メルセデス・ベンツG550 4×4²(4WD/7AT)
“陸の王者”の遊び心 2016.05.09 試乗記 製品テーマは「究極のオフロード性能と、デイリーユースもこなす実用性、快適性の両立」。メルセデス渾身(こんしん)の“遊び心”が生んだ、究極の「Gクラス」こと「G550 4×4²」に試乗。お値段3510万円というオフロード・スーパーカーの、実力の一端に触れた。フェンダー1枚が軽自動車1台分
「ドライカーボンのオーバーフェンダー1枚で軽自動車1台買えますから」
キーを渡しながらそう言ったのは、わが相棒、webCG編集部員のホッタ青年だ。注意を促したつもりなのだろう。しかし、その事実がこちらのプレッシャーになることまでは気が回らないようだ。ふむ。ここは察してやらなければならない。
カーボンじゃなくプラスチックでいい。本気でオフロードを走れば容易に欠けてしまうパーツなんだし。それは堅実かつ賢明な発想だ。けれどメルセデスは違う。レベルやマナーやトーン、それら全部ひっくるめて神懸かっている。だからホッタ青年は、高台にそびえる神社の山門でひれ伏すがごとく、メルセデスの圧倒的な威光によって気が動転したに違いない。普段は気遣いある男だから、「無神経に乗り回さないで」などという含みを持たないことくらいちゃんとわかっている。
2016年4月4日に国内正式発表が行われたG550 4×4²。「4×4²」と書いて「フォー・バイ・フォースクエアード」と読む。早い話が2014年に登場した6輪のGクラス、「G63 AMG 6×6」の4輪版だ。記者会見のために来日したGクラスの統括責任者であるグンナー・グーテンケ氏は、G550 4×4²の開発経緯についてこう語った。
「G63 AMG 6×6のカスタマーから、実に挑戦的で素晴らしいが毎日は使えないという声をもらいました。ならば毎日乗りたくなるエクストリームGクラスをつくってみようと」
何と単純明快な発想だろう。G63 AMG 6×6オーナーの生活圏ががれきだらけの荒野なら話は別だが、一般的に考えれば全長6m近い6輪よりは4輪のほうがデイリーユースに適しているはず。だがオリジナルの「G550」より全高で270mm、全幅で240mmも拡大したクルマを毎日乗りたくなるだろうか? その点についてグーテンケ氏に食い下がったら笑顔で返された。「ハンドルを握ったらわかると思いますよ」
ほうほう、なら毎日乗りたくなるか試させていただこう、というのが今回の唯一のテーマである。
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オプションでハシゴが欲しい
では早速試乗、の前に、G550 4×4²の構成について触れておく。
要はG550のハイリフト仕様。それじゃ罰当たりなほどざっくりした説明だが、現にシャシー自体はオリジナルを生かし、足まわりだけが別物なのだから仕方ない。
オリジナルの倍近い460mmの最低地上高を実現しているのが、G63 AMG 6×6から継承されたポータルアクスルだ。説明しよう。通常のクルマはホイールハブの中心線上に車軸を通す。対してポータルアクスルは、ホイールハブの中心から上方にずれた位置に車軸を通せるよう、ハブ内にギアを備えたリダクションハブを用いる。このシステムを使えば、デフや車軸は高位置を保ちつつホイールだけを下げることができる。
足まわりのトピックをもうひとつ。オフロード性能を犠牲にせずオンロードでの高速安定性を高めるため、スプリング/ダンパーは一つのホイールに2本用意している。片方の減衰特性は固定だが、もう片方は電子制御可変ダンパーを採用し、スポーツとコンフォート2種類のモードを任意で選べる。この技術はラリースポーツ由来だそうな。
それではいよいよ試乗。とその前に……、なんてためはいい加減にしたいが、何しろ乗り込むのが一苦労。このステップの高さ、少なくともウチの母親が自力で乗るのは不可能だ。専用のハシゴをオプションパーツに加えてほしい。
エイヤと気合でよじのぼったシート。視点は2トントラックより高く、トレーラーのちょっと下程度。最初は雲上をさまよう感覚になるかと思っていたが、意外にも見た目ほど浮ついた感じはしなかった。あるいはGクラスのオーナーなら、見慣れたインテリアデザインの安心感も手伝ってすぐに違和感が消えるかもしれない。
ちなみに電子制御可変ダンパーは、スポーツモードのほうが路面の凹凸のこなし方がよかった。背の高さが影響しているのだろうか。その辺はGクラスオーナーの意見を聞いてみたい。
本当に“普段使い”できる
「でも、オーバーフェンダーは視野に入りませんね」とホッタ青年。「けれど大丈夫」と独り言を重ねる。日本仕様に備えられた「360°カメラシステム」によるモニター画像は、左右と俯瞰(ふかん)で自車の位置を的確に映し出す。「ああ、これで安心」。やっぱり本当は信用されていなかったんだとそこで気付いた。
まあいい。実際には画像に頼ることなく運転できるから。確かに運転席から左右の張り出しは見えないが、これはたぶん慣れの問題だ。そしてその問題は、早晩解決するに違いない。そう思わせるほど、あんなに腰高なG550 4×4²は従順で扱いやすかった。
「実際にハンドルを握ったらわかると思いますよ」。グーテンケ氏の笑顔が真っ平らのフロントウィンドウに浮かぶ。入り組んだ路地を避けさえすれば、この国でも実際に使えそうでちょっと悔しい。けれど本当に使い倒せるのは約4000万円の車両価格と、現実的にデカい車体をおさめる場所にめどがつく人だけで、ただの庶民が悔しがったところで貧乏くささが募るだけだと自分を戒めた。というか慰めた。
本来ならオフロードで試乗すべきだ。でなければこのクルマの本質的な性能も魅力もわからない。しかしわれわれに許されたのは一般公道のみ。だからおそらくG550 4×4²の10%程度しか理解できていないと思う。
そうであっても1台分、4枚のオーバーフェンダーで小型のメルセデスが買えるのは事実。そこまでやり切る彼らのエクストリームな遊び心には尊敬の念を抱かずにいられない。やっぱりメルセデスは陸の王者だなと感心しながらホッタ青年にキーを戻したら、広報車の返却時間が迫っていたのか、すぐさま走り去ってしまった。オーバーフェンダー1枚で、と注意する間も与えずに。
(文=田村十七男/写真=荒川正幸)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツG550 4×4²
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4520×2100×2240mm
ホイールベース:2850mm
車重:2950kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
トランスミッション:7AT
最高出力:421ps(310kW)/5250-5500rpm
最大トルク:62.2kgm(610Nm)/2000-4750rpm
タイヤ:(前)325/55R22 115H M+S/(後)325/55R22 115H M+S(ピレリ・スコーピオンATR)
燃費:--km/リッター
価格:3510万円/テスト車=3569万4000円
オプション装備:ボディーカラー<designoマグノプラチナムマット>(59万4000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1312km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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田村 十七男
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