マツダ・ロードスターRF RS(FR/6MT)/ロードスターRF VS(FR/6AT)
我慢知らずのロードスター 2017.03.31 試乗記 クーペの快適性とオープンカーならではの気持ちよさを1台で味わわせてくれる「マツダ・ロードスターRF」。この欲張りなロードスターに2日間、距離にして約500km試乗し、“ちょい乗り”では決して見えてこない、その魅力の深奥に迫った。スポーツカーでありGTでもある
ロードスターRFは、いま現実的に買えるスポーツカーの中で、一番光っている存在だと思う。2リッターとなったエンジンは158ps/200Nmのパワー&トルクを発生し、1.5リッターでは得られない、ちょうどよい速さとアクセラレーションへの高い柔軟性(ドライバビリティー)を発揮してくれる。また一番の注目どころであるリトラクタブル・ファストバックは、クローズドボディーの快適性とクーペボディーの美しさ、そしてオープントップの気持ちよさを1台で幕の内弁当のごとく味わわせてくれる。
しかし乗れば乗るほどに、このスポーツカーがわからなくなってしまう一面もある。
果たしてこれはロードスターなのだろうか?
こうした印象をRFがもたらす一番の要因は、17インチタイヤの装着にある。これが運動性能において、さまざまな混乱を巻き起こしている。
さて、2日間で約500kmに及ぶ今回の試乗において、初日に試乗したのは「RS」の6MT。これはいわゆる走りの仕様で、その足元には件(くだん)の17インチタイヤと、固められたフロントスタビライザーおよびダンパー&スプリング、が組み込まれている。
「普通に流している」とき、RSの印象はとてもいい。2リッターエンジンの搭載で増えたフロント重量に対して固められた足まわりも、そのハードトップを閉めた状態であれば路面からの突き上げは最小限。試乗車の導入当初よりもブッシュ等がなじんだのか、はたまた今回の路面がよかったのか、その乗り心地にも落ち着きが出てきている気がする。また先代NCロードスターのリトラクタブルハードトップのときのような、リアホイールハウスのこもり音がなく、クーペとしての快適性が高く保たれている。
そして低速からちょうどよいトルクを発生し、実用領域よりちょっと高い回転(5000rpmくらいか)まで引っ張っても、1.5リッターの気持ちよさに負けないくらいスカッと回るスカイアクティブ技術の2リッターユニットは、高速巡航でもスポーツカーらしい楽しさとGT性能の両方が味わえる。このエンジンは力作だと思う。
1.5リッターロードスターより濃厚な走り
いざRSをワインディングロードに持ち込むと、濃厚なロードスターワールドが展開される。剛性が引き上げられたフロントサスペンションは、ソフトトップの1.5リッターのRSよりも明確な接地感をハンドルに伝えてきて、より自信を持ってコーナーへアプローチできるようになったのだ。
ブレーキをリリースした後、一瞬だけロールスピードが速過ぎ、スッとノーズが入るスリルは同じなのだが、そこから制動Gを旋回方向へ移していくと、きちんと横Gが立ち上がって、気持ちよいコーナリングが味わえる。
ちなみに今回の試乗車には、オプションのブレンボ製ブレーキローターと(ローター径は標準と同じ)、同じくブレンボ製の対向4ピストンキャリパーが備わっていた。これは絶対的な制動力というよりそのペダルタッチのよさや、微妙な操作のしやすさに価値があり、ターンインの精度を格段に上げることができる。
旋回時にリアタイヤの接地性変化が最小限なのもよい。たとえタイヤのスリップアングルを大きく使うような状況でも、その挙動は穏やかで、かつこれを収束させやすい。
ハードトップを開けたことによる重心高の低下や、増加したフロント重量に対する前後バランスの適性化がそうさせるのか。それは1.5リッターのロードスターよりも濃厚な、オープンスポーツカーとしてかなりレベルの高い走りであった。
「だったら何が悪いのさ?」
それはハードトップを閉めたときの、操縦性の変化だ。ちなみにRFは、クローズドボディーとなることでリアの剛性が上がり過ぎ、前後の剛性バランスを取るためにフロアトンネルを橋渡しする部材や各種補強の剛性を、ロードスターに対して弱めているという話を以前エンジニアから聞いた。
またRFとしてのセッティングは、クローズドボディーを主軸に置いているという。これはオープンボディーの方がセットに対する許容範囲が広く、クローズド中心のセットをも受け入れられたからだという。
VSグレードが持つバランスに好感
実際、ハードトップを閉めたときの走りは、オープン時に対してややノーズの入りがダルくなる。逆にカーブではタイヤのグリップ感が増え、これがトラクション方向でもしっかりと継続される。
これはこれで、ひとつのキャラクターとしては受け入れられる。ただ困ったのは、この接地性の高さに気をよくして、さらにコーナリングで横Gをかけていくと、ハンドリングがおぼつかなくなることなのだ。
ハードトップがねじれたことで、急激とまではいかないがタイヤの接地性変化が起きているのだろう。過渡領域でステアリングの手応えが変わるのは、運転していてあまり気持ちのよいものではない。またこれはオープン時にもあることなのだが、ステアリングシャフトから伝わる安っぽいバイブレーションも、ここで一気に目立ってくる。
強化されたスプリング剛性に対して、ダンパーの特に縮み側の減衰力を引き上げればよいと思うのだが、それをしないのは車体剛性や強度の不足に起因しているのだろう。だから走りを存分に楽しみたいなら、ハードトップを開けるべきだと筆者は感じた。
ちなみに翌日の復路では、RFのラグジュアリーモデルである「VS」を6段ATで試した。
フロントのダンパー減衰力が低い乗り味は、17インチ化の影響を薄めていた。スプリングおよびスタビライザー剛性が低いため操舵レスポンスはRSに比べて劣るが、オープン時のハンドリングは初期の巻き込みがさらに少なく自然で、リアの追従性も上手にバランスしている。つまりロードスターRFの落としどころは、VSのバランスにあると思う。
もっともVSの試乗時には雨が降っていたため、クローズドトップ時の旋回特性をRSほどの荷重領域まで持ち込んで試せなかったのは心残りである。
6段ATは平々凡々と走っている分には不満なし。パドルシフトもできるから、ちょっとしたスポーティーな走りにはほどよく対応してくれる。ただしきっちり回してシフトした際の変速ショックはまだまだ無粋だし、厳しい目で見ればレスポンス遅れも目立つ。マツダとしても、こればかりはアイシンに小型車用ATの精度を上げてもらうしかないのだろう。デュアルクラッチ式ATを搭載するにも小型化が難しいだろうし、トルコン式ATに比べても50~80kg重たくなるシステムを“軽量化ヲタク”なロードスターに搭載するのは難しいはずだ。
インチダウンのすすめ
ただ軽量化に対しても、このRFにはもう少しだけ目をつむるべきだと筆者は思う。このクルマはグラム単位の軽量化を徹底させるよりも、ソフトトップのロードスターでは味わえない上質感を表現することに重きを置く方が、キャラクター的に正しいと思うのだ。
軽量化ヲタクに走るあまりステアリングの振動透過性に対しマスダンパーを付けられないことや、フロントセクションおよびサスペンションアーム類の剛性を上げられないことは、せっかくのクローズドボディーをカッコだけのものにしてしまう。
だったらそもそもの剛性バランスを引き下げるべく、17インチなどさっさとやめて15インチタイヤを装着すればよいとも思うのだが、より大人っぽい雰囲気とGTカー的要素を付け加えて差別化したいというマーケティング側からの要求にも逆らえないのだろう。
だから非常に厳しい言い方をすると、ロードスターRFは“どっちつかずな”スポーツカーである。
でも、フツーに走っていればそれはわからないことであるし、RFを手に入れたオーナーのすべてがそこまで走りにこだわるかといえば違うだろうから、筆者の意見はきっと大した問題じゃないとも言える。
ただ、こうしたクルマの土台となる部分はしっかり磨き上げておかないと、その影響は後からジワジワ出てくるものだ。オーナーとなってロードスターRFに乗れば乗るほど、こうした部分の安っぽさが、「飽き」につながってこないか筆者は心配だ。
たとえば「ホンダS2000」のようなボディー剛性をこのRFが持っていたら……。当時、S2000の車両価格は300万円台後半だったことを考えると、今のマツダがそれとほぼ同価格帯のロードスターRFで、それができないはずはない。思い返せば、初代NAロードスターでそのチープさが問題とならなかったのは、あのクルマがキョロンとした愛嬌(あいきょう)のある顔つきを持っており、そこに乗り手も“緩さ”をもって接することができたからだ。対して今のロードスターは美人過ぎるから、アラが目立つ。
それでもロードスターRFは、やはり今われわれが買えるスポーツカーの中で、一番魅力的な選択肢だと思う。前述した通りFRらしい走りはオープンで楽しめばよいし、クローズドではその静粛性と美しさを堪能すればいい。要は場合分けである。
だから筆者がRFを手に入れたなら、迷わずタイヤはインチダウンする。ちょっとファットで小ぶりなタイヤを履いたロードスターRFは、きっとかわいらしいと思う。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥/編集=竹下元太郎)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
マツダ・ロードスターRF RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1245mm
ホイールベース:2310mm
車重:1100kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:158ps(116kW)/6000rpm
最大トルク:20.4kgm(200Nm)/4600rpm
タイヤ:(前)205/45R17 84W/(後)205/45R17 84W(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:373万6800円/テスト車=411万4800円
オプション装備:特別塗装色代 ソウルレッドプレミアムメタリック(5万4000円)/【ブレーキ フロント】ブレンボ社製ベンチレーテッドディスク&ブレンボ社製対向4ピストンキャリパー:レッド塗装+【ブレーキ リア】キャリパー:レッド塗装+205/45R17 84Wタイヤ&17×7JインチBBS社製鍛造アルミホイール:ブラックメタリック塗装(32万4000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト車の走行距離:4269km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
マツダ・ロードスターRF VS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1245mm
ホイールベース:2310mm
車重:1130kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:158ps(116kW)/6000rpm
最大トルク:20.4kgm(200Nm)/4600rpm
タイヤ:(前)205/45R17 84W/(後)205/45R17 84W(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:359万6400円/テスト車=360万7200円
オプション装備:特別塗装色代 クリスタルホワイトパールマイカ(3万2400円)/6スピーカー:ドア×2、フロントピラーツイーター×2、運転席ヘッドレスト×2(-7万5600円)/2トーンルーフ:ピアノブラック(5万4000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト車の走行距離:2624km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
NEW
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
NEW
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
NEW
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
NEW
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(後編)
2026.8.30思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」をドライブ。前編ではそのパワートレインの中間加速のよさを語った山野。後編ではそこをもう少し掘り下げて聞くとともに、止まる、曲がるも含めたシャシー全体の印象を聞いてみた。 -
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】
2026.8.29試乗記「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。




























































