レクサスLS500h“エグゼクティブ”(FR/CVT)
風当たりは強くても 2019.02.01 試乗記 2018年8月の一部改良でハイブリッドシステムのエンジンサウンドや変速制御のチューニングを行い、制振材の追加などにより静粛性を向上させたという、レクサスのフラッグシップサルーン「LS」。果たして熟成は、どこまで進んだのだろうか。改良部分の公表は最小限
2017年の秋に5代目へと生まれ変わったレクサスLSの、メディアにおける評価は、フラッグシップサルーンなのにというべきか、フラッグシップサルーンだからこそというべきか、どうにも厳しいものばかり。まるでつるし上げを食らってるかのようで、気の毒に思えてならなかった。けれど、火のないところから煙は上がってこないものだし、僕よりはるかにこのカテゴリーに強いプロフェッショナルである諸先輩方の評価だから信頼の確度も高いはずだし、まぁどのアングルからクルマを見るかにもよるだろうけど、そういうところもあるのだろうな、ぐらいに思っていた。
そんなふうに気楽でいられたのは、これまで5代目LSに触れるチャンスがないままここまできていたからだった。もちろんレクサスにお願いすればお借りして乗ることはできたかもしれないけど、テストカーはレンタカーじゃない。記事にするあてもないのに乗り回すのはどうにも気が引ける、という昔ながらの編集者だった頃の習い性が邪魔をして、それもしなかった。自動車ライターの仕事は発注と受注があって初めて成立するのだ。
ところがここにきて、昨年の夏に改良を受けた最新の「レクサスLS500h“エグゼクティブ”」の試乗のお誘いをいただいた。正直に白状するとちょっと気が重かったのだけど、仕事である。ありがたくお引き受けした。なぜ気が重かったのかといえば、その改良に関してのプレスリリースを読む限りでは、4WDモデルについて「ショックアブソーバーは伸圧独立オリフィスを採用することで減衰力可変幅の拡大や摩擦低減など乗り心地が向上」と記されていたが、試乗車はFRモデル。500hそのものについては「マルチステージハイブリッドシステムのエンジンサウンドや変速制御のチューニング、制振材の追加などにより静粛性も向上」とあっただけだ。車内は静かになっているかもしれないし、変速はスムーズになったり適正さを増したりしているのかもしれないけれど、それ以外は“厳しい”状態のまま? と。
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どのブランドとも明らかに違っている
けれど、走らせてみて軽く拍子抜けさせられた。悪くない。というか、乗り味は最高級サルーンとしてフツーに“いいクルマ”といえるレベルにあると感じられたのだ。とても厳しい言葉でつるし上げられるようなクルマには思えない。具体的なアナウンスがちっともなされていないだけで、デビューから1年の間に実にさまざまな部分をツメツメに詰めてきたのだろう。
とはいえ、5代目LSとは初めてのランデブーである。まずはそのスタイリングを眺めるところからスタートしたのだけれど、ブランドとしてスジはしっかり通っているし、存在感はあるし、これはこれでありだろう、とあらためて思った。他のどのブランドのクルマとも明らかに違っているし、写真で見るよりもさらにまとまりがいい。とっつぁん臭さもない。
インテリアに目を移すと、メーターフードの上のカタツムリの角のようなモード切り替えスイッチはともかくとして、そのフードの位置を頂点にドアへとなだらかな曲線を見せながら落ちていく様や、ダッシュボード中央のエアコン吹き出し口を違和感なしにデザインに取り込んだ横に流れるラインなどは悪くないな、と思った。全体的な質感も、かなり高いと思う。
が、これはもう個人的な好き嫌いに属するものなのだろうけど、試乗車のドア内側にあつらえられていた切り子のようなガラスの装飾や青海波のような立体的なハンドプリーツには、最後までなじめなかった。そこに込められている日本の匠(たくみ)の技は見事なものだと思うし、これがクルマのインテリアでなければ美しいと感じたかもしれないけれど、何だか目に煩わしくて落ち着かない。
もちろんこのコンビネーションを選択しなければいいだけの話なのだけど、プレス用のテストカーでこれをチョイスしているということは“イチ押し”に近いものであるはずで、他のブランドとの違いを明確にする斬新な試みではあると思うけど、その感覚が僕には合わなかった。……貧しいからだろうか?
でも、そこが個人的に感じた最も大きな疑問で、実はそれ以外、“ちょっとなぁ……”という気持ちになるようなところはなかったのだ。マジメな話。
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盛り上がりに欠けるが存分に速い
確かに「セルシオ」のテイストを色濃く残していた過去のLSとは、乗り味はずいぶん異なっている。もっと、あれ? と感じるほど静かで、その静けさに包まれて落ち着いた気持ちで走るのが似合うクルマであり、“スポーティー”という言葉を意識させられたりするようなことはなかったからだ。そこに、それでいいの? と疑問を感じる人が少なからずいることは十分に理解できる。でも、リアシートに収まることよりステアリングを握っているほうが何十倍も好きな──それこそメーターフードの左上にあるモード切り替えスイッチを積極的に操作して走りたいあなた(や僕)のような──クルマ好きにとっては、こちらのほうが好ましいんじゃないか? と感じられたのも事実だ。
最高級グレードである“エグゼクティブ”だからショーファードリブンを視野に入れた備えもたっぷりとなされていて、リアシートの居心地を確かめられなかったのは残念だったのだけど、走らせてみての望外な楽しさには素直に、いいかも! と思わされたのだ。
LS500hは最高出力299psと最大トルク356Nmの3.5リッターV6に最高出力180psと最大トルク300Nmのモーターを組み合わせたパワーユニットを搭載している。車重が2.3t強ほどあるのだから、その加速は爆発的というほどではない。
しかし、サウンドは抑制こそ利いているけれど、結構聴かせてくれるし、レスポンスもなかなかのもの。どこからアクセルを踏んでいっても、不満がないくらいに素早く加速していく。全域にわたってフラットな性格だから盛り上がり感というものに欠けるだけで、存分に速いのだ。さらにこの上には最高出力422ps、最大トルク600Nmの3.5リッターV6ツインターボ搭載車があることを忘れてはいけない。
ステアリングを切るとわずかなロールをみせながらも、スイッと気持ちよく向きを変える。FRのモデルにはステアリングギア比が可変するシステムが備わっていて、それも効いているのだろうけれど、コーナーの続くところをいいペースで走りながら右へ左へと走っていると、車体がギュッと小さくなったかのような気すらしてくるほどだ。その曲がりっぷりは2tを超えるホイールベースの長いクルマとは思えないほどで、軽快という言葉すら使いたくなる身のこなし。攻めるようにして走りたい気持ちに、このクルマは存分に応えてくれるのである。
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ドイツの3強とどう戦う?
その一方で、このクルマに貼られていた“乗り味が硬すぎる”というレッテルは、奇麗に剝がされているように感じられた。モードを「コンフォート」にして穏やかな気持ちで走れば、何も気にせず十分に、ランフラットタイヤを履いていることを忘れるぐらいに快適といえるレベルの乗り心地を味わえるし、エンジンのサウンドも主張したりはしない。その点でも、僕としては及第点を超えているような気がしている。
LSは確かにレクサスのフラッグシップサルーンという位置づけではあるけれど、考えてみれば、レクサスのサルーンがおしなべてスポーティーといえる味つけであるのも確かだ。LSは“セルシオ”であることをヤメて、もしかしたら現在のレクサスサルーンの頂点にふさわしいモデルへと変貌を遂げたのではないか? そう考えると合点がいく。
それでドイツの3強と戦えるのか? という声も聞こえてきそうだけど、おそらくレクサスが本気で見つめているのはそこじゃない。例えばメルセデスがそうであるように、BMWがそうであるように、ブランドとしての独自性を確立させて、そのベクトルの上で価値のあるクルマを作り続けていくこと、なのだろう。
そうであるなら、僕は強くエールを送りたい。だって何かに似ているモノは、その“何か”を絶対に超えることはできないのだから。
そして同時に、ちょっと嫌みになるかもしれないけれど、苦言も伝えておきたい。改良の手を加えた部分は、例えば「ブッシュを硬くした」とか「エアサスの制御を少し変えた」とか、そういう取るに足らないと思われるようなことも、ちゃんとアナウンスしましょうよ、と。誰もが試乗をするわけじゃないのだから、“乗れば分かる”はそうそう通用しない。目指しているところが明確にあるのなら、そこに向かって伝える努力をすることも、それが広がる道筋を考えることも、大切なのだと思う。もし新しいLSに関して意見するべきところがあるとするなら、僕はそこだと思うのだ。
(文=嶋田智之/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
レクサスLS500h“エグゼクティブ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5235×1900×1450mm
ホイールベース:3125mm
車重:2320kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV型6気筒
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:299ps(220kW)/6600rpm
エンジン最大トルク:365Nm(36.3kgm)/5100rpm
モーター最高出力:180ps(132kW)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
タイヤ:(前)245/45RF20 99Yランフラットタイヤ/(後)245/45RF20 99Yランフラットタイヤ(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:1640万5000円/テスト車=1815万7840円
オプション装備:ムーンルーフ<チルト&アウタースライド式>(10万8000円)/ドアトリムオーナメントパネル切子調カットガラス(162万円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ&ウインドシールドデアイサー等>(2万4840円)
テスト開始時の走行距離:6417km
テスト形態:ロードインプレッション
テスト距離:152.6km
使用燃料:16.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.2km/リッター(満タン法)/9.4km/リッター(車載燃費計計測値)

嶋田 智之
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