第15回:鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス(その3)
2016.11.01 カーマニア人間国宝への道BMWは美女ウケ抜群!
(その2)からのつづき
私にとって初めてのBMW、コミコミ279万円で購入したE90系「335iカブリオレ」は、イタフラ車マニアにとって未知のエリート感と未知のひ弱さ(納車当日にトランスミッションブチ壊れ)を発揮する異星人であったが、周囲の評判はすこぶるよく、特に美女の皆さまの評価が大変に高かったので、心の底から大満足だった。
やはりBMWのブランド力は凄(すさ)まじい。思えば、日本人が最も好む自動車ブランドはBMWだろう。
適度なステータス感と適度にスポーティーなイメージ、加えて適度に遊んでる感。中でも3シリーズのカブリオレはそのど真ん中であり、ひょっとして本邦で最もモテる可能性のあるクルマかもしれない。
まぁ、この場合の「モテる」は、美女が「キャー、ステキ~!」と抱きついてチューしてくれるとかそういうのではなく、「うわー、カッコ良すぎですネ~!」とか、「こんなのでいきなりオープンにされたら、やられた~って思います」とか、「BMWはやっぱり乗り心地がいいですね~(実はレグノのおかげ。元のランフラットだとドシンバタン)」とか、クルマについてプラス評価をしてくれるだけ。本人とはほぼ無関係だが、なんにせよ自分のクルマが美女に評価されるというのは、カーマニアにとって最高のヨロコビである。
その点においてBMW 335iカブリオレは、フェラーリよりもはるかに上手だった。美女の立場に立てば、フェラーリはいくらなんでもやり過ぎで、BMWくらいがちょうどいいのは想像に難くない。
恐るべしBMW
で、その335iカブリオレの収支は、フェラーリよりも上(安上がり)だったのか?
実は購入1年後あたりで、現行「320dツーリング」(中古)への買い替えを検討し、二つのBMWディーラーに下取り価格を見積もってもらったが、結果は「140万円」と「130万円」という悲惨なものだった。
購入時に支払った金額は279万円。それがわずか1年で半額になってしまうとは! いや、半額よりマイナス140万円というその絶対額が問題だ。フェラーリなら平均80万円/年で済んでいるのに、BMWは140万円! 冗談じゃねぇ!
あまりの下取り査定の低さに、320dツーリングへの買い替えはあきらめざるを得なかった。やはり恐るべしBMWである。
それから約半年後。私は「なんかいい中古車ないかな~」と、何の気なしにパソコンを開き、イタフラ車専門店「コレツィオーネ」の在庫リストを眺めてみた。
リストをスクロールしたところ、背筋に電気が走った。
「うおおおお! こ、これはあぁぁぁっ!」
そこには、私が探し求めていた理想の牛丼の姿があった。すなわち300万円以下のオシャレさんな欧州製小排気量ディーゼル乗用車である。
その名は、「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」! デルタといっても「インテグラーレ」じゃないよ、マルチジェットだよん。
理想の“牛丼”、ランチア・デルタ
最終デルタのディーゼル車については、以前から注目はしていた。あの超絶すぎる芸術的フォルムに、節約の1600ccディーゼルが搭載されているのだ。このステキ過ぎるミスマッチ感! ウルトラ激高いレア感もカーマニア心をくすぐる。
が、レアゆえか、デルタ ディーゼルの相場はなかなかに高かった。これまで何度か発見した個体はどれも300万円台中盤程度で、我が家訓を超えていた。
が、その日見つけたそのクルマは、たったの208万円だったのだ!
理由は5万2000kmという走行距離にあると推測されたが、こちとら多走行車は大好物だ。かつて11万kmのマセラティ(88万円)を買い、あるいは12万kmのプジョー(45万円)を買って大勝利を収めている。5万kmなんざ多走行にも入らない。ど真ん中のストライクだ。
これは今すぐ見に行くしかない。いや、本音を言えば今すぐ買いに行くしかない。だって今すぐ買わないと誰かに買われちゃうかもしれないから! オマエはすでにオレのものだぜ208万円のデルタ ディーゼルよ!
矢も盾もたまらず、BMWで「コレツィオーネ」に急いだ私だった。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信)
第13回:鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス(その1)
第14回:鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス(その2)
第16回:鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス(その4)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第343回:おやじ、涅槃で待つ 2026.8.31 清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない?
-
第342回:どうしてこんなに高いんですか 2026.8.17 清水草一の話題の連載。BYDが日本の軽自動車市場に向けて独自開発した電気自動車「ラッコ」が上陸した。早速、愛車「ダイハツ・タント」の後継として検討すべく、近所のディーラーで試乗することに。果たしてその印象は?
-
第341回:「スカイアクティブZ」は大丈夫か 2026.8.3 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「マツダCX-5」で出撃した。マイルドハイブリッドのパワートレインと進化したシャシーが織りなす走りを確かめつつ、ディーゼルエンジンがラインナップから消えた3代目CX-5について考えた。
-
第340回:一にエンジン、二にカッコ 2026.7.20 清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは?
-
第339回:駆けぬけるヨロコビは安くない 2026.7.6 清水草一の話題の連載。いつもの首都高で試乗した「BMW 120d Mスポーツ」の価格が540万円ってマジか! と思っていたら、本国ではなんと4万1750ユーロ(邦貨約770万円)⁉ 安かったころ、もっと小さかったころのBMWに思いをはせた。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。