ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ(4WD/7AT)
むしろ紳士的である 2017.12.26 試乗記 エアロベクタリングをうたう好戦的なエアロパーツで身を包んだ「ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ」。独ニュルブルクリンクの北コースを量産車最速(計測当時)のタイムで駆け抜けたと聞けば、その走りはさぞや“レーシー”と誰もが思うだろう。しかしてその実体は……? ニュルならぬ箱根のワインディングロードで試乗した。ニュルブルクリンクで新記録
GTレースシリーズから抜け出してきたようなルックスもその名前も、いかにもやる気満々と考えて当然な最硬派モデルが2017年のジュネーブショーで発表されたウラカン ペルフォルマンテである。その効能書きには、640psにさらにパワーアップ(従来比+30ps)した5.2リッターV10エンジンを、フォージド・カーボンファイバー素材を多用して軽量化したボディーに搭載。さらにはエアロダイナミクスにも磨きをかけて、ついでにニュルブルクリンク旧コースで市販スポーツカーとしての最速記録を樹立した、と並んでいる。こう聞けば、誰だってこれまでで最も高性能、かつスパルタンでレーシーなスペシャルバージョンであることを覚悟すると思うのだが、意外や実際に一般道を走りだしてみると、実は「パフォーマンス」を名乗るこのペルフォルマンテこそ、最も洗練されているウラカンではないかと実感した。
モータースポーツから距離を置くのがランボルギーニの家訓だったのは昔の話。今では世界中のGTレースで活躍中のうえに、ニュルブルクリンクでの最速競争にも名乗りを上げ、2016年にウラカン ペルフォルマンテが6分52秒01という北コースでの量産車最速タイムを樹立してみせたニュースは記憶に新しい。ただし、意地を見せた「ポルシェの911 GT2 RS」によってその記録は2017年に塗り替えられたものの(6分47秒3)、ペルフォルマンテの速さには疑いの余地がないことを証明してみせた。
といってもペルフォルマンテは、ガチガチに締め上げられたタイムアタック専用モデルではない。それどころか、前述したように快適性が犠牲になるどころか、一般道でもきわめて落ち着いた、洗練されたマナーを持ち合わせている。もっとも、考えてみればそれも当然で、ニュルブルクリンク旧コースは、路面もグランプリサーキットのように平滑ではないからこそ、リアルワールドの道を走るスポーツカーの開発に最適な聖地と呼ばれるのであって、そこでタイムを出すにはきちんとストロークして路面を捉えるサスペンションが必要だ。
ニュルブルクリンクでタイムアタックの経験がある本職のレーシングドライバーの話でも、硬くストロークしないサスペンションではとても北コースで記録を出すことはかなわないという。細かく小さな入力から、速い大入力まで同じように一発で吸収して、路面とのコンタクトを失わないようなホイールコントロールが肝要である。パワー、エアロダイナミクス、トラクション性能の三拍子そろっての“サブ7分”である。
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文句なしの扱いやすさ
始動する時だけはグワッと一度大きく吠(ほ)えるが、640ps/8000rpmと600Nm/6500rpmを生み出すV10ユニットは、一般道では静かで従順である。スルリと動き出して、せいぜい2500rpmぐらいで粛々とシフトアップしていくから、街中だけを試乗したらとても8500rpmまで猛然と回るエンジンには思えないかもしれない。フラッグシップの「アヴェンタドール」が依然として変速時にタイムラグと明確なシフトショックを伴うのとは裏腹に、ペルフォルマンテのDCTは実に洗練されており、オートでもマニュアルでもシームレスで滑らか、かつ電光石火の変速が可能だ。
この種のスーパースポーツとしては視界がいいことも街中や狭い一般道で扱いやすい理由だ。バックアップカメラとフロントリフターも有効で、一時停止からの合流の際など斜め後方だけ注意すれば、必要以上に神経質になる必要はない。
高速で吸いつく感じ
ペルフォルマンテの特長がアクティブ・エアロダイナミクスの採用だ。前後の空力付加物が速度や状況に応じて変化し、最適な空力性能を生み出すというシステムに加え、エアチャンネルを内蔵したリアスポイラーの内部に流れるエアフロ―を左右独立して制御し、高速コーナリング時に“エアロベクタリング”を行うという。
左右のダウンフォースをコントロールし、コーナリング性能を向上させようという試みは古くはシャパラルなどが挑んだ手法だが、現代のレースの世界では原則禁止されているし、実際の効果という点から見ると一般道で試すことができるスピードでは、正直それが自慢のアクティブエアロダイナミクスの効果なのかどうかを確認することは難しい。ただし、吸いつくように路面を捉えようとしていることは間違いない。コーナーの途中にうねりがある場所を突破しても跳ねたり、接地感が失われたりすることがないのは確認できた。高速になればなるほどスタビリティーが増すようだが、これ以上はまさしくニュルブルクリンクのような場所で試すしかないだろう。
また、この種の巨大なタイヤを履いたハイパフォーマンスカーではありがちな、路面のアンジュレーションにナーバスに反応するそぶりも見せない。ラフな路面でもチョロチョロと針路を乱されることなく、自信を持って飛ばせるスタビリティーが備わっていることに隔世の感を覚えずにはいられない。
トラックデイにうってつけ
ペルフォルマンテは流行のフォージド・カーボンファイバー技術(マーブル模様に見えるパーツがそれ)を採用し、車重を40kg削減したという。なぜかカタログでは相変わらず乾燥重量(1382kg)をアピールしているが、車検証上は1600kgである。もちろんそれでもV10を積んだ4WDモデルとしては相当に軽いほうだ。そのおかげで0-100km/h加速は2.9秒に向上(「ウラカンクーペ」は3.2秒)、最高速は325km/h以上を主張する。最高速の数値はウラカンクーペと同じだが、巨大なウイングを聳(そび)えさせながらも同じ数字に到達しただけ進化しているというわけだ。多面体を貼り付けたようなボディーは空気抵抗が大きいように思うが、このパフォーマンスデータを見れば今やツルリとした流線形が最適解というわけではないことが分かる。
高速道路を流すのは平穏そのもの、フロントだけでなくシート背後にもかなりのラゲッジスペースが備わっているので、各種装備を詰め込んでサーキットまで往復するのに何の不都合もない。つまり“トラックデイ”(サーキット走行会)に最適な一台である。ペルフォルマンテの本体価格はおよそ3400万円で(約67万円のフロントリフター&磁性流体式可変ダンパーシステムなどの多数のオプションを装備したこの車は3800万円強)、後輪駆動の標準型よりおよそ1000万円高いが、そう考えればこの値段も納得できる、かもしれない。まったく心配せずにサーキットに出掛け、思い切り走ってまた無事に帰る。それが新世代のランボルギーニの価値である。
(文=高平高輝/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4506×1924×1165mm
ホイールベース:2620mm
車重:1382kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:640ps(470kW)/8000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30ZR20 90Y/(後)305/30ZR20 103Y(ピレリPゼロ コルサ)
燃費:13.7リッター/100km(約7.3km/リッター、欧州複合モード)
価格:3416万9904円/テスト車=3827万8008円
オプション装備:エクステリアカラー<ヴェルデ・マンティス>(47万7468万円)/スタイルパッケージ(17万8092円)/ロジ・フォージド・リム 20インチ ブラック セントラルロック(54万5724円)/ブレーキキャリパー(12万2688円)/ハイレベルタイヤ空気圧監視システム<TPMS>(11万5992円)/前・後部のパークセンサーとリアビューカメラ(20万5416円)/Sensonum<ランボルギーニ・サウンドシステム>(38万1888円)/リフティングシステムおよび磁気粘性サスペンション(66万9168円)/ダイナミック・ステアリング<LDS>(23万2740円)/トラベル&スモーカーパッケージ(6万1452円)/バイカラー・インテリア用インバートステッチ(6万8256円)/ペルフォルマンテ・インテリア<レーザー彫刻>(34万1064円)/Bluetooth設備<ハンズフリー>(9万5580円)/インテリア・ペルフォルマンテ・バイカラー(34万1064円)/クルーズコントロールシステム(9万5580円)/ブランドパッケージ(9万5580円)/CarPlay(8万0352円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2719km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:268.6km
使用燃料:50.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:5.3km/リッター(満タン法)/6.0km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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