レクサスLX570(4WD/8AT)
ただよう“陸の王者”の威光 2015.12.29 試乗記 本格クロカン四駆として名高い“ランクル”の走破性能に、5.7リッターの大排気量V8エンジンと8段ATのパワートレイン、そしてプレミアムブランドならではの装備と品質をプラス。レクサスが日本に導入した大型SUV「LX570」の魅力に触れた。ランクルとはここが違う
一部の好き者にとって待望だったレクサスLXが、ついに日本発売された。ただ、「トヨタ・ランドクルーザー」のレクサス版が出るのは今回が初ではない……というか、レクサスの本場(?)たる北米では、LXは1996年以来ずっとある。最新型はランクルでいうところの「200」がベースで、それ以前には「80」ベースの初代、「100」ベースの2代目があった。今は通算3代目である。
これまたご承知のように、第2世代のLXは、日本国内でも「ランドクルーザー シグナス」としてトヨタブランドで販売されていた。現行3代目は2007年に本場デビューしたが、当時の日本はレクサスチャンネルがスタートして間もない時期。FFセダンの「ES」も含めて、トヨタブランド車と区別をつけにくいレクサスをあえて売らなかった。
というわけで、最新のLXも機械構成はランクル200そのもの。全長はランクル200より長いが、それはオーバーハングの造形によるもので、ホイールベースやキャビン形状など、クルマの根幹部分は両車共通である。
もっとも、車高調整サスペンションやリアルタイム可変ダンパー、そして「Lexus Safety System+」といった機構装備内容を見ると、正確にはランクル200でも最上級の「ZX」のレクサス版と考えればいい。ちなみにLexus Safety System+は、トヨタでいう「Toyota Safety Sense P」に相当するフルスペックの事前察知安全装備だ。
ランクル200との大きなちがいは、エンジンと変速機。4.6リッターV8+6ATのランクル200に対して、LXのエンジンは車名どおりの5.7リッター+8AT。また、各部を走行状況に応じて統合切り替えできる「マルチテレインセレクト」もランクル200と同じものだが、各設定を任意に組み合わせられる「カスタマイズ」モードが用意されるのは、このLX570だけである。
舗装路でのドライブフィールはほぼ同じ
日本で販売されるLX570はいさぎよくモノグレードで、本体価格は1100万円。シボ部分の大半は本物のレザー張り、レザーでないところもトヨタとは一線を画す分厚くて柔らかいソフトパッドに覆われる。セミアニリン本革のシート表皮、セカンドシートの電動スライド、サードシートの電動格納もすべて標準だ。
ダッシュボードも目に見える部分はほぼすべて専用デザインで、エアコン吹き出し口やスイッチ類の位置やレイアウトなど、丹念に差別化が図られているので、ランクル臭は事前に予想していたより希薄である。
内外装の質感は世界のハイエンドSUVにまったく引けを取らない。柔らかな造形と緻密なメカメカしさが同居する空間は、今や古くもあるが、いい意味で日本ぽい……と思えるのはランクルという世界に誇ることができる後ろ盾があるからか。
2730kgという車両重量は、ランクル200のZXに同じようなオプション装備を追加すると、10kgほど重いだけである。V8エンジンは5.7リッターと4.6リッターでシリンダーブロックを共用しているし、最新の8段ATは従来の6段ATとサイズも重量も同等におさえるのがトレンドだから、パワートレインの重量差は最小限だろう。
LX570とランクルで、カタログに記載されない差異を今回取材することはかなわなかった。ただ、全長がこれだけ伸びて10kg差程度なら、レクサスだからと特別な静粛対策は施されていないと考えるほうが自然。重量が同程度ならサスチューンの差別化もしにくい。
実際、LX570の乗り心地や操縦性はランクル200に酷似する。きれいな舗装路では滑るようにフラットだが、4輪がバラバラに蹴り上げられたときの「ドシンッ、ユラッ」は(最新のモノコック+四独サスにはない)独立フレーム+リジッドサス特有のクセである。
山坂道も苦ではない
ただし、得意とする路面をおとなしく走るLX570は、ランクル200より、わずかだが確実に静かである。今回の試乗車がランクル200のZXより大径の21インチタイヤを履いていたことを考えると、乗り心地の悪化もほとんどない。
数カ月前に試乗したランクル200のタイヤが「ダンロップ・グラントレックPT2A」だったのに対して、LX570のそれが1世代新しい「PT3A」であることも無関係ではないだろう。
また、ランクル200よりギアが2段多いので、例えば100km/h時のエンジン回転数も、ランクル200より200rpmほど低い。さらにエンジントルクに余裕があるから、意識せずともアクセル踏み込み量も小さくなる。変速マナー自体も8段ATのほうが洗練されている。
こうしたことを考慮すれば、車体やサスに大きなちがいはなくとも、LX570のほうが静かになるのは自明。ただ、さすが量産国産車史上最大級の排気量だけに、意を決して踏むと、クルマ全体が身震いするほどの迫力だ。
……なんて重箱のスミは、この際どうでもいい。小高い運転席からまわりを見下ろして、豪華で優しい室内調度に包まれると、乗る人間はいつもの3倍はえらくなった気分だからだ。輸入ラグジュアリーサルーンにスーパーカー、あるいはトラックにバス……横にどんなクルマが来ようと、こっちは物理的にも精神的にもなんら負けた気がしないのだ。
今回の試乗では、なぜか、ワインディングで先を急ぐ必要にかられた。この巨体ゆえに軽々と曲がるわけではないが、LX570はせまいつづら折りを、見た目ほど不得意としない。
統合制御を「スポーツS」もしくは「スポーツS+」モードにすると、ピタッと引き締まる電子制御サスのおかげもある。加えて、この種の伝統的なオフローダーでは重量物が床下に集中する設計となるので、見た目から想像するよりは重心が低い。絶対的には重いから、姿勢がくずれる以前にタイヤが音を上げる点に注意は必要だが、不安を増長するような挙動はまず出ない。
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悩ましいプレミアムSUV選び
LXが発売される数カ月前、知人から「LXと『メルセデス・ベンツGクラス』とで迷っている。どっちがいいと思うか?」とたずねられた。
そのときの私はLX570が国内発売されることすら知らなかったから「レクサスも高級ブランド。得意客にはきちんと情報開示するのね」と感心したりもしたが、それ以上に、彼がレクサスとメルセデスとを完全同列に比較して、真剣に悩んでいることに驚いた。
レクサスは建前ではドイツ車を競合車と想定するが、正直言って、日本では同列に比較されることは少ないだろう。一応は比較はしても、どこかに「本当はドイツ車がほしいけど」とか、逆に「日本人として、あえて国産車に乗りたい」といった思いがあって、どちらかにハンディがあるケースが大半と思う。
ただ、GクラスとLX570にかぎっては「修羅場をくぐってきた本物のヨンク」という意味で、素直に同列と思うことができる。まあ、これはあくまで私個人の感想で、そもそもLXの場合は正確にはランクルの威光だけど……。
価格を比較したら、さらに納得してしまった。
LX570は性能面では上級のG550と競合しつつ、
しかも、フロントに独立サスをもつLX570(
(文=佐野弘宗/写真=田村 弥)
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テスト車のデータ
レクサスLX570
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5065×1980×1910mm
ホイールベース:2850mm
車重:2720kg
駆動方式:4WD
エンジン:5.7リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:8AT
最高出力:377ps(277kW)/5600rpm
最大トルク:54.5kgm(534Nm)/3200rpm
タイヤ:(前)275/50R21 110H/275/50R21 110H(ダンロップ・グラントレックPT3A)
燃費:6.5km/リッター(JC08モード)
価格:1100万円/テスト車=1159万1840円
オプション装備:275/50R21 110Hタイヤ&21×8 1/2Jアルミホイール<切削光輝>(4万7520円)/リヤシートエンターテインメントシステム(25万9200円)/“マークレビンソン”リファレンスサラウンドサウンドシステム(26万1360円)/おくだけ充電(2万3760円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:3117km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:633.4km
使用燃料:105.6リッター
参考燃費:6.0km/リッター(満タン法)/6.4km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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