トヨタ・ヴィッツ“GRMN”プロトタイプ(FF/6MT)/ヴィッツGRスポーツ“GR”(FF/CVT)/ヴィッツGRスポーツ(FF/CVT)/86“GR”プロトタイプ(FR/6MT)
違いは明らか 2017.09.21 試乗記 2017年9月以降、トヨタがスポーツコンバージョンモデルの開発を一段と本格化させる。その製品群「GR」シリーズとはどんなモデルなのか。今後展開される10車種に試乗、それぞれの走りを前後2編に分けて報告する。新名称に歴史あり
「GAZOO」に「G's」に「GRMN」……全部“G”で始まることから「これには何か特別な意味があるのかな?」と勘が働くものの、「何だか内輪だけで盛り上がっているような……」という印象も正直拭えなかったトヨタのスポーツ系サブブランド。その商品展開が、ちょっとスッキリすることになりそうだ。これまでのスポーツコンバージョン車シリーズであるG'sは廃止し、それを発展させるカタチで「GR」という共通する名称を持つブランドとして展開していくことが決定したからだ。
そんなGRシリーズは、人気のベース車種を対象としたアフターパーツ「GRパーツ」の販売を底辺にすえ、台数限定のコンプリートモデル「GRMN」を頂点に置いて、その中間にドレスアップに重点を置いたスポーティーなバージョン「GRスポーツ」と、ドライブトレインやシャシーなどにも軽度のチューニングを加えた量販スポーツモデル「GR」を設定。今後は、この4層から成るピラミッド形態の商品群を構成する。
「ではGRとはなんぞや?」となるわけだが、これはGAZOO Racing(ガズー レーシング)の略。ん? それでGAZOOは何だっけ?? とさらに疑問が湧いてくるが、これは「GAZOU」、すなわち「画像」に由来するネーミングで、「ZOO」の部分は英語の「動物園」にも関連があるという。
かつて、新車販売時に下取りした中古車展示場に並べきれない商品を、一台一台写真に撮って店内で公開したところ、販売量が飛躍的に伸びたため、まだ黎明(れいめい)期だったインターネット上でも公開。この際に社内で用いていた画像システムを、一般に告知する際に生まれたのが、このGAZOOなる造語だったという。
というわけで、冒頭に紹介した「G」の謎は、取りあえずは「画像のGだった」ということで納得できるのだが、トヨタが運営するインターネット上の自動車情報サイトの名称も『GAZOO』であるなど、ネーミングに関しては、まだ幾ばくかの分かりづらさは残る。
“GRMN”は本格チューニングカー
一方でハッキリしているのは、現時点で「2018年の春ごろに発売予定」とアナウンスされている、今回サーキットでプロトタイプに試乗した「ヴィッツ“GRMN”」が、走るために生まれてきたことを素直に実感させられる、生粋のスポーツモデルだったということだ。車名にある「MN」が「Meister of Nürburgring」の頭文字だというのが、これまた難解ではあるのだが。
ヴィッツを名乗るものの、見慣れぬ3ドアのボディーから、それが欧州版の「ヤリス」をベースとしていることは明らか。実際、前述のように日本では来年のローンチが予告されるが、欧州ではすでに「ヤリス“GRMN”」として受注が開始されている。
社内測定値で最高出力210ps以上、最大トルク250Nmと公表される1.8リッターのメカニカルスーパーチャージャー付きエンジンは、実はすでにロータス車にも提供された実績ある心臓だ。組み合わされる6段MTは、「オーリス」用のものの一部を強化したアイテムだという。
そんなパワーパックに1140kgという重量の車体の組み合わせゆえ、加速はなかなか豪快。ヴィッツらしからぬ排気サウンドと共にグングン速度を増すサマは、それだけでも特別感いっぱいだ。
ブレースの追加など相当なレベルで手が加えられたボディーや、ザックス製ダンパーを採用した専用サスペンションがもたらす剛性感も、オリジナルのヴィッツとは別もの。ガンガン攻め込んでも音を上げないブレーキや、トルセンLSDを加えた結果得られたFF車らしからぬトラクション能力も、このモデルが入念に手作りされたチューニングカーであることを教えてくれる。
ちなみに、欧州で発表されている0-100km/h加速タイムは6.3~6.5秒で、最高速は230km/h(リミッター作動)という。もちろん公道走行も可能だが、「これならサーキット専用で乗るのも楽しいな」と、そう思わせる本格派だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
その差がわかるフットワーク
一方、同じヴィッツの“GR”とGRスポーツに乗る順番が、たまたま“GRMN”の後になってしまったのには、正直「失敗だった!」と思わされた。
前者“GR”はザックス製ダンパーを用いたローダウンサスペンションやボディー剛性をアップさせるパーツの装着、ボディーのスポット溶接の打点追加などが特徴。後者GRスポーツは、専用空力パーツの装着など、主に見た目のドレスアップがウリとなっている。
が、いずれもパワーユニットはノーマルのエンジンを流用している。当然ではあるのだが、“GRMN”の後に試したサーキット走行では、これが何とも物足りなく感じられてしまったのだ。
実は“GR”のCVT仕様では、10段という多段のシーケンシャルモードが設定されたこともセリングポイント。とはいえ、それを駆使してエンジン回転数を一定範囲内で刻んでみても、エンジンの特性にメリハリがないため、あえて面倒な操作を行った効用がほとんど実感できなかったのだ。
それに、いくらシーケンシャルモードが用意されても、そこはCVT。アクセル操作に対する駆動力伝達のダイレクト感という点では、やはり本物のMTには遠くおよばないのだ。
一方、フットワークのしっかり感という点では、“GR”にしてもGRスポーツにしても、ノーマルを確実にしのぐ印象に間違いなし。専用のチューニングが行われつつも、車高が変化しないGRスポーツの場合、型式指定が得られて持ち込み登録を必要としないという点も、購入決断のためのハードルを下げてくれそうだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
安心して踏める86“GR”
せっかくのスポーツカーなのだから、ノーマルで乗るのは物足りない……そんな意見も多く聞かれそうな「86」にも試乗した。同車の場合は、前述した「GRシリーズの4層ピラミッド」では、上から2番目にあたるGRバージョンのみが設定されている。すでにサードパーティーから見た目重視のドレスアップパーツが数多く用意されていることもあってか、手を加えられた範囲はドライブトレインにまで及ぶ。
具体的には、フルエアロパーツやレカロシート、GR専用のステアリングホイールなどを装着した上で、ステアリングラックブレースやリアサスメンバーブレースなどでボディー剛性をアップ。さらに、ザックス製ダンパーやローダウンサスからなる専用の足まわりや、トルセンLSD、1本出しのテールパイプが与えられている。
執筆時点では「この冬、発売予定」というアナウンスのみが流されるこのモデルのプロトタイプでサーキット走行にトライをすると、絶対的な動力性能はノーマルとほぼ同等かと思える一方で、コーナリング時にリアの安定感が増したと同時に、トラクション能力もより高く感じられたことが印象に残った。
すなわちその走りのテイストは、ノーマルに比べ、より積極的にアクセルを踏んでいけるシチュエーションがグンと拡大されたようにも感じられるものだった。今回のテスト走行は完全ドライの路面状況だったが、ウエット状態になればその差はさらに歴然となりそうだ。言うなれば、「86ならではの低重心な走り」が、一層顕著に感じられる印象だったのだ。
(文=河村康彦、写真=小河原認、webCG、トヨタ自動車/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタ・ヴィッツ“GRMN”プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3975×1695×1510mm
ホイールベース:--mm
車重:1140kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:6段MT
最高出力:210ps(155kW)以上
最大トルク:250Nm(25.5kgm)
タイヤ:(前)205/45R17 94W/(後)/205/45R17 94W(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
(※数値はすべて車内測定値)
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1306km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
トヨタ・ヴィッツGRスポーツ“GR”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3975×1695×1490mm
ホイールベース:2510mm
車重:1050kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:109ps(80kW)/6000rpm
最大トルク:138Nm(14.1kgm)/4400rpm
タイヤ:(前)205/45R17 94W/(後)/205/45R17 94W(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:230万3640円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:456km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
トヨタ・ヴィッツGRスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3975×1695×1500mm
ホイールベース:2510mm
車重:1040kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:109ps(80kW)/6000rpm
最大トルク:138Nm(14.1kgm)/4400rpm
タイヤ:(前)195/50R16 84V/(後)195/50R16 84V(ヨコハマ・デシベルE70)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:208万7640円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:558km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
トヨタ86“GR”プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4290×1775×1310mm
ホイールベース:2570mm
車重:1240kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:--Nm(--kgm)/--rpm
タイヤ:(前)215/45ZR17 91Y/(後)235/45ZR17 97Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.27 「ランボルギーニ・テメラリオ」がいよいよ日本の道を走り始めた。その電動パワートレインはまさに融通無碍(むげ)。普段は極めて紳士的な振る舞いを見せる一方で、ひとたび踏み込めばその先には最高出力920PSという途方もない世界が広がっている。公道での印象をリポートする。
-
アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ プレミアム(FF/6AT)【試乗記】 2026.4.25 世界的に好調な販売を記録している、昨今のアルファ・ロメオ。その人気をけん引しているのが、コンパクトSUV「ジュニア」だ。箱根のワインディングロードでの試乗を通し、その魅力をあらためて確かめた。これが新時代のアルファの生きる道だ。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS プロトタイプ(FF)【試乗記】 2026.4.23 一部情報が先行公開され、正式な発表・発売を2026年6月に控えた「ホンダ・シビックe:HEV RS」のプロトタイプにクローズドコースで試乗。2ドアクーペ「プレリュード」と同じ制御技術「ホンダS+シフト」が移植された、新たな2ペダルハイブリッドスポーツの走りやいかに。
-
日産アリアB9 e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.4.22 「日産アリア」のマイナーチェンジモデルが登場。ご覧のとおりフロントマスクが変わったほか、インフォテインメントシステムも刷新。さらに駆動用電池の温度管理システムが強化されるなど、見どころは盛りだくさんだ。400km余りをドライブした印象を報告する。
-
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.20 本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは?
-
NEW
ディフェンダー110オクタP635(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.29試乗記「ディフェンダー」シリーズの旗艦「オクタ」が2026年モデルへとアップデート。メカニズム面での変更はごくわずかのようだが、その速さと快適さは相変わらず圧倒的で、それはオンロードでもオフロードでも変わらない。300km余りをドライブした印象をリポートする。 -
NEW
第110回:新型BMW i3(前編) ―BEV版「3シリーズ」のデザインはなぜ「ノイエクラッセ」から変節したのか?―
2026.4.29カーデザイン曼荼羅いよいよ登場した新型「BMW i3」。スポーツセダンのベンチマーク「3シリーズ」がついに電気自動車となったわけだが、そのデザインにはどんな見どころがあるのか? ショーカー「ビジョン ノイエクラッセ」から様変わりした理由とは? カーデザインの識者と考えた。 -
NEW
「シビック タイプR」は入手困難 北米生産の「インテグラ タイプS」はその需要を満たせるか?
2026.4.29デイリーコラムホンダが北米生産の「アキュラ・インテグラ タイプS」の国内導入を発表した。エンジンなどのスペックから、それが「シビック タイプR」にほど近いクルマであることがうかがえる。果たしてタイプSは入手困難なタイプRの代替になるのだろうか。 -
クルマの開発で「コストをかけるところ」と「割り切るところ」はどのように決まるのか?
2026.4.28あの多田哲哉のクルマQ&A車両開発において、予算配分は「顧客に最も満足してもらえるクルマ」をつくるための最重要事項である。では、それはメーカー内で、どんなプロセスで決まるのか? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
ケータハム・スーパーセブン2000(FR/5MT)【試乗記】
2026.4.28試乗記往年のスポーツカーの姿を今日に受け継ぐケータハム。そのラインナップのなかでも、スパルタンな走りとクラシックな趣を同時に楽しめるのが「スーパーセブン2000」だ。ほかでは味わえない、このクルマならではの体験と走りの楽しさを報告する。 -
第334回:親でもここまではしてくれまい
2026.4.27カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。先日試乗した「トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ」はすごかった。MTと縦引きパーキングブレーキの組み合わせを用意してくれるトヨタは、カーマニアにとってもはや神である。




















































