユニット。一方で、燃費も14%改善されている。
これまでに比べ、最高出力と最大トルクが増大したパワーユニット。一方で、燃費も14%改善されている。 拡大
桂 伸一(かつら しんいち)
1959年生まれのモータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌での編集職を経て、自動車評論の仕事に携わる。ニュルブルクリンク24時間など、レースにおける活躍でも知られる。
桂 伸一(かつら しんいち)
	1959年生まれのモータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌での編集職を経て、自動車評論の仕事に携わる。ニュルブルクリンク24時間など、レースにおける活躍でも知られる。 拡大
ボルボ V40 の中古車

いいことずくめの8段AT

「1速に固定してスタートしてみるとわかりますが、1速のギア比がいままでの6段ATよりローギアードになっています。4気筒エンジン自体の軽快さもありますが、ATが6段から8段になることで1速がより低くなり、これが発進時のピックアップのよさとなっているのです」と、桂さん。

箱根のターンパイクにさしかかると、桂さんは中間加速や、巡航状態でのパワートレインのチェックを開始した。
「加速中は4気筒のほうがにぎやかですけれど、巡航中はそんなに感じないですね。理由は2つあります。まず、8段ATを搭載することで高いギアがよりハイギアードになり、中高速域でのエンジン回転数が下がりました。もうひとつ、各社の2リッター直噴エンジンの中ではボルボ製が一番静かだという理由もあります。止まっている時のアイドル音を外で聞くと一発でわかりますが、他社の2リッター直噴の中には、ガチャガチャとノイジーで、タペットがおかしいんじゃないかと思うのもありますから(笑)」

下り坂では、シフトパドルを手前にポンと引いて、ギアを1段落としてエンジンブレーキを利かせた。そしてひと言、「このパドルシフトがうらやましい!」。

「2014年モデルのT5 R-DESIGNにはパドルがなかったんです。2015年モデルからはV40として初めて装備されたのですが、これがいい。キックダウンでギアを落とすほどアクセルペダルを踏みたくない時ってあるじゃないですか。そういう時に小手先でシフトダウンできる。これはうらやましいなぁ……」

そのパドルシフトを操作したり、アクセルペダルを踏み込んでキックダウンしたりしながら、新しい8ATの変速の具合を桂さんは確認する。納得いくまで試してから、軽くうなずいてこう評価した。
「変速ショックがなくて、なおかつ変速自体は素早い。クルマを上質に感じさせる、いいトランスミッションだと思います。少なくともラグジュアリーに乗るクルマに関しては、ツインクラッチ式よりこっちのトルクコンバーター式のオートマが合っているんじゃないでしょうか」

 

 
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本革とパーフォレーテッドレザーで仕立てられた、「R-DESIGN」専用のシート。8wayの電動調節機構も備わる。
本革とパーフォレーテッドレザーで仕立てられた、「R-DESIGN」専用のシート。8wayの電動調節機構も備わる。 拡大
ステアリングホイールの左側スポークには、「全車速追従機能付きアダプティブ・クルーズ・コントロール」の制御スイッチがレイアウトされる。その奥に見えるシフトパドルは、2015年モデルからの新装備だ。
ステアリングホイールの左側スポークには、「全車速追従機能付きアダプティブ・クルーズ・コントロール」の制御スイッチがレイアウトされる。その奥に見えるシフトパドルは、2015年モデルからの新装備だ。 拡大
トランスミッションは、従来型より2段多い8段のATを採用。レバーを囲むアルミパネルは、「R-DESIGN」専用のもの。
トランスミッションは、従来型より2段多い8段のATを採用。レバーを囲むアルミパネルは、「R-DESIGN」専用のもの。 拡大
ディフューザー付きのリアバンパーと、左右に振り分けられたマフラーエンドが、「V40 T5 R-DESIGN」のスポーティーなキャラクターを強調する。
ディフューザー付きのリアバンパーと、左右に振り分けられたマフラーエンドが、「V40 T5 R-DESIGN」のスポーティーなキャラクターを強調する。 拡大

煮詰めを感じる走り

桂さんがドライブする2015年モデルのV40 T5 R-DESIGNは、強力になったエンジンパワーを利して箱根ターンパイクの急勾配を軽々と上り、中高速コーナーもひらりひらりとクリアする。
パワートレイン以外に、何か変化を感じたかどうか、尋ねてみる。

「乗り心地が良くなったとかあたりがやわらかくなった、と言うとちょっと違うんですけど、足まわりがしなやかになったと感じますよね。いままではもっと高速寄り、ヨーロッパでの160km/hとか200km/hの速度域でちょうどいいぐらいの足にセットしていたのが、もう少し下の速度域に合わせてきたようです。ほら、いまの50km/h程度のスピードで舗装の悪いところを乗り越えても、全然ガツガツこないでしょ?」

確かに、日本における一般的な速度でも、路面からのショックはまろやかだ。
ちなみに、R-DESIGN以外のモデルは、従来の“ダイナミック・シャシー”からより快適性重視の“ツーリング・シャシー”に切り替えられたという。
いま試乗しているV40 T5 R-DESIGNではそこまで明確に足まわりのセッティングは変えられていないはずだけれど、少なからぬ変化がある。そのあたりは、パワートレインだけでなくイヤーモデルごとに細部が煮詰められているのだろう。

 
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アルミホイールは、「V40」シリーズ最大となる18インチがおごられる。
アルミホイールは、「V40」シリーズ最大となる18インチがおごられる。 拡大
運転席まわりの様子。シルクメタルで飾られるステアリングホイールやスポーツペダルなどの専用アイテムが目を引く。
運転席まわりの様子。シルクメタルで飾られるステアリングホイールやスポーツペダルなどの専用アイテムが目を引く。 拡大
荷室のフロアボードは折りたたみ式で、小さな荷物を安定させる仕切りとして役立つ。後席だけでなく、助手席も前屈可能。長尺物の積載に対応する。(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
荷室のフロアボードは折りたたみ式で、小さな荷物を安定させる仕切りとして役立つ。後席だけでなく、助手席も前屈可能。長尺物の積載に対応する。(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます) 拡大

悩める2つのT5

新しいエンジンとトランスミッションの組み合わせが軽快な加速感をもたらすことと、静かで変速ショックのない上質なドライブフィールをもたらすことが確認できた。同時にサスペンションのセッティングも洗練されたことを確認してから、桂さんのボルボV40クロスカントリー T5 AWDで帰路につく。
このクルマを半年ほど愛用した桂さんに、実際に使ってみての魅力をうかがう。

「きっちりした作りのよさって、ドイツ車の特権だと思っていたんです。でもこのクルマもきっちりしていて、例えば悪路を突破してもガタピシ音がするなんてことはない。建て付けはドイツ車と同等にしっかりしている一方で、内装のデザインとか素材におしゃれな感じがある。ドイツ車とは違う魅力、価値観があるのがいいですよね」

では、2015年モデルとご自身のクルマを比較しての率直な感想で、本日の“新旧対決”をまとめていただこう。

「8段ATとパドルシフトは文句なしですね。うらやましい。ただし新しい4気筒エンジンとこの5気筒エンジンを比べると、どうかな。普通に考えるとパワフルで軽快でしかも効率もいい4気筒が優れているでしょう。でも、5気筒には他社にはないボルボらしい濃厚な味がある。重厚感のあるエンジンフィールというのかな。だから趣味的なところまで含めると、5気筒エンジンに8段ATとパドルシフトを組み合わせたパワートレインが理想です。ボルボの広報担当者にそれはないの? と聞いたら、ないって言われましたけど(笑)」

桂さんは、4気筒のT5が登場することを知りながら、あえて5気筒エンジンを購入したという。「だって4気筒はこれから先いくらでも乗れるけれど、5気筒はいましか乗れないじゃないですか」というのがその理由だ。
5気筒エンジンのT5は、V40クロスカントリーにまだ残されている。いまが4気筒か5気筒かで迷うことができる、最後のチャンスなのだ。

(インタビューとまとめ=サトータケシ/写真=田村 弥)
 

→「ボルボV40」のオフィシャルサイトはこちら

桂 伸一さん所有の「V40クロスカントリー T5 AWD」(写真左)とのツーショット。取材日は快晴に恵まれ、富士山もご覧の通りくっきり。
桂 伸一さん所有の「V40クロスカントリー T5 AWD」(写真左)とのツーショット。取材日は快晴に恵まれ、富士山もご覧の通りくっきり。 拡大
 
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1眼のアナログメーターを中心に据える計器盤。デザインテーマの変更により表示内容も変えられる。(写真をクリックすると表示バリエーションが見られます)
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後席の様子。左右席のヘッドレストは可倒式で、ドライバーの視界確保に貢献する。(写真をクリックするとシートアレンジが見られます)
後席の様子。左右席のヘッドレストは可倒式で、ドライバーの視界確保に貢献する。(写真をクリックするとシートアレンジが見られます) 拡大
「V40 T5 R-DESIGN」の2015年モデルでは、ATの変速ポイントやエンジンレスポンスなどを最適化させて燃費を稼ぐ走行モード「ECO+(エコプラス)モード」も選べるようになった。
「V40 T5 R-DESIGN」の2015年モデルでは、ATの変速ポイントやエンジンレスポンスなどを最適化させて燃費を稼ぐ走行モード「ECO+(エコプラス)モード」も選べるようになった。 拡大
サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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