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第533回:最高速403km/hのロードカー
「マクラーレン・スピードテール」がデビュー

2018.10.27 エディターから一言 島下 泰久
 
2018年3月に開催されたジュネーブモーターショーにおいて、「BP23」というコードネームでの開発を公表。その実車モデルが、「Hyper-GT」とマクラーレンが呼ぶ「スピードテール」だ。
2018年3月に開催されたジュネーブモーターショーにおいて、「BP23」というコードネームでの開発を公表。その実車モデルが、「Hyper-GT」とマクラーレンが呼ぶ「スピードテール」だ。拡大

2018年10月26日午後1時(現地時間)、英マクラーレン・オートモーティブは、初めて「Hyper-GT」とカテゴライズする究極のロードカーを発表した。その名は「マクラーレン・スピードテール」である。

その名の通りロングテールデザインが特徴的なエクステリアを持つ「スピードテール」の全長は5137mmにも及ぶ。5mを超えるボディーサイドながら、車両重量はわずか1430kgしかない。
その名の通りロングテールデザインが特徴的なエクステリアを持つ「スピードテール」の全長は5137mmにも及ぶ。5mを超えるボディーサイドながら、車両重量はわずか1430kgしかない。拡大
ボディーはCFRP製、サスペンションはオールアルミ製。ドアミラーはカメラを使ったデジタルリアビューミラーに置き換えられている。したがってボディーサイドに突起物などはない。
ボディーはCFRP製、サスペンションはオールアルミ製。ドアミラーはカメラを使ったデジタルリアビューミラーに置き換えられている。したがってボディーサイドに突起物などはない。拡大
車体後方に備わるアクティブリアエルロン(補助翼)は、CFRP製。分割されたパーツではなく、CFRP製のボディー外板が湾曲しながら立ち上がっていくという構造を持つ。
車体後方に備わるアクティブリアエルロン(補助翼)は、CFRP製。分割されたパーツではなく、CFRP製のボディー外板が湾曲しながら立ち上がっていくという構造を持つ。拡大

アルティメットシリーズの上を行く「Hyper-GT」

車名の由来が、まさにそのデザインにあることは明白だ。これまでロードカーでは見たことのない、極めて独創的なフォルムは、いにしえのレコードブレーカー、最高速記録挑戦車に着想を得たものだという。自動車のデザインには、まだまだ見果てぬ可能性がある。そんなことを思わせる斬新さだ。

この全長5137mmにも達するテールの長いティアドロップシェイプのボディーは、徹底的な空力性能の追求、特にドラッグ低減のたまものである。ディテールを見ても、例えばドアミラーがついに姿を消してカメラを使ったデジタルリアビューミラーに置き換えられている。また、20インチのフロントホイールには固定式、つまりホイールと一緒に回転するのではなく、ハブ側に固定されたカバーが装着される。これは強くラウンドしたボディー左右前端と相まって、ボディーサイドを流れる空気の流れを整えるのに大きな力を発揮するという。なお、21インチのリアにカバーが備わらないのは、フロントほどの効果はなく、それなら重量を軽減した方がいいという判断からである。

驚いたのがアクティブリアエルロン、つまりは補助翼だ。車体後方に備わり、走行状況に応じて角度が変わるこれ、ボディー表面にはヒンジが見当たらないどころか分割線すらない。実はCFRP製の外板が湾曲しながら立ち上がっていくのだ。CFRPにクラックが入る、折れる、塗装がだめになる……という心配を思わずしてしまうが、何カ月にもわたって開閉を繰り返すテストでも、当然ながらまったく問題は起きなかったという。これのおかげで普段は実にスリークなリアビューが実現されているのだ。

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“Velocity”モードでは最高速403km/hに

このエクステリアだけでもインパクトは十分だが、初めて電動開閉式とされたディへドラルドアを開けると、またも目を見張ることになる。その向こうのコックピットは伝説の「マクラーレンF1」に由来するセンタードライバーズシートの3シーターなのだ。眼前には3つのモニターが備わり、シフトセレクターを含めた操作系は天井に配置されている。ダッシュボード左右のモニターは、デジタルリアビューミラー用だ。

両サイドのシートへの乗り降りもしやすそうなサイドシルの低さからは、車体の基本骨格であるCFRP製のタブ“カーボンモノケージ”が新設計であることがうかがえる。もちろん外板も、すべてCFRP製だ。フロントエプロンやディフューザーなどには新開発のチタンを織り込んだCFRPを、また内装にはハイエンドの時計メーカーであるリシャールミルと共同開発した厚さ30ミクロンの極薄CFRPが使われている。サスペンションはオールアルミ製。これらの積み重ねにより車両重量はわずか1430kgにすぎない。

スペックも強烈のひと言。現時点ではガソリンエンジンを使ったハイブリッドとしか明かされていないパワートレインは最高出力、実に1050psを発生する。鋭いレスポンスを実現するためにエネルギーを高速で出し入れできる新しいバッテリー技術が採用されているというが、こちらも詳細は明かされていない。

この組み合わせにより実現したのは、0-300km/h加速タイムわずか12.8秒という猛烈なパフォーマンスだ。あの「P1」ですら0-300km/h加速タイムは16.5秒だったのだから、その速さは想像を超える。

さらに、最高速は大台突破の403km/hを実現するとうたわれている。この最高速を実現するのは“Velocity”モード。パワートレインのセッティングが切り替わり、ハイブリッドバッテリーが満充電され、アクティブリアエルロンの角度もロードラッグに最適化。基本形式を「セナ」のものから受け継ぐ油圧式サスペンションは車高を35mm下げ、デジタルリアビューミラーも収納される。要するに日常的には使うことのできない“お楽しみモード”である。

デザインもパッケージングも、そして性能も、すべてが鮮烈な、ぶっ飛んだ存在と言っていいスピードテール。価格もやはり飛び抜けていて、175万ポンド(約2億5000万円)がスターティングプライスとなる。当然、ほぼすべての車両がMSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)にてビスポーク仕立てとされるはずだ。

限定台数は、わずか106台。これはマクラーレンF1の生産台数になぞらえた数字だ。そして、もしかすると興味を持った方もいるかもしれないが、この手のスペシャルモデルの定石通り、この106台はすでに完売である。

(文=島下泰久/写真=マクラーレン・オートモーティブ/編集=櫻井健一)

1990年代の名車「マクラーレンF1」に由来する、ドライバーズシートをセンターに配置した3シーターを採用。
1990年代の名車「マクラーレンF1」に由来する、ドライバーズシートをセンターに配置した3シーターを採用。拡大
ディへドラルドアとマクラーレンが呼ぶ上に開くドアは、同社初の電動開閉式とされた。真上からクルマを見ると、テールの長さが際立つ。
ディへドラルドアとマクラーレンが呼ぶ上に開くドアは、同社初の電動開閉式とされた。真上からクルマを見ると、テールの長さが際立つ。拡大
20インチのフロントホイールには固定式のカバーが装着される。このカバーは、ホイールにではなく、ハブ側に固定されている。
20インチのフロントホイールには固定式のカバーが装着される。このカバーは、ホイールにではなく、ハブ側に固定されている。拡大
フロントノーズに付けられたマクラーレンのエンブレムさえもカーボン製。これも軽量化のための配慮である。
フロントノーズに付けられたマクラーレンのエンブレムさえもカーボン製。これも軽量化のための配慮である。拡大
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