第496回:いよいよ日本でもお披露目!
新型「スバル・フォレスター」の詳細に迫る
2018.04.19
エディターから一言
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ニューヨーク国際自動車ショーでの世界初公開から遅れること12日、日本でもいよいよ新型「スバル・フォレスター」(北米仕様)がメディア向けに披露された。そこで発表された新たな情報と、2度の取材を通して記者が感じた、このクルマの印象をリポートする。
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真っ先に実感したパッケージの進化
そもそも、5代目となる新型フォレスターは、これまでのモデルが築いてきた「どこにでも行ける、どんな場所でも使える」という価値は大事にしつつ、「冒険心を掻(か)き立てるデザイン」や「ひと目でわかる機能性の良さ」「気持ちよく移動を楽しめる空間」などの魅力をプラスすることが開発のテーマとされている。
なかでも、その進化を顕著に感じたのが「気持ちよく移動を楽しめる空間」、すなわちパッケージングだった(……まあ、走りや装備の出来栄えが確かめられない段階なので、当たり前といえば当たり前だが)。
どういうことかというと、乗ったら実感できるほどにゆとりが増していたのだ。資料に記載された数値を見ても、やや漠然とした表記ながら、“後席スペース”は946mm(従来モデル比で+33mm)、左右の“乗員間距離”は740mm(同+20mm)とされている。505リッターから520リッターに拡大された荷室容量も含め、車内空間の拡大は、新型フォレスターのひとつの目玉と言えそうだ。
一方、気になるボディーサイズについては、全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm。従来モデルより全長で15mm、全幅で20mmのサイズアップだが、車内空間の拡大と比較すれば「肥大化は極力抑えられている」と評しても差し支えなさそう。全高についてはむしろ5mm低くなっているが、それでも「乗員の頭まわりには、従来モデルと同等のスペースを確保している」とのことだ。
実用性の向上もぬかりなし
また、車内空間については広さだけでなく、利便性や快適性、痛痒(つうよう)なく使えることについても考えられている。特に後席まわりは、座面の両端からBピラーやドアまでの距離を離すことで、エンジニア氏いわく「クラストップレベルの乗降性」を実現。後席用の空調吹き出し口や、充電ソケット、分割式のシートバックポケットを設けるなど、移動時間を快適に過ごせるように配慮もぬかりはない。
荷室についても、開口部幅を1300mmに拡大したり、荷室全体を照らすよう照明を天井に移したり、一部グレードのテールゲートに開閉と連動して点消灯する作業灯を設けたり……と、さまざまな角度から実用性を改善。電動テールゲートも、よりスムーズでスピーディーな開閉を実現しただけでなく、荷室側への出っ張りや専用の支柱などを無くし、かつワンプッシュで施錠まで行う「ドアロック連動スイッチ」を備えた新開発のものに変更された。
こうした改善はルーフレールにまで及び、例えば前後両端に荷物の固定に便利なタイダウンホールを設けたり、荷物を積み下ろしする際に足場となるリアドアのステップを大型化したり、リアドアの開口角度を広げたりといった改良が施されている。
余談だが、新型フォレスターの外装設計は「趣味:日曜大工、オートキャンプ、スキー、ゴルフ(再開予定)」という、筋金入りのアウトドアラーが主導したとのこと。氏がリアドアの開口角度やステップのカタチにまで口出ししたかは定かではないが、いずれにせよ新型フォレスターのディテールには、“積む”ことに対する並々ならぬコダワリが感じられた。
いろいろ勘ぐってしまう……
装備についても大幅な機能強化を図っており、例えばエアコンには、乗員数に応じて空調の作動が切り替わるシステムを初導入したほか、インフォテインメントシステムにも携帯端末のミラーリング機能に対応した最新の機器を採用。Wi-Fiホットスポットやリモートエンジンスタートなど、テレマティクス関連の機能も大幅に拡充している。
しかし、それ以上に興味深かったのが、携帯端末などでおなじみの顔認証技術を用いた新機能「ドライバーモニタリングシステム」である。インフォメーションディスプレイの“ひさし”に装備されたカメラがドライバーを監視し、“わき見”や“いねむり”などを検知すると警告を発するというものだ。
これだけなら他社にも類似した装備はあるが、スバルのそれがユニークなのは、これがドライバーへの“おもてなし”にも利用されている点にある。どういうことかというと、この顔認証技術によってクルマが「今回のドライバーが誰か」を認識し、事前に登録された個人データに沿って、自動でシートポジションやドアミラー、エアコンなどを調整。メーターの個人燃費情報を呼び出してくれるのだ。通常のメモリー機能のように、「1」「2」などのボタンを押して、ドライバー自らが自分のメモリーを呼び出す手間は、このシステムでは不要だ。
この新システムの採用については、記者がスバルというメーカーに“おもてなし”に積極的なイメージを持っていなかったこともあり、少々驚いてしまった。そして、ついいろいろ勘ぐってしまった。
コンセプトカーの「ヴィジヴ」シリーズからも分かる通り、スバルも「レベル3」「レベル4」相当の自動運転の実現へ向け、目下研究開発を推し進めている。そしてそれらのシステムでは、人とクルマが「運転の主体」をやりとりする上で、ドライバーの状態を認識するモニタリングシステムが必須となるはずだ。
ひょっとしたら、今回のドライバーモニタリングシステムの採用は、その布石なのでは? いやいや、カーシェアリングサービスでの利用も意図しているのでは? ……などと思ったのだが、スバルの関係者は「普段からいろんなことを試しているんですよ(笑)」と言うだけで、教えてくれなかった。うーむ。
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シャシーもパワープラントも刷新
最後に、読者諸兄姉におかれては最も気になるであろう、乗り心地と走りにまつわる情報について紹介させていただく。
従来モデルからの最大の変更点は、既報の通り車両骨格がスバルの新世代アーキテクチャー「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」に置き換えられたことだ。これにより、車体の曲げ剛性は従来モデルの2倍、ねじり剛性は1.4倍に向上。さらに、リアのスタビライザーがサブフレームではなくボディーに“じか付け”されたことで、リアサスペンションまわりのねじれに対する耐力も強化された。これに伴い、ブッシュ類についてはより軟質なものが採用可能となり、フラットなドライブフィールと快適な乗り心地を両立したという。この変更について、スバルのスタッフは「ぜひリアシートでの乗り心地の違いを実感してほしい」と自信満々だった。
パワープラントも従来モデルから刷新しており、新たに直噴の「FB25」型2.5リッター水平対向4気筒エンジンとした。筒内直接噴射に合わせた設計の最適化と、対ノッキング性の向上に伴う圧縮比の変更(10.3→12.0)、早期暖機による燃費改善と、出力向上の両方に寄与する熱マネジメントシステム(冷却水コントロールバルブ)の採用などにより、動力性能とドライバビリティー、環境性能を同時に向上させたという。
トランスミッションについても、レシオカバレッジの拡大(6.3→7.0)や軽量化などにより高効率化を追求。マニュアルモードを7段化したり、よりやわらかいトルクコンバーターダンパーを採用したりすることで、操作性や動的質感の向上も図っている。
一方、駆動システムには現行モデルと同じく、路面や走行状況に応じて前後輪に最適なトルクを配分する「アクティブトルクスプリットAWD」を採用。ただし、新型には新たにトルクベクタリング機構が取り入れられており、「よりドライバーが意図した通りにクルマをコントロールできるようになった」とのことだ。
ダイヤル式になったのはいいけれど……
また制御関係では、路面状況に応じてパワープラントなどのパラメーターを切り替えられる「X-MODE」の操作方法を一新。従来の押しボタン式から、ダイヤル式に変更した。これには、走行モードの数が「X-MODEオン/オフ」の2種類から「NORMAL」「SNOW DIRT」「D.SNOW MUD」の3種類に増えたことも関係しているのだろう。
このうち、SNOW DIRTは従来モデルで言うところのX-MODEがオンの状態、D.SNOW MUDはX-MODEがオンで、かつトラクションコントロールをオフにした状態となる。この状態にするためには、既存のシステムではX-MODEをオンにして、かつ別の場所にあるトラクションコントロールのボタンを押すという2段階の手間が必要だったのだが、新しいシステムではダイヤルを右に回すだけで、この制御を選べるようになったわけだ。
ただ、一般ユーザーがD.SNOW MUDという表示を見て、どういった制御かを即座に判断できるかというと……記者はちょっとアヤシイ気がする。操作の簡便化に合わせて、アイコンももう少し分かりやすいものにしてくれればよかったのに、と思ってしまった。もっとも、フォレスターの走破性能を考えれば、“一般ユーザー”がこのシステムのお世話になることは、まずないとも思うのだが……。
以上が、日本でのメディア向けお披露目会で発表された、新型フォレスターのもろもろである。個人的には、「廃止が確定的というMT+機械式四駆の仕様がほしい人は、今すぐお店に駆け込むべし」だが、それ以外の方には満遍なく「待っていても損はないよ」と薦められるクルマに仕上がっているのでは? と感じられた。
もっとも、世界各地のカー・オブ・ザ・イヤーを総ナメにした「ボルボXC60」の例を挙げるまでもなく、この手のミドルクラスSUVは世界的に長足の進歩を遂げている。昨今のライバルに対して新型フォレスターがどの位置にくるかは、やはり実際に使って、走らせてみないと分からないだろう。今はやはり、そう遠くはない(と思いたい)発表・発売を、首を長くして待つしかなさそうである。
(文=webCG 堀田/写真=スバル、webCG)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。